微生物をつかって「ものづくり」? バイオ環境学部の櫻間先生にお話を聞いてみた

微生物をつかって「ものづくり」?
バイオ環境学部の櫻間先生にお話を聞いてみた

行ってみた 櫻間晴子先生

こんにちは! さえりです。

京都学園大学の先生に聞いてみたシリーズ、今回「」、京都亀岡キャンパスのバイオ環境学部にやってきました。

本シリーズは今回で12回目なのですが、バイオ環境学部の取材は12記事中6記事……。だんだんと、「なぜその研究を!?」と思わず言いたくなるようなマニアックな研究内容にも慣れてきました。

今回は、バイオ環境学部バイオサイエンス学科の櫻間先生にお話しを伺ってきました。どんな研究をしている方なのでしょう……!

櫻間晴子先生
櫻間晴子先生

徳島県出身。京都大学大学院農学研究科修了後、金沢大学がん進展制御研究所や石川県立大学資源工学研究所などの研究員、ならびに、京都大学大学院農学研究科などの特定助教を経て現職。構造生物学の知識をベースとして、社会貢献につながる研究に尽力。

さえり

今日はよろしくお願いいたします! 先生はどんな研究をされているんですか?

櫻間先生

「応用微生物学」という分野です。微生物をつかって、環境や人間をよくしていこう、と。特にわたしは微生物の「酵素(こうそ)」について研究をしています。

さえり

酵素……?

櫻間先生

以前DNAについて取材されていましたよね。
(過去記事:植物の遺伝子組換えってなに?人の手を加えていいものなの?高瀬尚文教授にお話を聞いてきた

さえり

そうですね。DNAは生物の設計図、ですよね。

櫻間先生

そうです! 今度は酵素を覚えていってくださいね。

さえり

はい! 不安しかないのでわかりやすく教えてください。よろしくお願いします!

DNAは設計図、
酵素は実行部隊……?

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さえり

えっと……、まず「酵素」ってなんですか? 「酵素」という言葉自体はよく聞くのですが、実際どんなものなのか全然わかっていません。

さえり

体に良いもの? ですか?

櫻間先生

「酵素」は、生命活動において欠かせない重要なタンパク質です。簡単にいうと、酵素のタンパク質がなければ人も微生物も生きていくことができません。

櫻間先生

生物にとっての設計図が「DNA」だとすると、それから作られる「酵素」のタンパク質は実行部隊のようなものです。

さえり

実行部隊……?

櫻間先生

例えば、わたしたちが何かを食べたあと腸では食べ物をバラバラに分解して消化を助ける「酵素」が働いているんです。

櫻間先生

色々な酵素が、食べ物の決まった成分と出会うと分解してくれるんですね。

さえり

決まった出会い……?(運命みたいな響きだな)

櫻間先生

う〜ん、説明が難しいですね……。ちょっとこれを見てもらえますか?

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さえり

新体操のリボンのような……。これ、なんですか?

櫻間先生

これが、酵素の形です。

さえり

へえ! 酵素ってこんなに綺麗なんですね。

櫻間先生

そうなんですよ!!!!!! よく言ってくれました。すんごい綺麗でしょう? これは酵素の形の一つで、種類によって形が違うのですが、わたしは酵素の形が綺麗なところに魅了されてこの研究を続けているようなものなんです。新体操のリボンの技ように螺旋(らせん)とか蛇形(だけい)などがあって、とても美しいんですよね。こういうのが身体の中にあると思ったら感動しますよね。酵素のタンパク質の種類によって様々な形のものがあるのを見つけるのがわたしとしてはもうとても嬉しくて、このほかにもね……、

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さえり

(先生、急にテンション上がっている……)

さえり

えっと、それで、この新体操のリボンが、なんでしたっけ。

櫻間先生

あぁ、そうでした。このリボンのような形が酵素で、相性の合った物質だけを分解するんです。分解することではじめて、人や微生物は栄養をとることができる。生き物は、分解する酵素なしでは生きられないんですよ。

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さえり

なるほど……。ちょう簡単に言えば、“体にいい”という甘っちょろい感覚ではなく、「酵素なしではわたしは死ぬ」ということがよくわかりました。

さえり

酵素って身体の中にどれだけあるんですか?

櫻間先生

どれ……だけ? うーん、数では言えないですね。種類としては、何万種類とあります。

櫻間先生

ちなみに、酵素を人と同じサイズにしたら、人はどのくらいになると思いますか?

さえり

え、そうですね……富士山くらいでしょうか……?

櫻間先生

いえ、もし酵素が人ほどの大きさであれば、人の大きさは木星と同じくらいです。

さえり

木星! でかっ!!

櫻間先生

はい。そのくらい今わたしたちは小さな小さな物質の話をしているんです。

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櫻間先生

ちょっと話が飛びますが、「腸内細菌」って聞いたことありますよね?

さえり

はい! なんか体にいいイメージがあります(2度目)。

櫻間先生

そうですね。最近はガンにも腸内細菌が効くとか、花粉症とかにもヨーグルトに含まれるビフィズス菌が効くとかいいますよね。免疫力を高めてくれるんです。

櫻間先生

先ほどお見せした酵素は「腸内細菌」であるビフィズス菌が作っている酵素なんです。

さえり

腸内細菌は、酵素を作ることもできるんですね。

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さえり

うーん、先生。酵素の働きや形はなんとなくイメージできましたが、先生の分野は「微生物をつかって、環境や人間をよくしていこう」という分野でしたよね? 酵素を研究することで、どう人間がよくなるんでしょうか……?

櫻間先生

ゆっくり説明しますね。

母乳で育った赤ちゃんにビフィズス菌が多い理由

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櫻間先生

人には腸内細菌ってどのくらいいるかわかりますか?

さえり

え、どれくらいなんだろう……。

櫻間先生

100兆個と言われています。人の細胞60兆個より多いんですよ。「人」って呼んでいるけれど、「腸内細菌の住処」って呼んだほうがいいかもしれないですね。

さえり

な、なんか嫌だな……。

櫻間先生

ある物を食べた時、人が栄養として吸収できるものは人が取り、残りかすを微生物が食べています。また、人は、微生物が作った有用な物質をもらっています。

櫻間先生

人と微生物の「共生」ですよね。欧米は、昔ペストが流行ったこともあり、「微生物をやっつけてやろう」という発想が多いのですが、日本人は昔から微生物とも共生しようという文化がありました。

さえり

日本人らしい考え方ですね。日本人は、妖怪とすら共生してますもんね。
(過去記事:「妖怪は絶対にいません」妖怪を研究して 30年の佐々木先生に話を聞いてきた

櫻間先生

そうなんです。おかげで日本は応用微生物学分野において非常に進んでいますからね。

櫻間先生

わたしたちの腸内には細菌が100兆個、と言いましたが、赤ちゃんが胎内にいる間は、腸内細菌はゼロなんです。

櫻間先生

いつから腸内細菌が住み始めるかって、これちょっと面白い話なんですけど、赤ちゃんがお母さんの産道を通る時に、お母さんの産道に住んでいるビフィズス菌や乳酸菌をなめとって出てくるんですよ。それで産まれると同時に菌が住み始めるという。

さえり

えぇ、そうなんですか!? ち、ちなみに帝王切開の場合は……?

櫻間先生

その場合は、生まれた後に医師や看護師などの手から菌を受け取るようです。まぁこの話は豆知識程度なんですが(笑)。

さえり

(身体に必要な菌の話とはいえ、なにか無駄な知識を蓄えてしまった気がする)

櫻間先生

それで……本題に戻しますが、じつは母乳で育った赤ちゃんの腸内には、人工乳で育った赤ちゃんよりもビフィズス菌が多く、腸内細菌の約90%を占めるようになります。

櫻間先生

ビフィズス菌は、免疫・感染予防にもつながるので赤ちゃんにとって大事なものなのですが、でも、母乳そのものに大量のビフィズス菌がいるわけじゃないんですよね。

さえり

あれ、そうなんですか? それなのに、お腹がビフィズス菌だらけになる……? どうしてですか?

櫻間先生

母乳で育った赤ちゃんはなぜビフィズス菌が多いのか……? 長い間その理由は知られていませんでした。

櫻間先生

でも、ここ数年でやっと、母乳で育てると何故ビフィズス菌が増えるのか、そのメカニズムの一端がわかってきたんです。これは、京都大学の片山高嶺先生を中心とした研究グループが明らかにしてきたもので、わたしも研究グループの一員なのですが……、

櫻間先生

どうやら、母乳には“ビフィズス菌の餌”となるものがたくさん含まれているようだ、とわかってきたんですね。

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さえり

ふむ……?

櫻間先生

母乳には、オリゴ糖が多く含まれているのですが、この“オリゴ糖”が鍵でした。“オリゴ糖”は複雑な形をしていて、人は分解できないんです。

櫻間先生

でも、この“オリゴ糖”を、餌として好むものがいるんです。それが、ビフィズス菌なんです。

さえり

えっと……、ビフィズス菌はオリゴ糖を分解できる(=食べられる)ってことですか?

櫻間先生

そうですね。正しくいえば、ビフィズス菌の酵素がオリゴ糖を分解できるということです。母乳は、ビフィズス菌の餌としてとっても適しているってことですね。

さえり

ふーむ。それで母乳を飲んだ赤ちゃんのお腹の中でビフィズス菌がどんどん増えていくわけですね。「こりゃウメェ、どんどん増えるぞ、わっしょいわっしょい」って感じですね。

櫻間先生

そ、そうですね。

櫻間先生

ビフィズス菌は赤ちゃんにとっても大切な菌ですが、事情によっては赤ちゃんに母乳をあげられないこともありますよね。その赤ちゃんたちのためにも、人工乳でもビフィズス菌が増えるようにしたい。

櫻間先生

では、人工乳に「オリゴ糖」をいれてあげれば赤ちゃんのおなかの中で、ビフィズス菌が増えるんじゃないか? とつながるわけです。そこから遺伝子工学技術を使って、商品を科学の力でより良くしていく……と。

さえり

なるほど……! それが微生物・酵素をつかった“ものづくり”なんですね……! 先生がしていることがようやくわかってきました(安心)。

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さえり

“ものづくり”にもいろいろあるんですね。そういえば、ちょっと話はそれるかもしれませんが、日本人しか「海苔」を分解できないという話を聞いたことがあります。ちょっと汚い話ですが、海外の方が海苔を食べても栄養として吸収されずに全部出てしまう、とか……。これも「酵素」が関係しているんですか?

櫻間先生

そのとおりです! 日本人の腸の中に住んでいる腸内細菌たちが、わたしたちが海苔を食べた時に、それを自分たちの餌として吸収できるように、長い年月をかけて海苔を分解できる酵素を持つようになったんですね。海苔という物体が来た時に、餌にできたほうが得じゃないですか。

櫻間先生

細菌や微生物たちは、どんなところでも生きていけるようにそれぞれの環境に適応するためのいろんな酵素をその都度作り出しているんです。

さえり

なるほど。どこでも生きていけるように適した酵素を作る微生物のバイタリティすごいですね。

櫻間先生

(笑)。だから本当にたくさんの酵素が世の中にはあるんですね。変わったものを分解できる酵素もいる。それらを研究して応用していけば、多くの可能性が眠っているんじゃないかなと思うんです。

「酵素」を紐解けば「環境汚染物質」も消える?

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櫻間先生

たとえば環境汚染物質を分解できる微生物や酵素を見つければ、応用して、環境汚染物質を浄化できるようになったり……。眠っている可能性は無限大ですよ。
今はまだ知らないだけで、すごい力を秘めた酵素が、世界中に眠っています。珍しい酵素をさがして、実世界に活かしていきたいなと思うんです。

櫻間先生

こうして見つかった微生物や酵素を利用して、これまでにない身体にいい食品や、よく効く医薬品を作ったりもしたいですね。微生物の力を借りて、“ものづくり”をこれからもしていきたいです。

さえり

考えたこともなかったけれど、面白そうな分野ですね……。知らないだけで本当にいろんな研究があるんだなぁと考えさせられました。

櫻間先生

そうですね。微生物がどんな珍しい酵素をもっているのか、そこから、何が分かってどんな技術が生まれるのか……。いつでもとっても楽しみなんです。こういう興味を持ってくれるひとがもっと増えたらいいな、といつも思っています。

さえり

今日はありがとうございました!

さいごに

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「ものづくり」と聞くと、工作のようなものを思い浮かべるひとが大半かもしれませんが、目には見えない微生物や酵素をいじってつくる「ものづくり」もある……。世の中には、わたしには考えもつかない分野や学問があって、そしてわたしたちはその恩恵を受けているんですね。

考えたこともなかった世界がまたひとつ開けたような気がします。やっぱり大学って面白い。

それにしても……。

取材中わたしはずっと思っていました。

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さえり

(酵素への愛がやばい)

そう、とにかく“酵素愛”がすごすぎる櫻間先生を前に、圧倒されていました。そういえば、お茶を研究されていた先生はお茶への愛がすごかったし、道の研究をされていた先生は道への愛がすごかった……。

情熱を持って何かを研究できるって、いいなぁ。そしてそういう先生の下で勉強してみたかったなぁ……。

私自身はもう来来来世まで「微生物」や「酵素」について研究する機会はなさそうですが、見えない分野でのものづくりに興味のある学生さんがこの記事で少しでも学びを決意してくれたら幸いです。少しでも多くのひとに届きますように! それではまたお会いしましょう〜!

櫻間晴子先生の研究に興味を持った方は、
先生に聞いてみた【3】櫻間 晴子講師
微生物機能開発学研究室(生物機能開発コース)
バイオサイエンス学科
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さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

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