
僕たちが高校までに習ったのは、史料に残された「書かれたこと」をまとめた歴史。でも、言い伝えによって受け継がれてきたこと(伝承)、その場に残された史跡やモノが、大切なことを伝えている場合も多いんです。それを拾い起こすことによって、生身の人の営みや暮らしのしくみ、そして僕たち自身の歴史を見つけていくことができるんですね。「歴史民俗学」は、そんなふうに、先人が残した物や伝承、地図などを読み取り、現在の文化へ至るまでのプロセスを学ぶ学問なんです。
この分野でもっともユニークな授業と僕が思っているのが「妖怪文化論」です。専攻の佐々木高弘先生、堀田穣先生が、妖怪研究の第一人者・小松和彦先生(国際日本文化研究センター教授、本学非常勤講師)を招いて開いている学部の名物講義です。
僕が妖怪の面白さに出会ったのは、1回生の時。小松先生から、人々の妖怪への愛着やその人気の秘密などを教わり、妖怪研究の楽しさに目覚めました。その後、佐々木先生のゼミに所属して、風景と場所と信仰の結びつきや、それを研究していく方法について学び、それが今の僕の研究のベースになっています。
高校生の頃、日本人のきつね信仰に興味をもち、個人的に京都の伏見稲荷を調べたりしました。今思えば、それが最初の「フィールドワーク」。歴史民俗学は、歴史がまさに生きられた現場を何よりも大切にします。そんな現場に出かけ、そこに生きている人たちに実際に会って聞き取りをしたりする調査の方法が、フィールドワークです。佐々木先生から、本格的な調査方法や民俗学のさまざまな分析方法を学び、フィールドワークにも磨きがかかってきたと思います。


これまでに「酒呑童子(しゅてんどうじ)」の地域と伝承とのかかわりや、「七福神」が屏風や掛け軸などに絵として描かれるようになった理由についてレポートしました。今は卒論に向け日本における猫信仰について研究中です。日本全国津々浦々、猫に救われた話や、招き猫の民話など、色々な話があります。亀岡の近くにも化け猫伝説の伝わるところがあり、近いうちに訪ねるつもりです。できるだけ多くの情報を集め、可能な限り足を運び、僕なりの猫信仰論をまとめることが目標。なぜ猫なのかというと、単に僕が猫好きだから。どうせなら、好きなことを調べた方が楽しいですからね。
授業とは別に、佐々木先生をはじめ同じような研究テーマをもった先生方や学生たちが集まるユニークな場があり、自由に意見を交換したり、研究を発表したりして、お互いに刺激し合っています。週に2回、10名ほどのこの集まりを、僕たちは「自主ゼミ」と呼んでいます。そこでは色々なものの考え方に出会えるし、痛烈な批判もあったりするけれど、自分のテーマを深める上でも、僕たちになくてはならない発見の場となっています。
自分が好きなことを調べるのは、知的好奇心を満たす感覚が結構楽しいですね。と言ってもいわゆる「楽」とは少し違いますけれど。僕は、図書館に行って地域の風土記や歴史文献を読み漁ることが好きですが、実際に歩き回って、地域に住む住民の方々から聞き取り調査をしたり、フィールドワークをすれば、社会とのつながりを感じられることも、大きな刺激になっているんです。
自分で新しいことを考えたり、調べものをするのが好きなので、将来は、好きなことを生かせる歴史関係の出版社に就職できればと思っています。