文化の違いから会話術を学ぶ

リッチモンド・スティーブン 講師
リッチモンド・スティーブン講師
専門は応用言語学、社会言語学。担当科目は「マンガ・イングリッシュ」「異文化コミュニケーション」「英語フィールドワーク京都」「現代オーストラリア事情」など。ロンドン大学SOAS大学院修士課程(応用言語学)。
ネイティブではない相手とでも英会話の練習は不可欠です 外国語で会話をする時、どういうところに注意を払いますか? ほとんどの人は単語、文法だと答えるでしょう。発音やイントネーションが大事だという人も少なくありません。これらはすべて当たり前です。単語や文法の知識がなければ会話は成り立ちません。勿論、ジェスチャーなどでコミュニケーションはできるわけですが、「会話」とは言えません。
 しかし、ネーティブらしく英語を話すにはこれらのポイントに注意を払うだけでは足りません。長年英語の単語や文法を猛烈に勉強して、発音やイントネーションを練習しても、第二言語である英語を話すとなると会話がうまくできない人がいます。これはどうしてでしょう?
 答は文化にあります。
 私たちは、生まれた時から周りにある言語、行動パターン、習慣などを無意識に吸収しています。自分の文化の外に踏み出すと、不慣れなことに「カルチャーショック」を受けることがあります。それほど大変大きな影響力が文化にあります。会話というものはその一つにしかすぎません。単語や文法以外に「会話の運用」というものもあります。これはいつ、どのように挨拶をするのか、どのように質問や応答をするのか、相槌の打ち方などをも含んでいます。
 もちろん、外国語の会話力を身につけるのにその言葉を話したり、聞いたりできる環境にいるのが一番良いかもしれません。しかし、日本では外国語を自由に話せるところは限られています。だからこそ、外国語の授業の時間を大事にすべきであるし、有効に使うべきなのです。
 私の研究する応用言語学という学問には、言語についての理論を用いて、より容易に外国語を習得させる方法を学ぶ部門があります。ここでは、単語、文法、発音などを機能的にとらえて、それを総合的に「会話」につくりあげる方式を研究しています。
 会話分析を行い、英語で会話をするときの言語的な行動と日本語で会話するときの言語的な行動とを比較してみると、ほとんどの教科書が教えてくれない「会話術」が見えてきます。たとえば、日本語の会話における質問と答えの間の沈黙時間が英語のものより長い傾向があります。上下関係の強い日本の社会では、その「間」が次の状況下で特に長くなります。
 (1) 目上の人と話す(2) 相手のことをよく知らない(3) 周りに他人がいる
このようなストラテジーは授業で練習できます  この3つの条件が重なる、大学の英会話の教室では質問されても沈黙に陥る学生は珍しくありません。これは自分の文化の影響であるので、すこしも恥ずかしいと思うことはありません。しかし、その「間」にも意味があるのです。日本の文化では、質問に対する沈黙によって「考えています」「相手の地位を尊重しています」「答えがわかりません」などのメッセージが送られます。
 しかし、英語を母語とする教員ならば、質問に対して黙ってしまう学生がいれば、かなりショックを受けます。これは英語の文化には、質問に対しての沈黙が別の意味をもつからなのです。英語を話す文化においては、5秒以上続く沈黙は「あなたと話したくない」という意味にもとられかねません。この誤解に関しては練習すれば解決できることです。私は学生に、「ネイティブらしく」英語を話したいなら、問答の間の長い沈黙を出来るだけ避けるように勧めています。それには、いくつかの方法があります。例えば、聞き取れていない時に「Sorry?」、意味がわからないと「I don't understand.」のようなごく簡単な一言で誤解を与える沈黙を避けることが出来ます。 
 母語の言語文化は身に付いているものだから、当たり前で簡単なものですが、第二言語の場合は、はっきりと教わるまでそれがわかりません。だから、外国語を使いこなせるためには、文化のルールから学ぶことが大切なのです。外国語をマスターするには文化の壁を越えなければなりません。私は、外国語のスキル(会話術を含めて)を楽しく向上させることが応用言語学者の使命だと考えています。