「鴨川で等間隔に並ぶカップルにムカつきます」素朴な悩みを京都学園大学・鍛治先生に聞いてきた

「鴨川で等間隔に並ぶカップルにムカつきます」
素朴な悩みを京都学園大学・鍛治先生に聞いてきた

行ってみた

こんにちは! さえりです。今回も京都学園大学に来ています。
今回は、学生さんからこんな“素朴な悩み”をぶつけられました。

質問をくれたのは、健康医療学部 言語聴覚学科3回生の左近文秀さん、

男子学生

悩んでいることがあるんですけど……

男子学生

鴨川の三条大橋あたりに、カップルが等間隔に並んでるの見てると、ちょっとムカつくんですよね。ムカつかなくて済む方法があれば知りたいです

さえり

なるほど〜。いい加減、Romantic止めて、と思うわけですね。誰か、って人任せにしてんじゃねえ、Romanticは自分で止めるんだよこのやろう! と思いますよね。今のネタは古いのでわからなくていいのですが、悩みはとってもよくわかります。

……ということで、この素朴な悩みに答えられる先生を探して聞いてきました。

今回お話をしてくださったのは、京都学園大学人文学部歴史文化学科の鍛治宏介先生。

鍛治宏介先生
鍛治宏介先生

京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学、同研究科特定助教などを経て、現職。専門は日本史(江戸時代)。担当科目は日本史概説、歴史学資料講読、歴史学特殊講義(近世)、古文書講読など。論文に「京都の通り名歌と江戸時代の書物文化」など。

“ロマンチック”とは無縁だった三条大橋

さえり

先生。「等間隔カップルがムカつく」と学生さんに言われたのですが、健やかな学生生活のためにどうやったらムカつかずに済むのかを教えてほしくて。

鍛治先生

なぜ私に聞くんだろう……という気持ちは拭えませんが、私にわかる範囲でお答えしますね。

 width=
鍛治先生

こう考えてみるのはどうでしょうか?

鍛治先生

江戸時代の終わり頃、今の京都駅の前にすんでたお百姓さんが、とある日記を書いているんです。そこにはこう書いてあります。

 width=
鍛治先生

三条大橋で、首が晒されている、と。

さえり

首……?

鍛治先生

はい。その頃、1ヶ月に2回くらい、外国と貿易をしている商人や、開国を進める考え方の人が攘夷派の志士に斬られて首を晒される、いわゆる天誅という事件が起きていたんです。もともとあそこは「高札場」という幕府のお触れを貼っておく場所で、多くの人目につくからこそ首が晒されたんですね。

鍛治先生

さすがに江戸時代でも、“晒し首”なんていうものは珍しかったようで、百姓の日記には「めちゃくちゃ怖い時代になっちゃった」と書かれています。その他にも、「家の前を馬に乗って甲冑を来た侍が、抜き身の刀をもって走っていった。いまは戦国時代か?」なんて書かれているんです。

さえり

そんな日記があるんですね……!

鍛治先生

そうなんですよ。まあ、つまり何が言いたかったかっていうと、あのあたりは、昔は、晒し首が並んでいた、と。その頃は恐ろしい場所だったと思うんです。

鍛治先生

等間隔に並んでいるのは、リア充さんたちではなく、首と考えると、、、そんな所に、行きたいですか?

さえり

多少無理がある気がしますが、彼にはそう伝えておきます。

さえり

昔の人の日記が残っているなんて面白いですね。読んでみたいくらいです。

鍛治先生

すっごく面白いですよ。私は、江戸時代の“書物文化”を研究しているのですが、そこには歴史の教科書に載らないような人たちの生活の痕跡がたくさん残っているんです。

今も昔も変わらない。“落書き”された教科書

鍛治先生

たとえば古典の『源氏物語』って、広く知られるようになったのは平安時代ではなく、江戸時代からなんです。平安時代には「うふふ、おほほ」と笑っていたお公家さんたちしか読むことができなかったのですが、江戸時代には出版文化が盛んになって、民間の本屋さんがばんばん本を売るようになりました。

鍛治先生

こういう本物が、今でも京都の寺町の古本屋さんでは安い物だと1500円くらいで売られているんですよ。

さえり

えっ、これ江戸時代の本物の書物ですか? すごい!

鍛治先生

そうです。どんなことが書いてあるかを読み解いて当時の生活を知ったり、手垢の多くついているところから人気のページを探したり……。生きていた人たちの痕跡を知ることができるんです。

さえり

おもしろそう……。たとえばここにはどんなことが書いてあるんですか?

鍛治先生

女大学(おんなだいがく)という教訓書で、女子はこのように生きよ、みたいなのもありますね。一歩引いて歩けとか読んでいたらムカつくようなものもあります。それから“お手紙のマニュアル“もありますよ。暑中見舞いに何を書けばいいか、安産の時になにを書けばいいか、とか。今と変わらないですよね。

鍛治先生

もっとおもしろいのは、所有者の落書きですね。挿絵の顔に落書きしてたり(笑)。私たちの学生時代と一緒やん、って感じで。

さえり

うわ、本当だ。ここには書けないような、まぁくだらない下ネタみたいな落書きもありますね……(笑)。

鍛治先生

反省文もよくありますよ。昔の人って、僕こんな悪いことをしましたって村の偉い人によく出していたんですが、内容もごくごく普通で「村で農作業しなきゃいけない日に、お酒を飲んで隣の村に芝居見に行っていました。ごめんなさい」とかそんな内容なんです。

さえり

江戸時代が終わったのが1868年なので……、そんなに前の人たちなのに私たちとあまり変わりない部分が残っているのはおもしろいですね。

新撰組は、モテていた……?

さえり

そういえば、江戸時代といえば新撰組も活躍した頃ですよね。

さえり

この間、とあるお仕事の依頼で「新撰組メンバーたちとの恋愛ゲーム」のシナリオのお話があって(笑)、お断りしちゃったんですが、あんな風に扱われるってことはやっぱり本物も当時からモテモテだったんでしょうか?

鍛治先生

そんな、わけないですね。

さえり

……ですよね。

さえり

でも、あんなにヒーロー扱いされているから、当時はどうだったんだろうと気になっていました。

鍛治先生

新撰組も幕末志士も、今では漫画やアニメ、ゲームなどで知る人が多いかもしれませんが、もちろんあれは作られた歴史です。でも、実際に生きていたので、手紙や書物によって痕跡が残っているんですよね。

鍛治先生

たとえば壬生寺(みぶでら)というお寺の人が書いた陳情書なんですが、新撰組が、寺の中で大砲の練習をしたり約束を守らなかったりして迷惑しているのでなんとかしてください、という文章を朝廷に出しているのが見つかっているんです。

鍛治先生

しかも、「あいつらは乱暴者なので、わたしたちが言ったということがばれないようにしてください」とまで書いていて。

さえり

完全にめちゃめちゃ迷惑してますね(笑)。

鍛治先生

そうなんです(笑)。他にも、借金をした「契約書」を読み解いていくと、彼らがお金を借りパクしたことがわかったり。

さえり

そんなに荒くれ者だったのに、どうしてモテるっていう話にすりかわっちゃったんでしょう?

鍛治先生

すりかわったんじゃないですよ。当時、新撰組メンバーの土方歳三という男が「俺、祇園でモテモテなんぜ」っていう手紙を、友達に書いているんです。

さえり

え! やっぱりモテていたんですね?

鍛治先生

まあそういうお店があるところですからねえ。

さえり

あっ……そうなんですね(笑)。

鍛治先生

でも、もしかしたら本当かもしれない。もしかしたら誇張かもしれない。私たちは現代に残るたくさんの史料から見えてくる彼らの姿を研究して、当時の姿を想像するしかないですからね。

さえり

なるほど。じゃあ、いつかわたしが書いた日記や手紙が、来来来世の人に発見されて読まれる可能性があるってことですよね?

さえり

それなら、「わたしは超モテて、ゆるふわパーマの男子を選び放題で、男にもお金にも苦労することがなく、すべての人から憧れられて、ミランダ・カーとアンジェリーナ・ジョリーを足して足して足しまくった顔だった」とか適当なこと書いておいたほうが得かもしれないですよね??

鍛治先生

え〜と。歴史家は、いつどういう目的で誰に対してあてられたものなのか、書いた人はどんな人でどんな暮らしをしていたのか、などいろんな見方で判断するのでね。あんまり意味ないですね。むしろ、誇張していたことがバレるだけかもしれません。

さえり

……残念です。

さえり

とにかく江戸時代の人たちがわたしたちとあまり変わらない部分がたくさんあったことが知れておもしろかったです。今日は鴨川について聞きにきただけなので、このあたりで……

鍛治先生

あっ、これも面白いですよ。

国立国会図書館所蔵 麻疹流行年數

鍛治先生

これは、当時はしかが大流行して、これを貼っておけばはしかにかかりませんよっていう、“まじない”の紙なんですけどね、東向きにある馬小屋にあるタライを頭に乗せたらはしかにかからないって書いてありますね。

鍛治先生

あと、男女関係のまじないもよくあるんですよ。浮気させないためには、男性器をかたどった何かをバチーンと壊すと大丈夫、とか。健康になるためには、まじないを書いた紙を飲み込めばいいとか。

さえり

(どんどん出てくるし止まらない。誰か、ロマンチックより先生を止めて)

鍛治先生

……こんな風に、ものがたくさん残っていて、そこから生活の痕跡を知ることができる。とにかく夢のある分野なんです。私が発掘しなかったら世の中に広がらなかったな、というものもまだまだたくさんある。

鍛治先生

学生さんにも、崩し文字の読み方を教えて、彼らが彼らの手でなにかひとつでもそういうものを見つけてくれるといいなと思っていますね。

さえり

わたしは1日を通じて、来来来世のために多方面から上手に誇張した文章を残そうと思いました。

さえり

先生、今日はありがとうございました!

さえり

ってことで、あそこってめっちゃ首が晒されていた場所らしいよ! どう? ムカつかなくなった?

男子学生

いや、まだムカつきますね!!

さえり

(わたしも!)

歴史文化学科に興味を持った方におすすめ

歴史文化学科

歴史文化学科TOPIX

さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

あわせて読みたい さえりさんの記事

トップページ > 「鴨川で等間隔に並ぶカップルにムカつきます」素朴な悩みを京都学園大学・鍛治先生に聞いてきた

入試に関するお問い合わせ

入学センター

Mail nyushi@kyotogakuen.ac.jp

Tel (0771)29-2222

Instagramで、ハッシュタグ
#京都学園大学
をつけて投稿してみよう!

Instagramの詳しい利用方法はこちら

Load More
Something is wrong. Response takes too long or there is JS error. Press Ctrl+Shift+J or Cmd+Shift+J on a Mac.

ページトップへ

  • YouTube
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE