経済学部開講の公開講座「白書で学ぶ現代日本」の一環として、本年度7月に発表された『平成21年度経済財政白書-危機の克服と持続的回復への展望-』を、京都リサーチパークにて開催の特別公開講演会として取り上げ、その主要な論点を「日本経済の現状と課題」と題して、内閣府参事官補佐の平井滋氏より基調講演として解説して頂いた。
白書第1章「急速な景気後退に陥った日本経済」では、2008年秋以降の今回の景気悪化がいかに「速く」で「深い」ものであったかが検証された。特に、日本の主要輸出品目である自動車や電子部品、一般機械など工業製品の輸出が大幅に減少し、その影響が内需の減少に波及する一方で、企業の雇用調整は労働時間から雇用者数に及ぼうとしており、デフレに逆戻りする可能性が指摘された。
白書第2章「金融危機と日本経済」では、過去の金融危機との比較を通じて、今回の金融危機の特徴を明らかにし、金融危機前後で生じた資金の流れの変化から金融部門の構造変化を説明された。特に、今回の金融危機の特徴として、内外の金融資本市場や実体経済との連動性が高まり、国際的な波及ルートが多面化したことを指摘された。
白書第3章「雇用・社会保障と家計行動」では、近年における雇用の非正規化の実相を捉えた上で、国際比較の観点から雇用保護規制の度合いが高い国ほど、非正規雇用比率が高く、また家計貯蓄率が高い傾向にあることが指摘された。また、税や社会保障制度を通じた所得再分配効果について、日本は国際的には低い水準にあり、さらには公的年金など社会保障制度に対する信頼が個人消費の下支えには重要であることが指摘された。
その後、休憩時間を挟んで、平井氏と共に、本学経済学部の内山隆夫(経済政策)と宮川重義(金融論)が加わり、久下沼仁笥(公共経済学)の進行で、白書の内容および民主党政権の経済政策に関するパネル・ディスカッションが行われた。特に、フロアから出された質問としては、95兆円の概算要求に関連する日本の財政赤字の問題や、失業や非正規雇用問題への民主党の政策対応、さらには政権交代に伴う政策変更についてなどであり、鳩山政権の政策運営への関心の高さを窺わせる内容が多かった。日本経済にとっては、白書の結論と同じく、内需と外需の双発エンジンによる景気回復が理想的であるが、その実現には時間を要すという慎重な見方や、世界的危機に直面している現在は各国との政策協調を優先すべきことなどを討論者の間で確認し、講演会を終了した。
経済学部開設40周年を記念して、例年の基調講演としての経済財政白書の解説に加え、パネルディスカッションを通じて白書の重点項目や時事的な論点の整理がなされたことなどに対して出席者の方々より好評を得られ、今後の講演会開催の継続を期待する暖かい支持を頂いた。

