あの人がマニアックな研究に目覚めた理由Vol.5「機能性食品とサプリメントにハマる人たち」

あの人がマニアックな研究に目覚めた理由  Vol.5「機能性食品とサプリメントにハマる人たち」

「大学の先生って、『なんでそんなマニアックな道を極めちゃったの?』って感じの人、たまにいません? 僕、そういう人たちのことが気になるんですけど」。ふとした疑問を京都学園大学に投げかけたライターのカツセマサヒコさん。

「じゃあ、実際に聞いてみたら?」ということで、京都学園大学の先生に「どうしてその研究に目覚めたの?」と尋ねる企画を始めることになりました。 第五回は、機能性食品を研究されている、藤田裕之先生です!

健康食品やサプリメントにハマる人たち

カツセマサヒコ

先生は、どういったことを研究されているんですか?

藤田裕之先生

食品機能の研究・開発ですね。いわゆる「特定保健用食品=(トクホ)」の研究ってやつです。

カツセマサヒコ

出た、トクホ。簡単に言うと、「身体にいいぞー!」ってやつですよね?

藤田裕之先生

ざっくり言えば、そうなります。私は企業勤めが長かったのですが、会社員時代は「血糖値が気になり始めた方への食品」とか、そういうサプリメントを作っていました。

カツセマサヒコ

ああいうサプリって、売れるんですか? 僕、ほとんど買ったことがないんですけど。

藤田裕之先生

カツセさんは、健食(健康食品)フリークを御存知ないですか?

カツセマサヒコ

健食フリーク?

藤田裕之先生

サプリメントを大量に買ってしまう人たちのことですよ。年配の方に多いのですが、いろんな種類の錠剤やカプセルを手のひらいっぱいに飲む人もいるんです。

カツセマサヒコ

逆に体壊しそう。

藤田裕之先生

月に1~2万円払う人あたりまえにいますからね。年間100万円とか出す人もいますし。

カツセマサヒコ

100万円!? 金額がおかしい。なんでやめないんですか?

藤田裕之先生

やめられないんですよ。「やめたら体がおかしくなっちゃうんじゃないか!?」って不安になるんです。

カツセマサヒコ

自分の中で「コレを飲み始めたから健康なんだ!」って言い聞かせちゃうからだ!?

藤田裕之先生

そうそう。そういった心理的な働きがあるみたいで、健康食品の利益の半分はリピーターとも言われています。

カツセマサヒコ

ボロ儲けじゃないですか。

藤田裕之先生

実際にサプリメントを量産する際には、「ほかのサプリメントも飲まなきゃいけないから、とにかく一回あたりの錠剤の数を減らせ」って注文をよく受けました。

カツセマサヒコ

サプリメント、知らない世界すぎました。

大学教授の「会社員時代」

カツセマサヒコ

先ほど「企業勤めが長かった」と伺いましたが、大学院を出てからずっと一般企業にいらっしゃったんですか?

藤田裕之先生

いえ、院には行かず、学部を卒業してから一般企業に入って、2014年まで会社員でした。

カツセマサヒコ

じゃあ、まだ教員になられて2年目くらいなんですね!?

藤田裕之先生

そうです。大阪府立大学に2年間いて、2016年の4月から京都学園大学です。当たり前ですが、会社ではずっと研究開発をしていたので、学生に教えるようになったのはつい最近です。

カツセマサヒコ

教員になられる前は、どんな会社にいたんですか?

藤田裕之先生

新卒で入社したのは、食品の素材も扱っている繊維会社。そこから転職して、2社目に入ったのが、キユーピーマヨネーズのボトルなどを作っている化学系の会社でした。

カツセマサヒコ

現在の研究であるトクホとはちょっと遠いジャンルな気がするんですけど……。

藤田裕之先生

それが、当時はバブルの影響もあり、化学の会社なども「パッケージだけでなく中身も社内で作れ!」という方針に切り替わった時期だったんです。そこで私が呼ばれて、機能性食品を作り始めました。

カツセマサヒコ

改めて日本のバブルのエネルギーを感じますね。

藤田裕之先生

そこから20数年間、機能性食品を作る部署にいて、先ほど挙げたとおり「血圧が高めの方に対するペプチド」や、「血糖値が気になり始めた方への大豆加工品」を開発。トクホを取得したサプリメントをいくつか販売しました。

カツセマサヒコ

ボロ儲けしていた時期ですね!

藤田裕之先生

カツセさん、言い方に棘がありすぎです。

藤田裕之先生

ひとつのトクホ商品を作るには、15年くらいかかることもあるんですよ。その間の費用はものすごい金額になりますし、新たな食品機能を見つけられないまま終わる研究もたくさんあるんです。

カツセマサヒコ

ギャンブルみたいな世界だ……。

藤田裕之先生

そう。陽の目を見る可能性は決して高くない。国が許可しなければトクホ商品にはなり得ませんし、決してただ儲けるためではなく、食品の新機能を発見し、人の体にいいものを作ることに尽力していたと言わせてください。

カツセマサヒコ

失礼しました。

社会人をしながら博士号を取った理由

カツセマサヒコ

自分が作ったトクホ商品が市場に出回ったら、そりゃあうれしいと思うんですけど、なぜその研究をしようと思ったんですか?「ご飯が大好き!」とか、理由があったんでしょうか?

藤田裕之先生

私自身、幼少期は肥満児だったし、それと、鉄道模型とかも好きなのがあって、科学と「食」というテーマには早いうちから興味があったかもしれません。

カツセマサヒコ

なるほど。

藤田裕之先生

でも、当時はこんな職業に就いているとは想像もできなかったと思うんですよね。食品関係に興味を持ったのも、大学時代に景気があまり良くなくて、「景気に左右されないものって何だろう?」と考えた結果で選んだ道でしたから。

カツセマサヒコ

えらく現実的なスタートだったんですね。大学ではどんな勉強をされていたのでしょう?

藤田裕之先生

生物生産学部の食品分野で研究していました。当時の研究テーマは「油を分解する酵素」です。

カツセマサヒコ

また、難しそうなテーマですね……?

藤田裕之先生

洗剤って、泡立てるようにすると酵素の働きがなくなっちゃうんですよ。低温でも油を分解する酵素を見つけるために、いろんな土から微生物を取ってきて、200~300種類の微生物を観察・研究していました。

カツセマサヒコ

すごい地道な作業だ。

藤田裕之先生

ちなみに、博士号の学位をいただいたのは、社会人になって10年経ってからでした。

カツセマサヒコ

え!社会人をやりながら博士号を取ったんですか!?

藤田裕之先生

そうです。一般的には「コースドクター」といって、学部を卒業し、学士を取り、博士号を取得するコースが王道。でも、社会人をやりながら博士号を取る場合は、論文を何個か出して、大学に「彼はコースドクターと同じくらいの能力ですよ」って認めてもらってから、博士号を取る必要があります。普通にいくと5年間なんですけど、僕が博士号を取得した京都大学は厳しくて、学部を出てから10年経っていることが条件だったんです。

カツセマサヒコ

長丁場もいいとこじゃないですか……。そこまでして、博士号が欲しかったんですか?

藤田裕之先生

仕事していてわかったんですが、「博士号の有無」で、仕事の信頼度がまるっきり違うんですよ。

カツセマサヒコ

え、そうなんですか!

藤田裕之先生

特に海外に販売する時には、博士号の有無で扱いがまったく異なりました。「ドクターが言っていることなら、ある程度信頼しよう」といった空気があるんです。

カツセマサヒコ

肩書きって、そういうときには大切なんですねえ。

藤田裕之先生

そうですね。そのおかげで血圧を抑えるペプチドを輸出したり、トクホがとれて、市場に出せていますから。なんやかや言って、15年くらいかかりましたけど。

カツセマサヒコ

気が遠くなるような話だなあ……。

先生が学生に教えていること

カツセマサヒコ

先生が教えてる授業はどういったものがあるんですか?

藤田裕之先生

実は、英語ばっかり教えていますね。

カツセマサヒコ

何やってるんですか、先生。

藤田裕之先生

高校まではスピーキングとライティング、グラマーがあるでしょう? でも、僕らが使う英語は「技術英語」なので、ひとつの単語を取っても意味が一般的な使い方ではなかったり、文法も違ったりするんです。だから、科学英語を教えることをメインとしています。

カツセマサヒコ

なるほど! 食品の勉強するかと思ったら英語だったって、かなりびっくりしますね。

藤田裕之先生

あとは、モノを客観的に見る習慣を教えていますね。

カツセマサヒコ

客観的に見る?

藤田裕之先生

たとえば、ここに「木に鳥がとまっている写真」があったとします。一般的な視点だと「木に綺麗な鳥がとまっているね」で終わってしまう。でも、それを客観的に言うと、「杉の木が1本あって、上の方にキツツキが3羽、ツバメが2羽とまっている」といったかたちになります。木の大きさも、「大きな木」なら「5メートルくらいの木」になる。

カツセマサヒコ

なるほど! 思考法を学ぶんですね。

藤田裕之先生

そうですね。機能性食品まで随分距離がある話に聞こえるかもしれませんが、ある意味、これが核心ですよ。いろんな情報がありますが、モノの本質を見る。根幹が何なのか、そぎ落としていったときに何が残るのか。そうした目を持つ人間を育てたいんですよね。

カツセマサヒコ

いい話だ。

藤田裕之先生

あと、京都学園大学では2年生では「実践プロジェクト」っていうプログラムがあって、私はそれも担当しています。

カツセマサヒコ

どういったプログラムなんですか?

藤田裕之先生

実際に機能性食品を開発するために、産学共同に近いかたちで実験などを行っているんです。たとえば蒟蒻屋と組んで、蒟蒻を乾麺にする研究とかもやっています。

カツセマサヒコ

蒟蒻を乾麺に……? 意外とイメージは沸きそうですけど、難しいんですか?

藤田裕之先生

糸蒟蒻って、一度凍らせると元に戻らないんですよ。それで、元に戻らせようとすると、蒟蒻以外の成分を半分以上入れなきゃいけなくなっちゃうんです。

カツセマサヒコ

え! 知らなかったです。

藤田裕之先生

そうそう。だから蒟蒻屋の社長と話をして進めているところで、今度そのプロジェクトの学生を連れて工場見学に行きます。

カツセマサヒコ

今ドラマでやっている『陸王』みたいですね。新商品開発とか、本当に面白そうです。

藤田裕之先生

まだ、2年生なので基礎的な実験などをあまりしていないのですが、これを続けて卒論もこういうテーマでやってくれたら楽しいですよね。「できないのが当たり前」だからこそ、失敗してもいいし。

カツセマサヒコ

「予算はしっかりあるのに、責任は取らなくていい仕事」みたいなもんじゃないですか。

藤田裕之先生

そうそうそう(笑)。そういう経験を学生時代だからできるっていいなあと思っています。

おわりに

「将来はどうなっていたいですか?」と尋ねたところ、「おもしろい食品を見つけて、もう一回くらいトクホ商品を開発したいですね!」と意気揚々と語った藤田先生。

人に教える立場に立っても現役を続行する理由には、「ひとつの場所にずっといると井の中の蛙になる。食品の機能にはまだまだ可能性が隠されているし、それを見つけていくことを人生のモチベーションにしたいんです」と、探究者としての熱い意思がありました。

「学生によく言っているのは、『苦労は買ってでもしろ』ということ。みんな賢くなったぶん、失敗を恐れて尻込みすることも多いのだと思います。だからこそ学生には、一度バカになって、手を動かしてみろと言っています。失敗してもいい機会なんて、なかなかないんですから」

企業勤めを20年以上していた藤田先生だからこそ響く台詞。「競争率が高いから」とか「たぶん続けられないから」と、つい言い訳を並べがちですが、ときには大胆に飛び込んでみることも大切なのかもしれません。

学生の皆さん、やる前から諦めないで、頑張ってっ!!

今回お話を聞かせてもらった先生

藤田裕之先生

藤田裕之先生

静岡県浜松市出身。広島大学生物生産学部生物生産学科卒業後、富士紡績(株)に入社。その後、日本合成化学工業(株)、後に日本サプリメント(株)に出向。その間、京都大学農学部に派遣研究をし、その後学位取得。大阪府立大学URAセンターを経て、現職。専門は生化学、食品化学。

カツセマサヒコ
カツセマサヒコ

フリーライター。1986年東京生まれ。編集プロダクション・プレスラボでのライター経験を経て、2017年4月に独立。
広告記事、取材記事、エッセイ、物語等の企画・取材・執筆を行う。
Twitterでの恋愛・妄想ツイートが10~20代前半の女性の間で話題を呼び、フォロワーは現在9万人を超える。
趣味はTwitterとスマホの充電。

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