あの人がマニアックな研究に目覚めた理由 Vol.2「バイオ医学と分子生物学」

あの人がマニアックな研究に目覚めた理由  Vol.2「バイオ医学と分子生物学」

「大学の先生って、『なんでそんなマニアックな道を極めちゃったの?』って感じの人、たまにいません? 僕、そういう人たちのことが気になるんですけど」。ふとした疑問を京都学園大学に投げかけたライターのカツセマサヒコさん。

「じゃあ、実際に聞いてみたら?」ということで、京都学園大学の先生に「どうしてその研究に目覚めたの?」と尋ねる企画を始めることになりました。第二回は、分子生物学を研究されている、松原守先生です!

ベンチャー企業出身の大学教授

カツセマサヒコ

先生、今日はよろしくお願いします!

松原 守先生

あ、はい……お願いします。

カツセマサヒコ

あれ……露骨にテンション低くないですか……?

松原 守先生

いやあ、てっきり、さえりさんに取材してもらえると思ってたから……(笑)

カツセマサヒコ

先生、最初からこんなにやりづらい取材は初めてですよ、僕は。

松原 守先生

あははは(笑)

さえりさんの著書まで買って、サインを貰う準備までしていたらしい。冒頭20秒で申し訳なくなりました。

カツセマサヒコ

でも、僕らみたいなライターを知っているということは、先生はSNSとかも積極的に使われているんですか?

松原 守先生

そうですね。学生との接点にもなるし、情報も集まるし、そこは積極的にやっています。

カツセマサヒコ

大学の講師って、生徒に「変なこと呟くな!」って叱る側であることが多いじゃないですか。距離感とか、難しくないですか?

松原 守先生

「自分で責任の取れる範囲のことを呟く」っていうルールは決めています。あとは、大学教員という立場から言うことも、そうではないことも、できるだけ他者に有益な情報を発信しようとは思っています。

カツセマサヒコ

SNSを使ううえで大事なこと、しっかり抑えられていてすごい……。松原先生は、いい意味であまり大学教員っぽくないですね。

松原 守先生

社会人歴が長いからかもしれません。僕、教育分野に入るまえはベンチャー企業を立ち上げていたこともあるので。

カツセマサヒコ

ベンチャー企業!?

松原 守先生

外資系の製薬会社にいたんですけど、研究所が閉鎖されてしまって。そのときのメンバーで一緒にベンチャー作ろうってなったんです。17名くらいで始めたんですけど、イチから始めたから本当に楽しかったですね。

カツセマサヒコ

超アグレッシブじゃないですか。

松原 守先生

研究だけじゃなく営業とかもしたし、製薬会社ぐるぐる回って。実験室の電気配線考えたりとか、あれは勉強になったなあ…。

カツセマサヒコ

すごい経験ですねそれ……。

当時をなつかしむように語る松原先生。

松原 守先生

立ち上げ期が一番おもしろくて、3~4年くらいしたらもう辞めてしまったんですけど、でもその会社はきちんと上場しましたし、いろいろいい経験になりました。

カツセマサヒコ

会社を辞められてからは、すぐに大学に?

松原 守先生

そうですね。

カツセマサヒコ

環境が真逆じゃないですか。スピード感とか全然違うし。

松原 守先生

言われてみると、そうですね(笑)。でもこうやって、学生たちを教育するっておもしろいですよね。今まで研究ばっかりだったから、「成果だしてナンボ」みたいな世界だったけど、こうして育っていく人を見ているのも楽しいんですよ。世の中で1のものを10にするのって難しいけど、本当に伸びる子って、それくらいすぐに伸びますからね。

ノーベル賞がきっかけで始まった「遺伝子」への興味

カツセマサヒコ

今日は実習の真っ只中にお邪魔していますが、どういう実験をされているんですか?

松原 守先生

「遺伝子組み換え」ってわかります? それの基本的な操作のひとつを、やっています。人類の大きな発明も、最終的には基礎の積み重ねで見つかっていますからね。

カツセマサヒコ

なるほどー。

松原 守先生

たとえば、「光るタンパク質」ってご存知ですか?

カツセマサヒコ

光るタンパク質? そんなのあるんですか?

松原 守先生

本来はオワンクラゲからしか取れないタンパク質だったんですけど、バイオテクノロジーが発達し、大腸菌から作れるようになったんです。本当に光るからビジュアル的にもわかりやすいし、そういうものを実験で試して、実際に見てもらう実習などをしています。

カツセマサヒコ

フレミングの法則が理科の全盛期だった僕でも楽しそうに思えました。

カツセマサヒコ

先生が薬学やバイオに興味を持ったタイミングは、いつだったんですか?

松原 守先生

昔から漠然と、医学というか、お医者さんには興味があったんだと思います。それと、大学時代に利根川進さんが「抗体」についてのノーベル生理学・医学賞を取ったニュースを見て、衝撃を受けたんですよ。

カツセマサヒコ

利根川さんのノーベル賞って、どんなものだったんでしたっけ……。

松原 守先生

病気から体を守ってくれる重要なタンパク質が「抗体」なんですけど、抗体がどのような仕組みで作られるか、遺伝子の研究から紐解いたんですよ。それを見て、医学は遺伝子組み換え技術でなんでもできるようになるんじゃないかって思えたんです。

カツセマサヒコ

そんなに画期的だったんですね!

松原 守先生

「もともと体の中にある分子で病気を治せる」って、普通に考えて可能性を感じるじゃないですか。

カツセマサヒコ

たしかに。無敵感ある。

松原 守先生

実際、いま売れている薬のトップ10のうちのほとんどは、遺伝子組み換え技術を利用したバイオ医薬品なんです。10~20年前とはぜんぜん違うラインナップになっているから、本当に今現在、伸びている分野なんですよ。

カツセマサヒコ

そこの渦中にいられるっていうのは、幸せなことなのかもしれませんね。

自然と共に育った、松原先生の幼少期

カツセマサヒコ

先生って、昔はどんな子どもだったんですか?

松原 守先生

もともと名古屋の田舎で育ったので、小さいころからザリガニやカエルを捕ったり、生き物にはたくさん触れていたんですよね。それが生物の命や人の健康を考えるきっかけになっていた気がします。

カツセマサヒコ

そこらへんの学生だったら、「日本人がノーベル賞取ったらしいよ!」「へえすごいね、ところで昼飯なに食う?」で終わるじゃないですか。先生がそこでピンと来たのは、何故だったんでしょう?

松原 守先生

僕も別に「ノーベル賞取りたい!」とは思わなかったですけどね。でも「すごい世界があるんだなあ」ってワクワクして、そのワクワク感だけでここまで来た気がします。

カツセマサヒコ

(少年みたいだなあ……)

松原 守先生

学生時代も、中学・高校はずっとソフトテニスをやってたから、ぜんぜん勉強していなかったんですよ。基本、体育会系で、気晴らしにクラシックギター弾くくらいの、普通の若者です。

カツセマサヒコ

意外! もっとバリバリ勉強していたのかと思いました。

松原 守先生

大学院に入ってからようやく「論文を書くために頑張るかあ」くらいのモチベーションで。いま、学生に「勉強しろ!」って言っていますけど、自分の過去を振り返ったら、とてもそんなこと言える立場じゃないんですよね(笑)。

カツセマサヒコ

それでもずっとひとつのことを続けられた理由は、なんだと思います?

松原 守先生

ひとつの薬が開発されるまでの過程って、パズルを解くようでおもしろかったんですよ。もともと未知なことから始まって、それが徐々に明らかになっていくのって、刺激的じゃないですか。

カツセマサヒコ

なるほどー!

松原 守先生

あと、実験が好きでした。それをやっている間は無心になれるし、夢中になれるから。実験とかにハマれる人は、この世界を目指してみてもいいんじゃないかと思います。

カツセマサヒコ

ひとつのことに夢中になれるって、ひとつの才能なんだろうなあ……。お話おもしろかったです! ありがとうございました!

おわりに

05

「いまは、研究もさることながら、学生に教えることを楽しんでいます。昔、家庭教師をやっていたこともあるんですけど、成績オール1の子がぐんぐん伸びていくところも見ちゃったんですよね。

たまたま歯車がうまく合わなくて結果が出ない子たちは、進め方を教えるだけでガラリと変わるんですよ。そういうのを見られるの、楽しくないですか? せっかく大学に来てくれているんだし、一緒に悩んだり、考えたりして、結果的に学生が育ってほしいなあって思っています。これ、いい職業だと思いません?」

と、うれしそうに語る松原先生は、バイオテクノロジーについての魅力もさることながら、教育現場という場所にやりがいを感じている人でした。

この分野に興味を持たれて30年。
ちょうど僕の年齢と同じくらいの時間を、研究や開発に充てられていたと考えると、それだけで途方にくれそうなものですが、松原先生はそんなことを微塵も感じさせず、今も若い感性で教育現場の最前線に立っていました。

今回お話を聞かせてもらった先生

松原 守先生

松原 守先生

京都学園大学バイオ環境学部バイオサイエンス学科分子生命科学コース分子生物学研究室教授。
1965年 名古屋市生まれ。博士(薬学) 名古屋市立大学大学院薬学研究科後期課程修了。薬剤師、上級健康食品管理士の資格を持つ。専門は「分子生物学」「細胞生物学」「構造生物学」「蛋白質科学」。
理化学研究所、外資系製薬企業、バイオベンチャー(上場企業)などでがんや神経変性疾患に関連する遺伝子、タンパク質の基礎研究ならびに創薬研究に従事する。現在は、様々な病気に関わるタンパク質の機能構造研究のほかに超高齢化社会で問題となる病気を予防するための機能性食品開発に携わっている。
趣味:クラシック音楽鑑賞、ギター演奏、読書、テニス、グルメ、お酒、サザンオールスターズファンクラブ,中島みゆきファンクラブ、娘(大学生)のよさこいチームのおっかけ。
Twitter:@matsubara_m

カツセマサヒコ
カツセマサヒコ

フリーライター。1986年東京生まれ。編集プロダクション・プレスラボでのライター経験を経て、2017年4月に独立。
広告記事、取材記事、エッセイ、物語等の企画・取材・執筆を行う。
Twitterでの恋愛・妄想ツイートが10~20代前半の女性の間で話題を呼び、フォロワーは現在9万人を超える。
趣味はTwitterとスマホの充電。

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