
私たちが今まで教わってきた歴史は、ほとんどが文献などの「書かれたもの」を調べ、そこに記録されていることを学者がまとめた「記述の歴史」です。しかし、歴史はそれだけではありません。人の記憶の中にはっきりと刻まれ、言い伝えによって受け継がれてきた「語りの歴史」があります。そして、それが大切なことを伝えていることも多いのです。「記述」も大切だが、同様に「語り」も評価してはじめて、私たちの過去、歴史が復元できるのですね。
記述されていない歴史に出会うことは簡単ではありません。でも、現場に出かけ、そこに残されたものを調べ、人びとの語りに耳を澄ませることで、これまで見過ごされてきた新たな歴史を発見できるのです。そこから新しい日本史が始まる。私たちはそんな気概で取り組んでいます。

僕たちが高校までに習ったのは、史料に残された「書かれたこと」をまとめた歴史。でも、言い伝えによって受け継がれてきたこと(伝承)、その場に残された史跡やモノが、大切なことを伝えている場合も多いんです。それを拾い起こすことによって、生身の人の営みや暮らしのしくみ、そして僕たち自身の歴史を見つけていくことができるんですね。「歴史民俗学」は、そんなふうに、先人が残した物や伝承、地図などを読み取り、現在の文化へ至るまでのプロセスを学ぶ学問なんです。