研究室の窓

「研究室の窓」は、経済学部教員がそれぞれの専門分野における自身の研究をQ&A方式で紹介していくシリーズです。本学の経済学部教員の専門分野・研究内容を知る端緒としてお読み下さい。

【第3回】  西藤二郎先生

Q1

先生はどんなことを研究されているのですか

私は、交通経済論というちょっと変わった科目を担当しています。その中には、いろいろな研究対象がありますが、私は、道路や空港や港湾など、みんなが、永い世代にわたって使っていくものは、どのようなお金で作ればいいのか、そのためにはどのような政策を採るのがよいかを中心として研究しています。

Q2

そうしたら、高速道路の無料化も研究対象になるのですね?

そのとおりです。しかし、いきなり無料化の是非を考える前に、少し横道から考えて見ましょう。皆さんはローマ帝国の時代における「世界の道はローマに通ず」という言葉や、日本でも、徳川家康は、街道整備を重視したことについては聞いたことがありますでしょう。このことは、国を治めるとき、道路政策は、軍隊を動かすためにも、人やモノを移動させるためにも、最も重要な政策であったことは、容易にわかりますよね。

Q3

国を治めるためには、高速道路は無料でいいのだ、ということですか?

ちょっと待ってくださいネ。ローマ帝国の時代、軍隊や物資を動かすのに道路以外に船という手段は輸送力になるには程遠い規模しかありませんでしたよね。だから国を治めることがすなわち道路を治めることになったわけです。したがってローマ時代の道路は軍用の利用はもちろんですが、市民も商売をする人もすべての人が無料で通れたのです。

ところが、今日の高速道路は、鉄道・船・航空など、沢山の交通手段がある中で重要な役割を担っているわけですよネ。この場合に高速道路だけを無料にするというのは、公平な判断だと思いますか?

--あっそうか!

そうなんです。高速道路の料金引き下げによって、現実に廃業に追い込まれたフェリーや、減収に追い込まれた鉄道の事例は一杯あります。要は、無料であるべきかどうかの議論の前に、総合交通政策の中で、料金をどうするか、今後高速道路にどんな役割を期待するのかを議論せずして、いきなり無料化だの、一部有料化などというのはやはり拙速のそしりを免れませんね。

Q4

ところでローマ時代の道路は今の国道と同じく税金でつくったのですか?

そこが非常に面白いやり方だったのです。すなわち道路建設の技術や制度はローマ人が侵略した土地に持ち込むのですが、実際に工事をする労働力としては、ローマ人の奴隷ですが、指揮をするのは兵士です。そして資材は、地元から調達し修繕維持は地元の担当官がいて実行する、というように、機能を分担していたのです。いわば、今日の運行機能と保有機能などを分けて建設・維持する上下分離方式が採られていたということで、非常に示唆に富むものなのです。

Q5

ローマ時代の街道が歴史遺産として残っているだけではないのですね?

そうですね、道路など永い世代にわたって利用される交通社会資本の建設維持の方法は、すぐさま税金という道路を使わない人まで払わせる方法ではなく、やはりそれによって恩恵を受ける人が、その大きさに応じて負担していく方法が模索されるべきでしょうね。

--何気なく道路を利用していましたが、ちょっとお話を聞くだけで楽しくなりますね。ありがとうございました。