「飛行機はなぜ飛ぶのか?」経済の根本を京都学園大学・中条潮先生に聞いてみた

「飛行機はなぜ飛ぶのか?」経済の根本を京都学園大学・中条潮先生に聞いてみた

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こんにちは、さえりです。

今回は京都学園大学の「京都太秦キャンパス」にきています。

さて、京都学園大学の先生に聞いてみたシリーズ、今回は「経済経営学部 経済学科」の、中条潮(ちゅうじょう・うしお)教授にお話をお伺いしました。

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中条潮先生

京都市出身。慶應義塾大学大学院博士課程修了。公共政策・社会問題の経済学の中でも、とりわけ交通政策のエキスパートとして、行政改革、規制改革に関する政府のさまざまな審議会等の委員を歴任。ウインドサーファーでもある。ウインドサーフィンから学んだことは数知れず。

経済学は難しいものではない?

さえり

今日はよろしくお願いします!

さえり

先生は航空業界と提携してインターンシップが体験できる授業「航空観光プログラム」を今年、京都学園大学で立ち上げられたとか……。

中条先生

そうです。就活セミナーや見学会にも参加できるもので、経済経営学部だけでなく、ほかの学部の学生さんも対象としたプログラムですね。

さえり

そこで学べる「経済の基本的メカニズム」って、「経済」のことをあまり知らない学生でもわかる授業なんでしょうか?

さえり

わたしは「経済」と聞いただけで難しそう! と思ってしまうのですが……。

中条先生

「経済」といっても難しいことじゃないんですよ。

中条先生

わたしは、大学では難しいことよりも経済の根本的な考え方を教えていけたら理想的だなと思っていて、こんな風に授業を始めています。

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中条先生

飛行機はなぜ、飛ぶのだと思いますか?

さえり

? えーと……。

中条先生

なぜだと思いますか?

さえり

うーん。「どう飛ぶか」なら機体の翼や風などが関係していそうですが……。

中条先生

そうですね。翼の上を流れる風と下を流れる風の速さがちがうから、飛行機は飛ぶんですね。でも、それは航空力学という工学系の先生がしている研究で、わたしが言っているのは「なぜ飛ぶか」です。

中条先生

飛行機がなぜ飛ぶか。

中条先生

それは、お客さんがいるから、なんですね。

さえり

あ、そうか……そうですよね。たしかに。

中条先生

ニーズがあるから、飛ぶんです。ニーズがあるから、お金が動くんです。

中条先生

パイロットも管制官も自分が飛行機を飛ばしていると思うかもしれませんが、本当のところはお客さんがいるから飛ぶんです。マクドナルドでも、お客さんがいるからハンバーガーが売れるし、他のサービスだってそうですよね。

さえり

たしかに。すごく普通のことですけど「なぜ飛ぶか」と聞かれてスッと思い浮かばなかったです。

中条先生

そうですよね。では、なぜこんな至極当たり前のことを言うか、なんですが、

中条先生

じつは「お客さんがいるから飛行機が飛ぶ」ってことを忘れてきた時代があったんです。

中条先生

今日はちょっと、経済の初歩に触れてみましょう。

さえり

よろしくお願いします!

「競争」のない商売は誰のためにもならない

中条先生

先ほど話した「お客さんがいるから飛ぶ」というのは当たり前だと思われたかもしれませんが、じつは政治力によって時に商売には「規制」がかかるんですね。

中条先生

たとえば航空業界というのは、長い間厳しい規制がかけられていました。価格も路線も政治力によって決められていたんです。

中条先生

規制によって、新しい会社も出てこない……。つまり「競争」がない業界だったんです。

中条先生

するとお客さんはたとえ事故が起きてもその会社を利用するしかないんですね。

さえり

そうですよね。他に選べる選択肢がないですもんね……。

中条先生

そう。すると「お客さんがいるから飛んでいるんだ」という意識がなくなっていって。極端に言えば、別にお客さんのために頑張らなくてもいいや、というふうになってしまうんですね。

さえり

たしかに馬鹿高い運賃でも、ひどいサービスでも、その会社を利用するしかないんですもんね……。

中条先生

でも、そういうのって消費者のためになってないよね、とわたしはずっと思っていて。ハンバーガー屋さんと同じように、お客さんがいなかったら飛行機は飛ばないという原点に戻したいなと思ってこの本を書いたんです。

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中条先生

そして航空業界に切り込んで行って、規制を緩和して、LCCなどが出てくるようになったんですね。

さえり

ふーむ。それはお客さんにとってはすごく嬉しいことですが、守られている会社たちからすると怒られそうな……。

中条先生

そうなんですよ。余計な奴だと怒られて、規制をしているお役所からも睨まれて、出入り禁止になったこともありましたね。

さえり

えぇっ! 出入り禁止に!?

さえり

そ、それって記事に書けるんでしょうか?

中条先生

全然オッケーです。むしろ出入り禁止になったことはわたしのキャラだと思っているので(笑)。

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中条先生

わたしはちゃんと競争がある、健全な社会になってほしいんです。そうして消費者のためになる「良いサービス」が残るような当然の仕組みを作りたいと。それが経済の根本だとも思っています。

さえり

なるほど……。競争を強いられる会社側としては努力が必要になるかと思いますが……。

中条先生

そうですね。会社は「いいサービス」のためには当然努力しなければいけません。努力しなくてもよかった、という時代や仕組みのほうがおかしいんです。

さえり

お客さんが満足してくれるように試行錯誤するのが当然、ということですね。

さえり

もちろんその「どう満足させるか」は会社が必死に考えているところだと思うんですが、どんな風にして満足させていけばいいのか例のようなものを教えてもらうことはできますか?

中条先生

そうですね……。サービス業の場合は、顧客満足度をあげるには従業員満足度を上げていく必要があるんですが……。ちょっと経営面にもなってしまいますが、その辺も少しお話ししましょう。

顧客満足度をあげるには従業員満足度をあげよ

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中条先生

サービス業の場合は、お客さんの満足度をあげるためにどんなサービスをしたら喜んでくれるか? を考えるのはもちろんなんですが、従業員の満足度をどうあげるか? が一番の鍵になるんです。

さえり

お客さんについて考えるよりも従業員について考えるのが先……。

中条先生

そうです。なぜなら、従業員とお客さんの距離が近いので、従業員が楽しんで働いているかどうか? がダイレクトに影響するんですよね。

さえり

なるほど。たしかに楽しそうに働いている人を見るとこっちも嬉しくなりますもんね。逆に、すごくつまらなさそうに働かれると「嫌な感じだな」と思って会社への印象も悪くなるし。

さえり

従業員満足度をあげたほうがいいとわかっていても、上げる方法は難しそうですね。きっと給料の高さではないんでしょうし……。

中条先生

そうですね。人はお金だけでは動かないんですね。

中条先生

一番は、「働きたい」と思わせる魅力的な企業になることですね。

中条先生

いまどうしてLCCがうまく行っているかなんですが……、1980年代に出てきた格安航空会社は、人件費の削減をすることでサービスの料金を安くしようとしたんですね。

中条先生

もちろん“他より安く働かされる”のでは、従業員は不満ばかりもちますよね。でもむやみに人件費をあげるわけにもいかない。

中条先生

そうしてやりはじめたのが、同じ給料でもより働いてくれる人を集めること、だったんですね。

さえり

同じ給料でより働いてくれる人を集める?

中条先生

そうです。同じ時給1000円でもこの会社だったら1200円分働いてもいいと思われるような魅力を作っていったんです。

中条先生

社会の役に立ってる仕事をやってるよねって自負心を得られたり、やってる仕事が面白いと感じられたり……。そう思わせられたら、同じ1000円でも他の会社よりも従業員は多く働いてくれるんです。

さえり

なるほど……。それは会社にとっても従業員にとってもハッピーな循環ですね。

中条先生

そうなんです。たとえば、アメリカのLCCでサウスウエスト航空っていう会社があるんですが、ホームページの採用欄の「どんな人たちを求めているか」って書いてあるところに「FUN」、つまり「面白さを人に与えられる人を求めている」って書いてあるんですね。

中条先生

たとえばサウスウエストの客室乗務員は飛行機が離陸する前に、頭の上に収納棚を逆立ちして足でボンと閉めてもOKなんです。

中条先生

それをみんなが面白いといって喜んでくれる。そうすると従業員はいろいろ工夫しようとおもいますよね。

中条先生

働く人は自分の面白さを表現しようと思って頑張ってくれて、お客さんもそれで喜んで、また従業員がやる気になるというループが作れている成功例ですね。

さえり

たしかに、わたしもディズニーランドでバイトをしていたことがあるんですが、給料は普通の居酒屋くらいだけれど居酒屋で働いていた時よりも頑張っていましたね。楽しくて楽しくてゲストを喜ばせようと一生懸命に工夫をしましたし、結果としてゲストに良いサービスを提供できていたのは会社にとっても良いことだったような気がします。

中条先生

サービス業において従業員満足の話をするときに、定番で話すのが、サウスウエストとディズニーランドとリッツカールトンなんですよ。

さえり

よく聞く3社ですね。共通していることってなんでしょうか?

中条先生

若干の「無駄」を用意していること、でしょうか。

中条先生

たとえばサウスウエスト航空で働く人が逆立ちで扉をしめる。ディズニーランドの掃除の人がおもしろいことをする。こういうのは全部本来の業務からすると「無駄」なことですよね。その無駄を認めてあげるっていうのが大事だと思うんです。

さえり

でも、ディズニーランドのような場所じゃなく、普通の職場でそういった環境をどう作り出すかは難しそうですね。

中条先生

そうですね。人に見てもらえる仕事じゃない場合はやっぱり難しいですね。

中条先生

でも、「無駄」を用意する以外にも「誰と一緒に働きたいか」で魅了していくことはできます。

さえり

「誰と」! これ、めちゃくちゃ重要ですよね。わたしもIT企業にいたときは、仕事も大変だったけれど誰と働くかが一番モチベーションになっていました。

中条先生

そうなんですよ。学生には意外と盲点になっていて、会社を選ぶとき「どこで働きたいの?」「どういう業界で働きたいの?」ということばかりが先立つんですが、それよりも大事なのは「誰と、どのように働きたいのか」だと思うんです。

中条先生

小さい会社だったら、トップを見てこの人の経営哲学に従っていると自分が生き生きするとか、働くことに意味があると思わせるというか。あとは、同僚だったり先輩だったり、この人と一緒に働いてきたいとおもうかどうかですよね。

さえり

会社を作る経営者は従業員の満足度を考えて様々な工夫をする必要があるし、働く人は自分が「誰と」「どんな風に」働きたいかを軸にして考えると楽しく働けるかもしれないってことですね。

さえり

しかも、それがひいては社会のためになるんですもんね。

中条先生

その通りです。従業員が満足度高く働ければ、会社も儲かり、消費者にとって良いサービスも作られる。経済がそんなふうに健全な心で回っていると、社会も消費者も嬉しい社会になるんですね。

中条先生

経済学というのは、そういう健全な社会をつくるための枠組み=健全な競争社会が成立するための枠組みを考える学問なんです。

さえり

そっか。難しい「お金」の話だけじゃないんですね。

競争のある社会でどのように生きるか

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さえり

なんとなくですが「競争のある社会」は、消費者にとっても、働く人たちにとっても、そしてなにより経済にとっても「良い循環」を作っていってくれるんだなというのがわかってきました。

さえり

まだまだ変えなくちゃいけない業界ってあるんでしょうか?

中条先生

無駄な規制がかかっている業界はまだまだありますね。航空業界はこの10年で大きく変わりました。しかし、タクシーなんか元の規制体制に戻っちゃったんです。自由に競争ができるようになったらいいなとわたしは思っているので……。これからも規制緩和に向けてできることをしていきたいなと思っています。

さえり

会社が競争をしあう世界になれば、どういう世界が待っていると思いますか?

中条先生

消費者の選択肢が広い世界ですよね。自分で選びとれる、納得感のある世界というか。

さえり

なんでも自分できちんと選びとれるようになれば、それは幸せな気がしますね。でもやっぱり「そんなことをしてくれるな」と怒り出す人もいそうですけど……。

中条先生

そうなんです。アメリカはトランプ大統領になってから今更閉鎖的な経済を主張していますが、これは選択肢が増えたことに満足せずに不満を持つ人がいたからなんですね。

中条先生

選択肢だけが広くなって自己責任が確立できないと、不満をもってしまうので、消費者が自己責任をきちんと貫徹させるようにできれば、これ以上の理想はないなと思っていますね。

さえり

なるほど……。今日のお話は私たちのすごく身近なものだったんですがこれが経済の根本なんでしょうか?

中条先生

はい。お客様がいるから成り立つ。あたりまえだけど、それがなによりも大事な考え方です。航空観光プログラムでも、航空業界の特殊な話ではなく、お金が回る根本、経済の根本を知ってもらおうと考えています。

さえり

今日はありがとうございました!

さいごに

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終始和やかに、わかりやすい言葉でお話ししてくれた中条先生。
先生はこんなお話もしてくれました。

中条先生

わたしは、冒頭でも言ったように役所から出入り禁止を食らったり、経営したバーをつぶしてしまったり、いろんな失敗があったんですが全て「やってみてよかったなぁ」と思っているんです。

どんどん失敗して、いいと思うんです。

だから若い人たちも転職とかはどんどんやったほうがいいとおもうし、彼氏彼女も多様に選んだほうがいいと思うし、結婚だって何度だってしてもいいと思います。

違うことをやったらこんなところに自分の能力があったんだって思うこともあるし、とにかくやってみないとわからないですよね。

学生さんたちを見ているとどうしても消極的な人が多いように感じるのですが、「二兎追う者だけが二兎を得られる」というのはわたしが常日頃から思っていることで。典型的な例としては女性が仕事を続けていくのと子供を育てるというのと。わたしは二兎を追いかけてほしいとおもってるんです。

自分の世界を最初から狭くしないで、少し欲張りになってほしいなと思いますね。

ウィンドサーフィンが趣味だという先生はとにかくアグレッシブ。こんな先生のもとで勉強することができたら、考え方も多少積極的になるのかなぁ。

経済・経営系の学部を目指しているみなさんが、、すこしでも「経済って難しいものじゃなくて身近なものなんだな」と思って「自分が社会を変えるぞ!」くらいの気合をもってもらえますように。

それにしても京都学園大学には魅力的な先生がたくさん。まだまだ続くこのシリーズをよろしくお願いいたします!

それでは、またね〜!

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さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

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