あの人がマニアックな研究に目覚めた理由Vol.6「ドローンと景観生態学」

あの人がマニアックな研究に目覚めた理由 
Vol.6「ドローンと景観生態学」

「大学の先生って、『なんでそんなマニアックな道を極めちゃったの?』って感じの人、たまにいません? 僕、そういう人たちのことが気になるんですけど」。ふとした疑問を京都学園大学に投げかけたライターのカツセマサヒコさん。

「じゃあ、実際に聞いてみたら?」ということで、京都学園大学の先生に「どうしてその研究に目覚めたの?」と尋ねる企画を始めることになりました。 第6回は、景観生態学を研究されている、丹羽英之先生です!

ドローン使いのケイカンセイタイガク研究者、登場

ヴィイイイイイイイイイイイイイイイーーー!!!!!!!!

カツセマサヒコ

あれ、学内でドローン飛んでる。

京都学園大スタッフ

おお。あれを操縦しているのが、今日取材いただく丹羽先生です。

カツセマサヒコ

え、京都学園大学って、ドローン学部もあるんでしたっけ?

京都学園大スタッフ

残念、違います。詳しくは先生に聞いてみてください。

ヴィイイイイイイイイイイイイイイイーーー!!!!!!!!

カツセマサヒコ

先生! 先生!!

ヴィーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

カツセマサヒコ

うっさ! ドローンうっさ!!!!!!

ヴィイイイイイイーーーーー…

イイイイイイィィィィィ……。

丹羽英之先生

ああ、どうも。

カツセマサヒコ

先生、ドローンを使って何をしていたんですか?

丹羽英之先生

地形や植生を見ていました。

カツセマサヒコ

地形や植生?

丹羽英之先生

私は「景観生態学」という学問を教えているんです。

カツセマサヒコ

ケイカン……セイタイガク……。

丹羽英之先生

かんたんに言うと、自然環境を上から見て評価したような地図を作る、みたいなものですかね。

カツセマサヒコ

うん? かんたんになっていない気がするのは、僕の偏差値のせいですか?

丹羽英之先生

いやいや(笑)。口頭で説明するのが難しいので、一度研究室に行きましょうか。

丹羽英之先生

これは今年の6月ごろに学生がやった研究なのですが、「川沿いを100m間隔に区切った地図」を持って現地を歩き、各区間ごとにホタルが何匹飛んでいるかをカウントした図なんです。

カツセマサヒコ

100mごとに、ですか。

丹羽英之先生

そうです。その結果を地図上でまとめると、どの区間にホタルがたくさんいるかがよくわかるようになるんですよ。

カツセマサヒコ

なるほど! そこを観光スポットとか保護区にするんですね!?

丹羽英之先生

そんな使い方もできますね。何に使うかまでは決定できないですが、選択肢を絞るために科学的根拠を出しているんです。おもしろいでしょう?

カツセマサヒコ

おもしろいです! ポケモンの出現マップを見ている気分になりました。

丹羽英之先生

こういった研究をするのが、私の担当している分野です。
たとえばホタルなら、どこに多いのか、そのエリアに多いのはなぜなのか、逆に別のエリアで減っているのはなぜか、ホタルをもっと増やすためにはどうしたらいいか、そういうことを研究し、研究結果を発表していきます。

カツセマサヒコ

超絶わかりました、ナルホドすぎます。

ドローンによる業界革命

カツセマサヒコ

先生の研究していることって、俯瞰した地図から生態学を調べる、ということだと思うんですけど、ドローンはまさにうってつけだったんじゃないですか?

丹羽英之先生

そうなんです。昔からこの分野は衛星画像や有人の飛行機から撮った航空写真を研究材料として使うことが多いんですね。でも、飛行機で撮るとあまり細かなところまでは見えないし、1回撮るだけで何十万の費用が発生するんですよ。そんな頻繁に「今撮ってよ」とか「何回も撮ってよ」とか言うことはできなかった。

丹羽英之先生

そこにドローンが出てきたんです。私だけじゃなく、こういった研究をしている人は皆さん衝動買いしていました。

カツセマサヒコ

「ドローンの爆買い」、余裕でイメージできます。

丹羽英之先生

たとえば、この写真、台風が来て、桂川が増水した直後のものなんですけど、「台風直後の写真」なんて、昔じゃ考えられなかったわけですよ……すごい…この写真は、すごいんです……。

台風直後の写真
カツセマサヒコ

先生? 泣かないでください先生……?

丹羽英之先生

カツセさん、川の調査っていうのは、増水したときに河原の植物に水がどのくらい被るかを観るのがすごく大事なんですね。

カツセマサヒコ

はい。

丹羽英之先生

でも、雨や川の水量が多いと現場は危険だし、我々研究者はいつも台風が過ぎ去ってから、水の付いた痕跡を見て類推していたんですよ。

カツセマサヒコ

なるほど、地道な努力を……。

丹羽英之先生

そうです。そこにドローンがきて、雨が止んだ直後に撮影に出られて、現場に行かずとも正確な情報が手に入るようになった。これは革命でしょう? 

カツセマサヒコ

印刷技術で言うところのDTPが登場したようなものなんですかね。長年研究を続けていた方からしたら衝撃的な出来事だったことは、想像つきます。

丹羽英之先生

昔なんて、川の植生を調べるために川沿いを原付バイクで何百kmと走ったんですよ。

カツセマサヒコ

半端ない努力をしているじゃないですか。

丹羽英之先生

場所によっては、草が生い茂っていて川が見えないんです。そんなとき冗談で「タケコプターがあったら調査はめちゃくちゃはかどるよね」とよく言っていた。それが、現実になったんですから、すごいです。

カツセマサヒコ

本当に未来が来た感覚だったんですね。喜びが伝わってきます。

先生が景観生態学に目覚めた理由

カツセマサヒコ

先生が景観生態学を始められたのって、いつ頃なんですか?

丹羽英之先生

子どものころは毎日川や山で遊んでいて、生き物は好きでしたね。大学は農学部に入って細胞の勉強をしていたんですけど、試験管をずっと見ているのもなんだかつまらなく感じてしまって。そのときに、今お話ししたようなランドスケープ・エコロジーとか、ランドスケープ・デザインという分野と出会いました。

カツセマサヒコ

ランドスケープ・デザイン……?

丹羽英之先生

町の公園の設計であるとか、緑地の計画であるとか、そういうことをやる分野なんです。公園の設計と川の生物の研究、まったく違うようでいて、似た分野なんですよ。

カツセマサヒコ

へぇー! 幅広い!

丹羽英之先生

町に公園ができたり、「ここは蛍を守るエリアにしよう」と決めたりするとき、大体この分野が絡んでいるんです。楽しそうでしょう?

カツセマサヒコ

メチャクチャわくわくします。

丹羽英之先生

でも、ランドスケープ・エコロジーを教えている大学って、少ないんですよ。私も直接習っていたのは、学外の博物館の先生でした。

カツセマサヒコ

え、自分から学外に学びにいったんですか?

丹羽英之先生

それしか方法がないから。そこで勉強させてもらって、就職した先は「環境コンサルタント」でした。公園の設計や町の計画に関わっていくうちに、現在のような環境調査にも携わることになりました。

カツセマサヒコ

なるほど、徐々に今のお仕事につながっていくんですね。

丹羽英之先生

やりたいことを仕事にしてやっぱり楽しかったし、この分野が本当に好きだったんだと気づきました。でも、学部卒で就職したので、特に「研究をした」という実績はなかった。こういう分野は決まって最新の知見や専門の研究がある人が強いんですよね……。

カツセマサヒコ

たしかに、博士号とか持っているほうが強そうですよね……。

丹羽英之先生

常に悔しい思いをするし、ちゃんと勉強しておけばよかったなという思いがどんどん溜まってきて、結果、働きながら大学院に通うようになりました。

カツセマサヒコ

熱量がすごい。

丹羽英之先生

しかもそのときの指導教官が、今同じ研究室にいる森本先生だったんですよ(笑)

カツセマサヒコ

ご縁――――!!!!!!(笑)

講義ではどんなことを学べるの?

カツセマサヒコ

先生の担当されている研究分野が世の中に存在すること自体、知らない学生は多そうですよね。

丹羽英之先生

多いと思いますよ、私も最初は知らなかったですし。

カツセマサヒコ

でもおもしろいですよね。授業でも町づくりや町おこしに関わるかもしれないってことですし。

丹羽英之先生

そうですね。たとえば、亀岡の駅前に大きなスタジアムができる予定があったんですが、場所を移すことになったんです。なぜ変更になったかというと、その周辺には「アユモドキ」っていう希少な魚がいて、建設に反対する声がずっとあったからなんですよ。

カツセマサヒコ

そうなんですね。

丹羽英之先生

で、今問題となっているのが、建設予定地だったこの場所をどうするか。

カツセマサヒコ

スタジアム建設をキャンセルした後ってことですよね?

丹羽英之先生

そうそう。ここはまさに、ここにしかいない生き物との共生を考えながらどんなデザインをするか、ランドスケープ・デザインの腕の見せどころなんです。

カツセマサヒコ

絶対おもしろいやつじゃないですか!

丹羽英之先生

そう。私の研究室からももちろん提案をしています。実際に動くには色々なしがらみがあるから難しいですが、研究であったり、学生が提案したりするのは勝手ですからね。自由なことを言えばそれが結果につながるかもしれない、くらいのスタンスでいます。

カツセマサヒコ

もしかしたら研究結果は、町に反映されるってことですよね?

丹羽英之先生

反映されてほしいですね。研究者として、卒業後も論文を書いたり研究成果を提出したりすると思うので、こうした経験をうまく活かしてほしいと思います。

丹羽英之先生

でも、論文を書けば町が変わるかといえば、そうではない。私たちは科学的根拠を論文として示すだけなんです。それを市や地元の人たちに提示して、あとは社会全体が決めることですから。

自由研究をずっとやっている感覚

カツセマサヒコ

言い方が稚拙で、語弊があるかもしれないですが、先生のされている研究は“何年もかけた夏休みの自由研究”みたいな感覚があるなあと思いました。小学生の自由研究でひとつの動植物のことを調べたことがあると思うんですけど、それが大人になって、「川の中の生態系を全部研究する!」みたいなイメージです。

丹羽英之先生

ああ、感覚的には近いかもしれないです(笑)。やっぱりおもしろいですからね、研究。

カツセマサヒコ

絶対おもしろいですよね!?

丹羽英之先生

そう。おもしろいから、そのまま研究者になったんだと思います。“おもしろい”って、大事ですよ。自分がおもしろいと思えることは、何事においても非常に大事だと思います。

カツセマサヒコ

実感されているだけあって、説得力が違います。良い意味で、公私混同もいいところなのだろうなあと。

丹羽英之先生

そうですね、環境コンサルの民間企業で働いていたときもそうですけど、今思えば昔から地図も好きというのがあって。だからあまり“仕事をしている”という感覚は、いいのか悪いのか分からないですけど、ないんです。未だに家に帰っても時間があればやっていますし。

カツセマサヒコ

幼少期から一本の軸で生きられるって、才能ですし、努力があったからこそ続けられたんだと思います……。楽しいお話、ありがとうございました!

おわりに

こうして取材は終わりました!

僕らは大学に入学するときも、社会に出るときも、なんとなく目の前にあった学部や企業の選択肢からキャリアを選びがちですが、先生の話を聞いていると「自分から選択肢を増やして、本当に興味があることに飛び込む。それも、道を外さない程度の範囲で」という、現実と理想を同時に叶えるような選択肢が存在することを教えられます。

「聞いたこともない学問って、世の中にまだまだたくさんある」。
進路に悩んでいる人は、そう考えてイチから勉強したいことを探してみると、先生みたく天職を見つけられるのかもしれないと思いました。

それでは、素敵な学生生活をお過ごしくださいっ!

バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科の学びに興味を持った方はこちら
バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科
ランドスケープデザイン研究室

今回お話を聞かせてもらった先生

丹羽英之先生

丹羽英之先生

京都大学大学院地球環境学舎博士課程修了。専門は景観生態学、植物生態学、保全生態学。大学卒業後、環境コンサルタントとして民間企業に勤務し、社会人学生として博士号を取得。生態系の分析や評価に関する研究のほか、特定非営利活動法人「食と農の研究所」理事長も務める。

カツセマサヒコ
カツセマサヒコ

フリーライター。1986年東京生まれ。編集プロダクション・プレスラボでのライター経験を経て、2017年4月に独立。
広告記事、取材記事、エッセイ、物語等の企画・取材・執筆を行う。
Twitterでの恋愛・妄想ツイートが10~20代前半の女性の間で話題を呼び、フォロワーは現在9万人を超える。
趣味はTwitterとスマホの充電。

あわせて読みたい カツセマサヒコさんの記事

トップページ > あの人がマニアックな研究に目覚めた理由Vol.6「ドローンと景観生態学」

入試に関するお問い合わせ

入学センター

Mail nyushi@kyotogakuen.ac.jp

Tel (0771)29-2222

Instagramで、ハッシュタグ
#京都学園大学
をつけて投稿してみよう!

Instagramの詳しい利用方法はこちら

Load More
Something is wrong. Response takes too long or there is JS error. Press Ctrl+Shift+J or Cmd+Shift+J on a Mac.

ページトップへ

  • YouTube
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE