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大西昭生教授が聞く

  • 2007年9月 6日(木) 08:07 JST
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VOL.4

大西昭生教授が聞く

㈱バルニバービ・佐藤裕久(さとうひろひさ)代表取締役社長

時代の流れを読み、それに乗るアイデアを考えることが大切


 

(株)バルニバーニ

関東・関西を中心に、流行の発信源となるカフェやレストランをプロデュースしている、現在飲食業界で注目を集めている企業。バルニバーニとは『ガリバー旅行記』に登場する研究ばかり行なっている都市の名前から。
佐藤裕久(さとう ひろひさ)氏

㈱バルニバーニ代表取締役社長。1962年生まれ。著書に『日本一カフェで街を変える男』など。



学生時代から起業を志す


 

大西 
佐藤さんは次々と人気のカフェを成功させ、今、非常に注目されている若き経営者です。学生時代から起業を志してこられた佐藤さんに、自分も起業したいと考えている今の若い人に向けてメッセージを送っていただければ、と思います。
佐藤 
わかりました。と言っても、どうしても人間の記憶は美化されやすいですから、注意しますね(笑)。あと、私の本音を言えば、本当に何かやりたい、という気持ちを持っている人は10人に1人ぐらいではないかと考えています。その1人の人を意識して、お話したいと思います。
大西 
わかりました。ではまず、大学時代のことをおうかがいしたいのですが。
佐藤 
勉強はしませんでした(笑)。神戸市外国語大学という小さな大学の、弱いラグビー部の活動に夢中になっていました。また、いろいろな大学の学生ともよく遊んでいました。ちょうど、学生起業が流行った時代(1980年代半ば)で、その頃の仲間の多くが起業しましたね。今、上場企業の社長が20人ぐらいいると思います。
大西 
それはすごいですね。みなさんに共通点のようなものはありますか?
佐藤 
神戸は親が裕福で、外車を乗り回すような学生もいましたけど、起業している仲間に金持ちは少ないですね。僕も少ない仕送りで4畳半の生活でしたから。その暮らしの中で、少しでもおいしいものが食べたい、豊になりたい、というようなハングリーさはありました。
大西 
アメリカの起業家にはそういうハングリーさを感じますね。
佐藤 
そうですね。彼らは肉食ですから(笑)。日本人は草食で、ちょっとおとなしいかもしれません。でも、もっと大事なのは「面白いことをしたい」という精神です。文化祭、学園祭の模擬店と同じですよ。もっと楽しく、という気持ちが大事だと思います。起業なんて、学生がいきなり始めてもかまわない。自分のその時の趣味を仕事にするために頑張れば、おのずと道は見えてきます。


ファッションからカフェへ


 

大西 
最初はファッションの仕事をされて、フランスなどにも行かれたわけですね。
佐藤 
友人たちから古着を預かって、それを販売することから始めました。仕事を通して在庫管理とか覚えていき、フランスのアパレルの販売をするようになったのですが・・。パリでは痛い目にあいました(笑)。大人の文化の国で、日本の若造がふりまわされました。今の日本はコドモ文化の国だと痛感させられました。それで、パリにどうリベンジするかが個人的なテーマになりました。
大西 
でもそこでカフェをしっかり学んで来られたわけですよね。私も学生を連れて何度かパリを訪ねましたが、確かにレストランもカフェも文化を感じます。
佐藤 
僕はビストロ(居酒屋)の影響が大きいですね。でも学生さんをパリに連れて行く、というのはいいですね。うちの会社では、今年は優秀社員を3人、パリに行ってもらいました。23歳の女性も選ばれていましたよ。
大西 
佐藤さんの会社は女性が多いんですか?
佐藤 
多いですね。大阪本社の事務・企画部門は10名中8人が女性です。男性は営業の役員と監査役ですから、本社で男は僕1人、ということもありますよ(笑)。
大西 
やはり飲食サービス業には女性が向いているということですか?


 

佐藤 
職種に関係なく、優秀な女性は多いですよ。経理の女性はすごくきっちりしていて、僕もよく怒られますし(笑)。店舗デザインの女性はファッションも面白くて、夜遊びも豪快みたいで。それで仕事をバリバリこなしてくれます。まだまだ社会構造が女性に不利な部分が多いですけれど、僕は仕事のパートナーとして女性にすごく期待しています。


個を大切にすることが社会を変えていく


 

大西 
最近の若い男性についてはどう思われますか?
佐藤 
優秀な子は優秀ですよね。ただ一部です。そういう子はITなり起業なりで一気に走りますけれど、あとのほとんどの子は弱い、と感じますね。若いときは『死』以外の失敗は許されると思うのですが・・。そこまで自分を信じられないのかなあ。
大西 
佐藤さんも失敗を経験されてきたわけですよね。
佐藤 
そうです。フランスのメーカーが倒産して、ファッションの仕事がダメになって。そこで学んだのは、工場を持っていないといけない、作り手でないといけない、ということでした。僕にとっての工場、それがキッチンだったわけです。
大西 
カフェを出されたのが1995年。バブル景気がはじけて、不景気だった頃ですよね。
佐藤 
それが良かったと思います。バブルの時だったら、大きな資本がドーンと大きな店を作っていたでしょう。ロー(不景気)の時代は、ミクロが商売を始めるにはかえって向いていたと思います。
大西 
今は成長されて、大きな企業となられたわけですが。
佐藤 
大きくはないです(笑)。でも21世紀は、ミクロがマクロを飲み込んでいく時代になる、と考えています。何より個が大切。たった一人の個が始めたことが、社会を変えていけるのではないかな、と。
大西 
それでは、佐藤さんの会社はまず個を重視する、というわけですか?
佐藤 
そうですね。スタッフにはまず、自分の楽しさを追求して欲しいと言っています。お店をまかせて、素晴らしい管理能力を発揮してくれれば、いつでも店を譲って業務委託契約という形にするよ、とも。いい店を作ってくれれば20代で年収1,000万稼ぐ社員もいますし、40代で500万という人もいる。その意味では肉食文化の経営ですね。ただ、日本企業が育ててきた、社員の家族まで面倒をみる、終身雇用の良さもあわせ持てる組織にしたいと思います。



 

大西 
ではやる気のあるスタッフをどのように育てるという方針は。
佐藤 
難しいですね。育てる、と言っても育つものではないですから。ただ、うちは社としてビジョンは掲げていないです。あくまで一人ひとりが「なりたい自分になる」ことを、仕事を通して実現して欲しい、と。やっていること、例えば料理とかカプチーノとかを心から好きになって、仕事をしながら仲間が幸せで、自分は毎日ワクワクしている、そういう映像(イメージ)を描いてもらえるようにするのが、僕の務めと思っています。
大西 
佐藤さんもワクワクしながら仕事をされていますか?
佐藤 
はい、と言いたいですが、今も新しいことを始めるのは怖いし、苦しくて仕方ないですよ。でも、人間、絶壁まで追い詰められれば何かできる。奇跡が起きる、と信じていますから、挑戦できるんでしょうね。
大西 
起業されるには、例えばご両親との戦いなどもあったのではないですか。
佐藤 
まず大学を辞める、と言った時が大変でしたね(笑)。それから保証人になってもらうときには、父に土下座しましたし。正直、父とは思想の根底が違うので、分かり合えるとは思いません。でも、親に頭を下げたことで、今度は親に「どうだ」と言って見せたいんですよ。それで頑張れたところもあります。実は両親のためにマンションを買ったんですよ。さすがに喜んでくれました。このローンで僕はあと30年働かないといけないのですが(笑)。


自分が幸せだと感じることが大事なこと


 

大西 
大学の話が出ましたが、改めて、今の学生になにかアドバイスを送ってください。
佐藤 
そうですね。まず4年間、思いっきり世界を広げてください。どんなことにも挑戦して、苦しいことも進んで行なって。僕はラグビーではプロップというキツいポジションだったのですが、そこで仲間のために頑張る、ということの面白さを知りました。あと、学生食堂でバイトもしていましたし、多くの友人と出会いました。そして、もうここで十分に学んだ、と思ったら、自分で卒業してしまえばいい、と。
大西 
佐藤さんの話をうかがうと、いかに自分から動くか、好きなことを追求するということが大切か、と感じさせられますね。
佐藤 
やはり好きなことをする、自分が幸せだ、と感じることが一番大事なことだと思いますね。個の幸せなくして全体の幸せなんてないです。僕は、うちの店に行って、アルバイトの若い子が楽しそうに笑いながら仕事をしていると、「ああ、うちの会社は良い会社だなあ」て思えるんですよ(笑)。
大西 
個の幸せを求める経営、ですね。今回は良いお話をお聞かせくださいました。ありがとうございました。


 


 

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