学科トピックス

2014年11月13日

広がる対人援助の世界:フリースクール教員

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北村真也先生(左)

The “Taijin Enjyo” scenes in Kameoka 2014

人文学部心理学科のある亀岡キャンパス(当時。現在京都太秦キャンパス)。その亀岡の地は対人援助活動の盛んなところです。対人援助とは、広い意味でいうと人間関係すべてです。みんなお互いがお互いを助け合って生きているからです。

亀岡にも大学にも、そういう対人援助が豊かに根づいています。
そして、狭い意味での対人援助……援助の必要なかたがたに対するサポート業務を行なっているところも、亀岡やその近郊には多いのです。

したがって、そういう地域の対人援助の現場とも馴染みになりながら、教室での勉強だけでなく実地体験をももとに自分の対人援助力を高めていこうと思えば、まさにそれを行なうのにふさわしいのが亀岡の地です。

京都府教育委員会認定フリースクール アウラ学びの森 知誠館 代表 北村真也氏 に聞く

8月2日に「高校生のための臨床心理学セミナー」を開催するにあたって、セミナーにご登場いただく北村先生に、一足早くお話をうかがいました。アウラ学びの森は亀岡の住宅街にあります。

(聞き手:人間文化学部心理学科 川畑 隆)

――――北村先生のお仕事について教えてください。

北村:「学習する子どもにとって教育とは何か」を見出したいと思って、2000年にまずは“黒板のない”学習塾を始めました。そこへずっと不登校で家に引きこもっている中学生が母に連れられてやってきたんです。それが2004年にフリースクールも併設するきっかけになりました。不登校している子どもたちは朝から学校の代わりにやってきて、学習し、語り合い、地域の人たちとかかわりながら、地に足をつけた歩みを続けています。

――――どんなところに“やりがい”を感じますか。

北村:中2から不登校でほとんど家から出られなかった子が、19歳のときにうちにやってきました。そして、車の免許をとり、専門学校に入り、「私は2年前の私に言ってやりたい。あなたの2年後はこうなってる。何をクヨクヨしてるの?!って」と言えるまでになりました。
そんなドラマチックな変化を、私たちもそのドラマの登場人物の1人として経験する幸運に巡り会えています。そしてまた、その子の変化は家族にも影響を与え、よい変化を促すことになったのですが、私自身の家族観も大きく影響を受けました。子どもも周りも一緒に成長しあっているという実感があります。

――――亀岡ならではのところはどんなところでしょう。

北村:汽水(きすい)領域という言葉があります。海水と淡水が入り混じるところのことです。亀岡は京都市のベッドタウンとしての新市街と伝統的な旧市街の両方がある汽水領域です。そして、その両市街の多様な人たちが協同して亀岡を作り上げているのと同様に、対人援助においても、医療や福祉、教育、その他の分野の人たちが各自の専門分野で頑張りながらもその垣根を越えて繋がってゆく、それも小さな小回りのきくネットワークを作ることによって、多様な側面をもつ1人ひとりにフィットした援助を作り出していけるのではないかと思っているのです。そんな思いで、「南丹ラウンドテーブル」という定期的な催しも主催しています(「南丹」とは亀岡市も含む地方名です)。

――――北村先生にとって対人援助のために大切な視点とは何でしょうか。

北村:「文化」「教養」……ということになるんだと思うのですが、「自分とは異なる視点」に開かれるというか、「他者(相手)」とじっくり向き合い、相手を知ることでしょうか。そしてそれは、相手と世界との繋がりの中にあるその人固有の「資源」を、その人が幸せに生きていける方向で見つけサポートしていくことです。こういう問題や障害を抱えているからとか、結果が出せないからとか、点数が低いからとか、そういったことを超えた……そう、やはりそういう「文化」「教養」です。


――――高校生へのメッセージをいただけますか。

北村:自分にとって新しいヒト、モノ、コトとどう出会うか……ということになるでしょうか。先ほど言った「自分とは異なる視点」にどう出会うかです。大きな流れに乗っからないと不安だし、実際にそこからの「挫折」を味わっている人もいるでしょう。でも、それを「挫折」で終わらせるのではなく、「生きるモード」が変わるきっかけにできればいいと思うんです。そしてそのためには、世の中が、私たちがそこをどう支えられるかが重要です。私は、そういった「生きるモード」の転換を「セカンド・キャリア」という言葉で表しています。

――――今日はありがとうございました。

(インタビュー:2014年5月14日 アウラ学びの森にて)

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川畑 隆 教授(発達臨床心理学)

専門は児童福祉や教育分野等における対人援助。担当科目は「発達臨床心理学」「心理アセスメント」など。同志社大学大学院博士前期課程修了、文学修士。28年間の京都府児童相談所勤務をへて現職。臨床心理士。

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