憲法が日本の最高法規であることは誰でも知っているでしょう。そして、いま、日本国憲法は文字どおりの激動期にあり、施行後60年を迎えて、憲法を「改正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで進んでいることも、否めない事実であります。その上、これまでの憲法学のように、憲法規範の名宛人は国家であるとか、憲法は国家権力に対する制限規範であるとか、憲法は国家に対し国民の「憲法上の人権」を保証するよう命じている、といった近代立憲主義の憲法観や人権観こそが、今日においても、中核となるべき憲法観・人権観念である、と考える者(筆者もその一人)にとっては、2005年4月に提出された憲法調査会報告書が憲法の役割として「国家目標の設定や国民の行為規範としての役割」を書いているのを目の当たりにすると、なおのこと「揺れ動く憲法観・人権観」といった感をも強く問題意識せざるを得ません。
それでは、一体、憲法とは何なのでしょうか。人権とは何なのでしょうか。つまるところ、憲法の本質や人権の本質は何なのでしょうか。その把握のためには「憲法の概念」や「憲法の解釈」など「憲法の理解」にかかわる憲法総論的問題を概観しておく必要がありますが、講義時間の関係上、日本国憲法との関連で適宜触れるにとどめます。この講義では、現行の日本国憲法とはどんなものか、日本国憲法にはどんな特徴があるのか、をよりよく知るために、まず日本の憲法の歴史をたどり、日本国憲法とはどんなもので、どうやって成立してきたかを学びます。そして日本国憲法の基本原理と特徴の理解へと進みます。新聞やニュースでもよく話題になる象徴天皇制や戦争放棄は、日本国憲法の特徴であります。さらに日本国憲法の人権保障の部分と統治機構の部分に焦点を当てて授業を進めていきます。憲法の命は人権であり、本来、人権保障と統治機構の関係は、目的と手段の関係にあります。しかし、現実にはその関係が本来の姿どおりになっていない場合も少なくありません。それだけに、あえて人権と統治機構の相互関係のあり方の本来あるべき姿に焦点を当ててしっかりと検討していきます。

三並 敏克 教授
担当科目は法学部では「憲法1」(憲法総論)「憲法Ⅱ」(基本的人権)「憲法Ⅲ」(統治機構)「憲法Ⅳ」(憲法訴訟)「専門演習1」「基礎演習C」、大学院では「憲法Ⅰ」(統治機構)「憲法Ⅱ」(統治機構)「憲法演習1・Ⅱ」。立命館大学大学院法学研究科博士課程単位取得満期退学。法学博士。専門は憲法。