
大学に入ってから臨床心理学を知り、そこで出会った先生方の影響もあり、いつの間にか臨床心理士をめざすようになりました。中でも最も影響されたのが久保克彦先生。
久保先生のゼミで一番印象的だったのが、“ヨコの関係”についてお話しされたことです。「医者と患者の関係は“治す・治される”という上下関係ですが、臨床心理士はそうではありません。患者さんから学ぶことも多く、言ってみれば“教え・教えられる”ヨコの関係です。治してあげようという態度で臨むとかえってコミュニケーションがうまくとれず、疲れてしまいます」。久保先生の教えを常に心掛けながら、毎日子どもたちに接するようにしています。
久保先生は4年前まで病院の現場で医療心理のお仕事をされていたので、ゼミでは実地の経験をたくさん話してくださいました。その一つひとつに患者さんへの気遣いがあるのを感じました。それが自然に私たち学生に伝わってきたような気がします。臨床心理の現場は常にこころ対こころ。こちらの対応や態度が、大きく結果に影響するので、なによりも現場感覚が重要になってきます。私が働いている「るんびに学園・綾部こどもの里」には大学院の時に実習に来たのですが、いま思えばその時は現場感覚といってもまだ頭の中だけ。最近やっとわかってきたような気がします。
「るんびに学園・綾部こどもの里」では、さまざまな理由で心が不安定になり、学校や地域に適応しにくくなった子どもたちが約30名、それぞれの家庭を離れ、職員とともに生活しており、また、敷地内にある分校で学習に励んでいます。私たち職員は、安心できる環境の中で、子どもたちが安定した人間関係を築けるようにと日々関わっています。

その約7割が虐待を受けた子どもたちですが、心の傷も一人ひとり違うので、こちらも一人ひとりに対して丁寧に対応しなくてはなりません。それに、子どもたちはまだ自分自身のことをわかっていないことが多く、自分自身についてうまく説明できないことも多いので、こちらが想像力を働かせて、相手をわかろうとしなくてはなりません。簡単に結果が出るものではないので、根気よく、そして正直に私自身を出すように心掛けています。
職場にも素晴らしい上司や先輩たちがおられるので、見習いながら、学びながら、来年10月の臨床心理士の試験に備えたいと思います。今からまさに勉強が始まったという感じで、久保先生や先輩方のような人間味のある臨床心理士をめざしたいと思っています。
まだ、勤めて数ヵ月なので必死で、やりがいを感じるという段階まで達していないのですが、子どもと会っていると、変化があったり、違う面をみせてくれたりする時があります。そんな時に、私のやっていることがその子の人生のプラスになればと思うことはあります。もしそうなれば、本当にうれしいです。