VOL.2
足立勝彦教授が聞く
――マイケル・スミツカ ワシントン・アンド・リー大学教授
アメリカの学生と日本の学生、アメリカの経営と日本の経営
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マイケル・スミツカ氏
東京銀行勤務を経て現在、ワシントン・アンド・リー大学教授。フルブライト研究員。専門は日本経済。北米日本研究資料調整協議会(NCC)委員。著書にCompetitive Ties: Subcontracting in the Japanese Automotive Industry (Columbia University Press, 1991)がある。経営学博士(エール大学)。 |
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ワシントン・アンド・リー大学(WASHINGTON AND LEE UNIVERSITY)
アメリカの首都・ワシントンに隣接するヴァージニア州にある私立大学。小規模だが、設立は1749年とアメリカでも有数の歴史を持つ名門。ちなみに学校名は、大学に多いに貢献した初代大統領・ジョージ・ワシントンに由来する。少人数の厳しい指導に定評がある大学。 |
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アメリカではまず、専門分野が求められる
- 足立
- まずマイク(マイケル)さんのキャリア、ことに高校、大学時代についておうかがいしたいのですが。
- マイク
- 両親がともに高校の生物の教師でしたので、小さい頃から理科系に興味がありました。デトロイトの公立高校では、理科系のクラスにいました。ハーバードへは数学を学ぶつもりで入ったんですが、いきなり大学院レベルの講義で〈笑〉。自分は丸1日数学だけを考え続けるほど好きではないな、と思い始めて、他の専攻を考えだしました。
- 足立
- その『違う専攻』はどう選ばれたんですか?
- マイク
- リベラル・アーツ〈教養科目〉で1年次にライシャワー氏(元駐日大使)らが教えておられたアジア史をとっていました。それが面白くて2年で日本史を学んだんです。そしたら数学をやめるとき、東アジア研究という専攻しか残らなくて〈笑〉。
- 足立
- ハーバードの東アジア研究と言うのは、どういうことを学ぶわけですか?
- マイク
- ハーバードの特徴として、授業以外に寮があります。全寮制で、先生も同じところに住み、週に何度かは一緒に食事をします。そこで知り合ったのがボーゲル先生(エズラ・ボーゲル 日本と中国研究で著名、著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は日本でもベストセラーに)で、彼から日本だけでなく中国文化の影響下にある東アジア全般の見方を学びました。
- 足立
- 日本語もその時代に学ばれたんですね。
- マイク
- はい。大学3年からですね。まず日本語のパターン覚えるということで、同じような文章を何度も繰り返すのですが・・。正直、それで日本語ができるようになったとは思いません。私の場合、日本の小説を読み始めてから日本語が上達したと思いますね。
- 足立
- そして大学を出られてから、研究者への道を歩まれたわけですか?
- マイク
- いえいえ。2年間程度の学習で日本語が使えるとも思っていませんでしたし、まず日本語を使うところで生活して、そして日本に本当に興味を持てると思えたら大学院へ行こうと。そこで、東京銀行に就職しました。外交官は落ちてしまって〈笑〉。東京銀行はニューヨーク支店勤務だったのですが、当時の支店の中は日本語が中心で。
- 足立
- 当時(1970年代)の銀行は海外支店でも日本人の比率が高かったんですね。今はトップクラスの管理職以外は現地採用、というところが多いようですが。
- マイク
- 当時でも1000人の行員のうち日本人は100名ちょっとですね。ただ管理職は100%日本人。外国人は出世の可能性がまずない。だから心残りなく銀行を辞めて、大学院(エール)に行き、今度は経済を学びました。
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- 足立
- では日本の勉強はお休みですか?
- マイク
- いえ、日本経済を研究していました。経済学の理論を学びながら、実際の日本の経済データをその理論に照らして考察する、という研究ですね。その後にちょっとしたアジアブームが起きて、大学で日本と中国の経済を教えることになりました。
- 足立
- 実際に日本に来られて日本企業の研究もされていますよね?
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- マイク
- 日本の企業間取引に関心があり、それを論文にしようと思っていたので何度か日本に来ました。中小企業のあり方や、下請け制度の研究をしていました。
- 足立
- そういう過程で、多くの日本の企業人とお知り合いになったと思います。そこで気づかれた、日本の企業、企業人の特徴といったものはありますか?
- マイク
- そうですね。日本企業の場合、中間管理職がローテーションでいろいろな部署を回りますよね。ことに銀行の場合、2年程度のローテーションで動きます。これでは専門性は養われません。アメリカの銀行とでは、(高度な専門性が求められる分野では)競争になりませんね。
- 足立
- 日本の場合、全体を把握することを重視して様々な業務を経験するのが大事とされています。アメリカは専門性重視、ということでしょうか?
- マイク
- アメリカでも企業のトップになるには、全体を理解していないといけません。しかし、自分の専門分野を持ち、その上で広い視野を持つことが求められます。だからNBA〈経営学修士〉や、他の企業での経験が重視されますね。スペシャリストとしていろいろな企業で働くことで、幅が広がるという考えです。でもこれは、1980年代以降ですね。それ以前はアメリカでも終身雇用中心だったんですよ。
- 足立
- なるほど。それでは日本の中間管理職のマインド――働く意識ですね。これはどうお感じになりましたか?
- マイク
- 仕事とプライベートの境界があいまいですね。さらに仕事の領域もあいまいな場合〈企業〉が多いので、どこまでが自分の仕事かうまく区別できていない。そして上司の目を意識しますから、結果として残業がとにかく多くなる。無意味な残業が多いですね。
- 足立
- アメリカ人は仕事はここまでと割り切って、残業をしないのですか?
- マイク
- ヨーロッパ人よりは働く時間は長いですよ〈笑〉。ただ、チームで仕事を行なう場合でも、個々の役割は明確に決めて、それだけをすれば良い、というのはありますね。そうじゃないと個人の業績がきちんと評価できないでしょう。また、高い評価を得たい、出世したいという人は一生懸命働きます。そして偉くなるか、より良い条件で転職していく。
- 足立
- 日本人は集まってぐだぐだ残業している、と。私は、40才ぐらいまで日本のビジネスマンは、みんな社長、というか出世を夢見ていて、そこでプライベートタイムよりも会社にいる時間を重視しすぎてしまう、と見ているのですが。
- マイク
- アメリカはもっと現実的ですね。また社長になりたいと思う人はほとんどいない。自分に合った仕事、自分の能力を生かせる仕事を続けたいと思っていますね。
大学時代に身につけておきたいコミュニケーション力
- 足立
- では次に、日米の大学で教えられて、学生はどう違うでしょうか?
- マイク
- アメリカでは大学生の勉強は仕事です。大学の成績が職業につながる。だから必死です。また教師も厳しいですよ。落第も当たり前ですし。またサークルにも真剣に取り組みますね。サークル活動で何らかの役割を果たすことは、一つの能力の証明です。そしてスポーツと学業の両立も評価されます。だから時間の使い方がうまくなる。
- 足立
- 大学の成績が重要と言うことは、アメリカの企業は学生時代の成績をしっかり評価するということですね。
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- マイク
- 成績は見ます。銀行などでは、一定以上の成績を残していないと面接も受けさせてもらえません。大学院になるともっと〈成績が〉重要になりますね。アメリカは実は学歴社会ですから、良い大学院に行くために良い大学へ、そのためには高校で良い成績を、という流れがはっきりとしています。
- 足立
- それに比べると、日本の大学生はあまり勉強していないように思えますね。
- マイク
- 昔は日本の場合、大学生自体が少なかったから、大学を出たというだけで良かったのでしょうね。就職できた。ただこれだけ進学率が高くなってくると、企業の方が『大学で何をしてきたか』をきちんと見るようになりますよね。4年間、ただ在籍しただけ、という学生が、入社して仕事ができるはずがないでしょう。これから変わると私は思いますよ。
- 足立
- それでは学生は、どれぐらいのことをやれば評価されるのでしょうか。
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- マイク
- 専攻によってもかなり違いますよね。エンジニア――理工系なら、何ができるか、企業が何を求めているかはわかりやすいでしょう。文科系だと、まず自分が大学4年間何をやってきたかを『うまく伝える』ことが求められるでしょう。
私の大学は1学年400人程度ですが、エリートと呼ばれる銀行に就職している。それはコミュニケーション力があるからです。そして、数字が使えるようになるということ。経営と数字は不可欠です。会計の簡単な数字が読める。そしてメモをきちんと取れる、文章をきちんと書けること。加えて全体の教養を高めること。そうすれば200ページの論文も書けます。そして、寮(クラブ)で自己管理をきちんと学ぶ。そうすれば、社会が求める人間になれると信じています。
足立
- そういう教育を受けている人たちが、これからの企業を作っていくんでしょうね。今回はいろいろと面白いお話、ありがとうございました。
- マイク
- ありがとうございました。
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