失恋から立ち直るには辛いことを考えるのが一番? 人文学部心理学科・服部先生に聞いてみた

失恋から立ち直るには辛いことを考えるのが一番?
人文学部心理学科・服部先生に聞いてみた

こんにちは! ライターのさえりです。今回も京都学園大学亀岡キャンパスに来ています。今回は人文学部心理学科の服部先生にお話しを伺えるとのこと。

服部先生は、「なぜやらなければならないことを先延ばしにしてしまうのか」や「なぜ考えたくないことを考えてしまうのか」、「なぜ人は恋に落ちるのか」といったことを研究しているとのこと。

……面白そうすぎる。

ということで、今回も色々とお伺いしてきました。

今回お話しを伺ったのはこちらの先生。

服部陽介先生

1985年名古屋市生まれ。神戸大学文学部を卒業後、2012年、名古屋大学大学院環境学研究科を修了。博士 (心理学)。12年より、東京大学大学院総合文化研究科にて、日本学術振興会特別研究員 (PD) として、抑うつと思考の意図的制御の関係についての研究に従事したのち、14年より現職。

さえり

「なぜやらなければならないことを先延ばしにしてしまうのか」や「なぜ考えたくないことを考えてしまうのか」、「なぜ人は恋に落ちるのか」……、どれも興味があります!

服部先生

ありがとうございます。今挙げていただいたのはどれも応用で、基本的には人間が自分自身の思考や行動をいかに制御するかという点に興味を持って研究を行っています。

服部先生

“しろくま実験”と呼ばれる実験があるんですが、何もない場所で“今からしろくまについて考えないでください”という課題を与えてみると、だいたい3分以内にしろくまのことを考えてしまう、という実験があるんです。

さえり

ふむ……?

服部先生

この実験ではいかに思考や感情を制御できないか、がわかるのですが、僕はそこから派生させて「なぜ制御できないのか」といった身近な出来事を研究していますね。

さえり

なるほど、面白そう。「なぜ先延ばしにしてしまうのか」は今最もわたしの課題ですね。原稿しなきゃなのに寝ちゃう、とか。

服部先生

(笑)。でも人間って、どうしても目の前にある欲望に忠実で、欲に引っ張られやすいんですよね。やらなくてはいけないことも、先でいいや先でいいやとなってしまったり。すぐに取り組める人とそうでない人がいるんですよね。

服部先生

古代エジプト人もギリシャ人もやるべきことをやれない、先延ばしにしてしまうって悩んでいたそうですよ。

さえり

えっ、そんなに昔の人も!?

服部先生

そうです。僕もそうなのですが……、だいたいの人間が「やるべきことがなかなかできない」で悩んでいるのかもしれないですね。

さえり

安心したぁ〜……。

さえり

「考えたくないことを考えてしまう」の例として、「嫌なことをくよくよと考えてしまう」とか「失恋した相手のことを考えてしまう」とかありますよね。

服部先生

そうですね。

さえり

先生の研究では、失恋から立ち直る方法もわかりますか?

服部先生

恋愛が研究のメインテーマではないですが、そこも含まれます。思考や感情の抑制に関係する身近なことはたくさんありますからね。

さえり

よく「失恋して辛い」という相談をもらうんです。きっと悩んでいる人は多いと思うので、そのあたりと絡めて教えてもらえますか?

服部先生

もちろんです。

失恋したときはどう立ち直ればいい?

服部先生

じゃあまずは失恋の話からしましょうか。辛いからもう考えたくない! と思うのに考えてしまうことって、さえりさんはありますか?

さえり

ありまくりです……。

さえり

もう考えたくないのに朝起きてから寝るまでずっと考えてしまって「今何してるのかな……あっダメダメもう考えないようにするんだったわたしのバカバカ! 違う事考えてハッピーに生きてやる! あー新しい洋服買おうっと、あ、彼このスカート好きそう……ってもう別れたんだったバカバカ!!」みたいになりますよね。これみんなそうですよね?

服部先生

いや、みんなかどうかわからないですが……。ただ、感情や思考は「抑制しよう」と思ってもなかなかうまくいかないっていうのは、しろくま実験でもわかっているんです。

服部先生

どうやったら考えないでいられると思いますか?

さえり

えっ。うーん。何か違うことを考えて考えないようにする、とか?

服部先生

じつは、辛いことは考えちゃったほうがいいんです。そのほうが、結果的に早く考えないでいられるようになります。それにはいろいろ方法はあるのですが……。

さえり

え、考えるほうがいい?

服部先生

そうです。最初から気をそらすのが上手い人はこんなことする必要はありませんが、さえりさんのように辛いことが頭から離れずにずっと考えて落ち込んでしまうような人は「考えないようにする」という意識がそもそもよくないんです。

さえり

え、考えないようにしよう!って何度も思ってました……。考えるのって、辛いじゃないですか。

服部先生

もちろんだらだらと考えてしまうのは辛いので、彼のことを考える時間を設けるんです。夜の寝る前の10分間は考えよう、とか。

服部先生

意外と「この時間に考えよう」と時間を決めていれば、それまでの間は考えないようにするってことができるんですよ。

さえり

ふむ……。考えるだけでいいんですか?

服部先生

その時間で、感情を文字にしていくんです。

さえり

紙にバーッと書きつけるってことですか?

服部先生

そうですそうです。

服部先生

感情を伴った記憶って頭にどうしても残りやすいんです。なので、事実は消せないけど、それにくっついている特別な感情を整理して癒していく。そのためには、書くというのがとてもいいんです。これは「筆記療法」とも呼ばれていますね。

さえり

なるほど。どんな風に書いたらいいんでしょうか?

服部先生

書く内容はなんでもいいです。とにかく思ったことをバーっと。

さえり

彼に会いたいとか、つらいとか、彼のここが好きだったとか、死にたいとかでも?

服部先生

なんでもいいですよ(笑)

服部先生

書き始めた直後は感情が強くなってしまうことのほうが多いんですが、そこで止めないのが大事です。一旦決めたらその期間は必ず続けてくださいね。最初は辛いですが、1週間2週間と続けていくとだんだんとそのことを考えても落ち込まなくなります。

服部先生

あとものすごく大事なのは書いた後の紙を見返さないことですね。やぶって捨てたり、シュレッダーにかけたりしてください。

さえり

読み返すと感情が呼び起こされちゃう?

服部先生

こともありますね。

さえり

失恋だけじゃなくて嫌なことがあったり落ち込んだりした時はいつでも使える方法ですか?

服部先生

そうですね。何か嫌なことがあって、それをくよくよ考えてしまうときには是非使って欲しい方法です。もしどうしても自分で続けるのが難しければ、専門家の力を借りるということも視野にいれてみてください。

さえり

これまで闇雲に「嫌なことは考えないようにしよう!!」って思っていたところがあったかもしれないです。その割に全然うまくいかないというか。

さえり

でもさっき言ってたみたいに、そもそも上手に気をそらせる人もいるじゃないですか。たとえば彼氏といや〜な喧嘩をした時なんかも、その後わたしは「忘れよう」と思って友達と遊んでもずっとそのことが頭に残っているのに、彼のほうは友達と遊んでる間はすっかり喧嘩のこと忘れて楽しんでたりして悔しい! みたいな。

服部先生

ありますね。考えないようにするために遊びに出かけたのに、その間中どこか頭にきになることが浮かんでしまって楽しめない人と、考えないようにするということさえ忘れて楽しめる人と。

服部先生

違いは、「目標を何とするか」なんです。考えてしまう人は、「嫌なことを回避するぞ」という意識をずっと持ってしまっているんですよね。目標がそこにある限りはどうしても他のことに集中できないことが多いですね。

さえり

うっ……。考えないようにしてやる! の決意が仇に……。

服部先生

嫌なものだからといって排除しようと意識しないほうがいいんです。嫌なものは嫌なものとしてそのまま受け取れるようにできるトレーニング方法もいま研究されていますね。なかなか難しいんですけどね……。

服部先生

とにかく「闇雲に感情を抑え込もう」というのが一番よくないんです。それに、無理やり抑え込んでいても、抑える力が弱くなった瞬間にバーンと前よりも強い気持ちで復活する「リバウンド効果」というのもあるんですよ。

さえり

彼のこと考えないようにするって誓ったのに、疲れた日に突然感情がこみ上げてきて「やっぱ好きだ〜〜会いたい〜〜」って泣いてしまうようなパターンですね。

服部先生

そうですね(笑)。あとは「もうやめよう」と思った恋愛でも、むやみに抑え込もうとした結果リバウンドして「もういい。誰がなんと言おうと、やっぱり彼が好き!」と今までよりももっと好きになってしまう、とかですね。

さえり

わぁ、それもよく聞く話ですね。

服部先生

それに考えないようにしようとおもっていると夢の中で出やすいという研究結果もあるんです。せめて寝ている間は失恋の事は考えたくないなと思っていると、夢の中にでてきたりします。

さえり

うぅっ、辛いパターンのオンパレード……。

服部先生

いずれにせよ「むやみに感情を抑え込もう」とするのが一番よくないんです。

さえり

わかりました……。失恋から立ち直りたかったら、時間を設けて文字にして、辛い時間をきちんと通り過ぎるようにしてみます。

どうして思考の制御はうまく効かないのか

さえり

それにしても、どうして「〜しないようにしよう!」の気持ちはこんなにうまくいかないんでしょうか。

服部先生

心理的リアクタンスというのがあるんですが、たとえば人を「落とし穴」に落とすためにどうしたらいいと思いますか?

さえり

えっ、なんだろう。

服部先生

「ここには近づかないでください」という看板を置いておくことなんですよね。

さえり

あぁ! ダメと言われるとしたくなるというやつですね。

服部先生

そうです。「〜〜するな」という禁止は自由を阻害するので、それにたいして我々は反発したくなるんですよね。

さえり

それって、「浮気しちゃう」とか「好きになっちゃいけない人を好きになっちゃう」とかにも関係していますか?

服部先生

そうですね。もちろん「するな」と言われて絶対にしない人もいるのですが、どうしてもしたくなる人や我慢がきかなくなる人もいます。

さえり

うーん、なるほど……。我慢がきかなくなる人と我慢できる人の違いってなんでしょうか?

服部先生

遺伝子的な違いもあるとは言われています。例えばこんな実験があって。

服部先生

子供の前にマシュマロをおいてどのくらい我慢できるか調べる「マシュマロテスト」というのがあるんですが、実験すると同じ年齢の小さい子でもできるできないの違いがあるんです。そしてその後何十年も追跡調査すると、子供の頃に我慢できなかった子は薬物依存になりやすいとか学業成績が低いとかそういう結果が出るんですね。

さえり

ええっ。遺伝子的に「我慢できない度合い」が決まっているのか……。

服部先生

ある程度はそうですね。でも、その後取得していく後天的要素もかなり大きいので、結局は我慢するトレーニングをつんでいるかどうかっていう部分のほうが重要ですね。

服部先生

子供の頃から我慢する練習を積んでいると、禁煙したいとかダイエットしたいとか、そういう目標を成功できる人になりやすいです。

さえり

我慢も積み重ねが大事ってことですね……。

服部先生

そうですね。先ほどの話に戻すとすれば、「ダメだって思っているのに浮気してしまう」というパターンの人ははこの「我慢のタンク」が元から小さかったり、トレーニングを積んでいなかったりすることが多いですね。

服部先生

もちろん、浮気を悪いことだと思っていない倫理観の持ち主とかだとまた話は別です。

さえり

それはそうですよね。「やめたいのにやめられない」みたいな場合にってことですよね。

服部先生

そうですね。あとちなみに、浮気しやすい状況っていうのもあると言われているんです。

さえり

どういう状況ですか?

服部先生

面白い実験があって。理想を追い求めている人が落ち込むと、他の人に目移りしやすいというものなんですが……、

服部先生

簡単に言えば、パートナーに対して「この人しかいない!! この人は理想的だ!!」と思っている人のほうが落ち込むと目移りしやすい、と。まぁこのくらいでいいかな?と思っている人のほうが、気分の影響をあまり受けないというのがわかっています。

さえり

えーっ! そうなのか!! じゃあ君しかいない、君が運命の人だ、と言われた場合は少し気をつけた方がいいのか……。言われたことないけど……。

服部先生

(笑)。それも、もちろん人によりますけどね。

さえり

なるほどなぁ……。

さえり

それにしても小さい頃の影響ってそんなに関係しているとは。「やらなきゃいけないことを先延ばししちゃう」とか「考えないって決めたのに考えちゃう」とか……。わたしは小さい頃からぐうたらだったし、もしかしたら我慢のタンクが小さいのかもしれないなぁ……。

服部先生

いやいや、大事なところを忘れてますよ、「直したい!」と思っていればトレーニングできますからね!

さえり

あぁ、そうだ。大事なのは、直す気があるかどうかでしたね……。が、がんばります。

最後に

その他にも先生には面白いお話をたくさん聞かせていただいたのですが、本記事では紹介できなかったものを箇条書きでご紹介させてください。

  • 人は「無意識」の部分で恋に落ちている!
  • たとえば、背景が赤い写真と背景が白い写真を見せると、赤い写真のほうが「魅力的」に見える!
  • 「赤」の効果は抜群。なんとイケメンに会うとわかっている女性は無意識的に赤い小物を身につけていることが発覚!
  • 逆に「この人からは好かれたくないな」という気持ちを持っている相手に会う時は、逆に普段より「暖色系」を無意識的に身につけなくなるんだとか。
  • ちなみに「好きになっちゃいけない人を好きになる」のは、ダメだとわかっているからこそ燃え上がる「ロミオとジュリエット効果」という名前が付いている。
  • 「浮気は病気ですか」と聞いてみたら「直す気がない人は直らない。直す気があれば直せる」とのこと。悩んでる女の子、彼氏は浮気ぐせを直す気がありそうかい?

もっといろいろなお話を聞いてみたかったのですが、今回はここでタイムアップ。心理学のお話は自分の内面と密接に関係しているので、グサグサと突き刺ささったり、「そういうことだったのか!」と新しい発見が得られたり。

服部先生

学生にはよく実験もしてもらっているんです。外国でこんなのやりましたよっていうデータをみてもピンとこないと思うので……。新しく「これはどうなんだろう」「あれが知りたい」と言ってくれるような学生がいると、授業ももっと面白くなっていいですね。

と語る先生。実験しながら人の心を紐解けたら面白いだろうなぁ。心理学に興味のある高校生はオープンキャンパスなどで是非服部先生の授業を受けてみてはいかがでしょうか。何か人の心がわかるきっかけになるかも。

本記事が、失恋で辛いみなさんや嫌なことで悩んでいるみなさんの役に立ちますように……!
それではみなさま、またねー!

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さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

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