植物バイオテクノロジー研究室

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緑の革命とは、1960 年代半ば以降に展開した技術革新。穀物生産水準を引き上げ、食料問題の緩和に大きく寄与しました。それにより、1961年に7億4100万tだった世界の穀類作物生産量は、1985年には16億2000万tに増大。食料問題のみならず、環境・資源・エネルギー・医療・健康といった人類の生存に関わる諸問題の解決に挑む「21世紀の緑の革命」が展開中です。

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植物バイオテクノロジー

植物は、私たちが気づいていない多くの能力を秘めています。そんな植物の潜在的な能力を発見し、農業・産業・健康・医療、環境・資源・エネルギーなど、様々な分野で利用することにより豊かな社会や生活の実現が期待されています。こうした期待に応えるべき、植物バイオテクノロジー研究室は植物の遺伝子やタンパク質の働きを解き明かしながら、遺伝的改良による新植物の開発に取り組んでいます。

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教員紹介

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PRIETO Rafael

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植物バイオテクノロジーは私たちの生活を多方面から支える

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植物を人の暮らしに役立てる方法といえば、まず思い浮かぶのが食料としての利用です。
しかし、実際のところ、医学・工学・環境分野といった様々な分野で植物は研究対象となっているのです。地球外の惑星への移住や宇宙ステーションでの長期滞在を夢想してみると、宇宙空間での植物による食料生産は、重要な研究課題ではないでしょうか。
植物バイオテクノロジー研究室では、生命の設計図であるDNAに着目し、植物に眠る知られざる才能を発見しようとしています。つまり、植物の潜在能力を引き出し、そのパワーを引き上げることを視野に入れて、暮らしに役立てる方法を探っています。

植物が秘める生命の設計図を発掘!植物界の遺伝子ハンターになる

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植物バイオテクノロジー研究室では、例えば、遺伝子と生命現象との新しい関わりを探るために、遺伝子が壊れて環境ストレスへの適応、チッ素代謝、植物ホルモンの作用などが変わってしまった植物(遺伝子破壊株)の性質にも着目しています。
植物が持つ遺伝子の数は、およそ2万数千個。しかし、働きが解明されている遺伝子はその一部にすぎず、そうした遺伝子でさえ詳しく調べてみると予想もしなかった役割が発見されることもあります。
「オーキシン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?光や重力といった環境刺激に反応を示し、初期発生から形態形成などに働く植物ホルモンです。オーキシンの作用をより深く理解するために、オーキシンに敏感になった遺伝子破壊株や、逆に鈍感になった遺伝子破壊株の取得とその原因遺伝子の単離と解析を行っています。

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また、さまざまな性質をもつ遺伝子破壊株を分析することで、植物がもつ解毒作用を解明することもできるかもしれません。農業で用いられる除草剤などの薬剤に対して、その作用を受けやすい遺伝子破壊株や、反対に作用を受けにくい遺伝子破壊株も探しています。そこから解毒に関わる遺伝子を発見すれば、除草剤を撒いても枯れない新種の農作物を開発することができます。
生物に対する毒性を持つ重金属に対して、極微量の濃度でも生育不全を示したり、反対に耐性能が高かったりする遺伝子破壊株を解析し、解毒作用をもつ遺伝子のみを取り出すことができれば、重金属で汚染された土壌を浄化できる植物もつくりだせるのです。植物バイオテクノロジー研究室では、前述のように、植物ホルモンの作用機構、栄養代謝、または環境ストレスへの適応が異常になっている変異株を分離して、その原因遺伝子の単離と機能解析を行いながら、遺伝的改良による収量や環境ストレス耐性が向上した作物とファイトレメディエーションに適する植物の開発を目指します。

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研究内容

植物ホルモンオーキシンの作用機構

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オーキシンを含む寒天培地と含まない寒天培地で1週間成長させた シロイヌナズナの野生型とオーキシン高感受性変異株

天然オーキシンであるインドール酢酸は、植物における環境刺激に対する応答因子であり、また、内部因子として発生、形態形成や細胞の分裂・伸長・分化などに働く重要な植物ホルモンです。私たちは、野生型と比べると根の伸長がオーキシンによって強く抑制されるシロイヌナズナ株を分離して、その変異株の原因遺伝子の単離と解析を行うことによりオーキシン応答の解明に取り組んでいます。

植物におけるグルタチオンの調節機構

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 1μM Cd2+を含む寒天培地と含まない寒天培地で
1週間成長させた野生型とGSH合成変異株(A)。
高速液体クロマトグラフィーによるGSHと
GSH代謝物の蓄積定量 (B)。 

三つのアミノ酸(γ-GluCysGly)からなるグルタチオン( GSH) は、生体内の酸化還元状態の維持、薬剤・除草剤などの生体異物の解毒、重金属防御などに関与しています。本研究では、GSHの生合成、代謝、またはその調節機構に関与する遺伝子の単離と解析を行うことにより、環境ストレス耐性が向上した作物や重金属などに汚染された土壌の浄化(ファイトレメディエーション)に適する植物の開発を目指します。

研究の一例

  • γ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)による生体物の解毒
  • 挿入変異法によるオーキシン高感受性シロイヌナズナ株の分離と機能解析-Axhs10遺伝子とオーキシン応答性遺伝子発現との関連について-
  • シロイヌナズナのγグルタミントランスフェラーゼ(GGT)遺伝子ファミリー機能解析ーGGTとグルタチオン代謝との関連についてー
  • 挿入変更法による硝酸同化経路の調節に関与する変異株の分離と解析ーChr15遺伝子の単離と解析ー
  • 挿入変異法によるオーキシン高感受性シロイヌナズナ株の分離と解析-axhs10変異株の単離と解析ーAxhs10遺伝子の単離と解析ー
  • 重金属への感受性に関与する変異株の分離と解析 ーCds3遺伝子の単離と解析ー

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