結局“やりがい”って必要ですか?京都学園大学経営学科・田中先生に聞いてみた

結局“やりがい”って必要ですか?
京都学園大学経営学科・田中先生に聞いてみた

行ってみた

こんにちは! ライターのさえりです。

今回も京都学園大学の京都太秦キャンパスに来ています(それにしても全15回も連載を続けてきましたが、毎回ちがう場所で写真を撮っているんですよね。京都学園大学ってフォトジェニックなんだなぁ……)。

さてさて、今回も学生さんから素朴な疑問が届いています。

今回疑問をくれたのは、バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科1回生の岩本鈴音さん。

学生

就活中の先輩が、「やりがいのある会社で働きたい」っていってたんですけど、やりがいってどのくらい大事なんでしょうか? ていうか、やりがいって必要ですか? いや、むしろやりがいって何ですか?

さえり

(めっちゃ食い気味だな)。たしかに“やりがい”って就活生が急に魔法の呪文のように言いだす言葉ですよね……。聞いてきますね!

今回この疑問に答えてくれるのは経済経営学部経営学科の田中秀樹先生。

山愛美先生
田中秀樹先生

大阪府出身。三重県育ち。同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程修了。博士(政策科学)。専門分野は「人的資源管理論」「組織行動論」。担当科目は、「経営組織論」(学部)、「人的資源管理論研究」(大学院)など。所属学会は、「日本労務学会」、「経営行動科学学会」、Euro-Asia Management Studies Association(EAMSA)など。主要な研究分野は、「研究開発者・技術者の人材マネジメント」、「働きがいを高める職場要因」。
2017年7月、日本労務学会の「研究奨励賞」を受賞

田中秀樹先生

研究している内容は、人的資源管理です。いわゆる“人事管理”ですね。主に、働く人の心理を研究しています。

さえり

今日はよろしくお願いします!

やりがいって本当に大事?

さえり

さて、先生。「学生やりがいって必要ですか?」って無邪気な笑顔で聞かれちゃったんですけど、実際“やりがい”とはなにで、どのくらい大事なことなんでしょうか?

田中秀樹先生

「やりがい」ってすごくよく聞く言葉ですが、漠然としていますよね。僕の専門領域になぞらえると「ワーク・エンゲージメント」っていう言葉があるので、それに置き換えてみますね。

さえり

わーく、えんげーじめんと?

田中秀樹先生

はい。簡単に言えば、「仕事に積極的に関わっていて充実している」状態のことですね。

田中秀樹先生

「ワーク・エンゲージメント」が高まると仕事がはかどって結果もでるし、新しいアイディアもよく思いつく。さらにそういう状態を維持できているときって、メンタルヘルスにも役に立つんです。心が健康になる、ということですね。

さえり

ふーむ。じゃあ、つまり、「やりがい」は「積極的に仕事に関わる状態」
のことで、やりがいのある会社で働くことはメンタルヘルスに役立つし、会社にとっても利益が出るから大事だよってことでしょうか。

田中秀樹先生

そうですね。

さえり

(う〜ん、思いのほか普通の回答だなぁ。困ったなぁ。やりがいはそりゃみんな欲しいし、やりがいがあればそりゃ会社も嬉しいよなぁ)

田中秀樹先生

でも最近の子が言う、“やりがい”はそういう意味ではないのかもしれません。

さえり

おっ? というと……?

田中秀樹先生

日本は経済的に恵まれた国なので、どんな仕事でもそこそこ稼げますよね。だから、“好きな仕事したい”とか“やりたいことしかやりたくない”とかっていう気持ちが根底にあって、それを“やりがい”と呼んでいるのかもしれないなって思うんです。

さえり

あぁ、たしかに! 「仕事に積極的に参加したい!」という意味じゃなくて「好きなことした〜い」が心の根底にあるっていうことですね。

田中秀樹先生

そうですね。でも、好きな仕事につける人はそんなに多くはないですよね。第二希望の会社でも第三希望の会社でも、働いていかなくちゃいけない。正直「こんな仕事いやだよ〜」って思う人だって絶対いますよね。

さえり

はい……。めっちゃいると思うんです。そういう人に「ほら、ガンバってやりがいもって!」って言っても無理ですよね。やりがいの妖精とかに巡り合わない限り無理だとおもいます。

田中秀樹先生

(やりがいの妖精?)

田中秀樹先生

もちろん、働く側の努力もあるとは思いますが、こういう状況になった限り“やりがい”を感じてもらえるようにするには、企業側が努力しなくちゃいけないところかもしれません。

さえり

企業側が“やりがい”のために頑張る?

田中秀樹先生

不本意な仕事についたひとたちってすぐに辞めちゃうじゃないですか。ここは合わないとかいって。でも、それは別にたいした問題じゃないんです。問題なのは、「やりがいもない・好きでもない」と思っていながら働き続けている人たちです。そういう人たちは、正直に言えばちょっとタチが悪いんですよね。

さえり

たしかに……。会社のためにもならないですもんね。(でもよくいますよね。そういう人)。

田中秀樹先生

はい。そういう人たちをどういう風につついたら、「ワーク・エンゲージメント」があがるか。僕の研究領域はまさにそこなんですね。

さえり

詳しく教えて欲しいのですが……、でもその前に、そもそも「ここに入りたくなかったなぁ」と思っているような人たちでも、後からやりがいを見出せるものなんでしょうか?

田中秀樹先生

会社と働く人とのコンタクトが増えて、そして「こんなに良くしてくれるんだ」という体験が増えれば、ちょっとずつ好きになっていくことはもちろんあると思います。コンタクトが増えると、親近感と自尊感情が高まるっていうデータがあるので。

さえり

たしかに。「全然興味なかったのに……あれ……好きか…も……?」って展開なんて萌えますね!

田中秀樹先生

(萌え…ますかね…?)

田中秀樹先生

ちなみに、日本人って仕事に対してエンゲージメントって高いと思いますか?

さえり

えっ。どうなんでしょう……? 低いんでしょうか……?

田中秀樹先生

このニュースを見てもらえますか?
「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査(出展:日本経済新聞)
残念ながら、日本の「職場環境の満足度」は国際比較したときにぶっちぎりで低いんです。企業の人はそういうデータを見て切羽詰まっていると思いますね。

さえり

うーん……。なんでそんなに低いんでしょうか……?

田中秀樹先生

ね。

さえり

(ね!?)

田中秀樹先生

いや、理由は色々あると思います。例としてあげるとすれば……、成果主義ってあるじゃないですか。成果に応じて給料が増えるのは働く側としてはラッキーですよね。会社も働いた人にだけあげられるのはハッピーです。

田中秀樹先生

でも、日本の場合は評価の仕方が追いついていないんですよね。

さえり

評価の仕方?

田中秀樹先生

はい。海外では、自分の仕事がどこからどこまでなのかしっかり定義されていることが多いのですが、日本はそのあたりを曖昧にしていることが多いんですよね。だから、いつのまにか仕事が増えていたり、入社当初は想像もしていなかった仕事をさせられたりする。

田中秀樹先生

仕事が「どこからどこまで」としっかり決まっていない結果なにが起こるかというと、たとえば、僕とさえりさんが二人一組でチームになって仕事をしたとしますよね。それで、さえりさんだけが頑張ったとして、僕がめちゃめちゃサボったとする。

さえり

えっ。

田中秀樹先生

でも、成果さえ出ていればチームが評価されて、二人ともにボーナスが出る、と。

さえり

はっ。

田中秀樹先生

そうなったら、「なんでこいつも同じだけお金もろてんねん」って思いません?

さえり

6億パーセント思いますね。なんでわしと同じだけお金もろてんじゃわれぃ! って思うと思います。

田中秀樹先生

ですよね。そうすると、不満が絶対でてくる。自分は頑張っているのに、頑張っていない人も同じだけ給料をもらっているのは何でだ! とか、なんであのおっちゃん働いてないのに私より給料高いのよ!? とか。

田中秀樹先生

そういうことが重なっていくと「組織が自分のことをちゃんとみてくれない!」って思っちゃいますよね。そして会社に対する愛着もなくなって、やりがいを失っていくと。

さえり

う〜ん、たしかにそうですね……。

田中秀樹先生

ね。仕事の範囲が曖昧で、評価の仕組みもうまくいっていないのに、頑張ったら頑張っただけあげますよっていう成果主義を中途半端に取り入れてしまった。そのせいで、うまく機能していないところがたくさんあるんです。

さえり

海外はそうじゃないんですか?

田中秀樹先生

20代と50代の人がいたとして、スペックの高い人・より重要(だとみなされるよう)な仕事をしているほうが高給をもらえるっていうのが海外です。

さえり

実力勝負なわけですね。シビアですが健全な気も……。日本もそうすることってできないんでしょうか?

田中秀樹先生

そうしたいのは山々なんですけど、そうすると日本の場合は、大学生は即戦力になるような教育は受けていないので、若い人が一気に働けなくなって就職難になってしまう。

さえり

う〜〜ん。それはそれで困ることがあるわけですね……。

さえり

それに急にそれを切り替えたら、働いてるふりをしていたおっちゃんたちの仕事が急になくなっちゃうわけですもんね。そしたら大暴動が起きそう。

田中秀樹先生

はい。急に変えることはできません。だけど、働いているふりをしているおっちゃんたちばっかりだとみんなの“やりがい”は高まらない。だから企業は地道に努力していくしかないんです。

さえり

なるほど……。企業がどんなことをすればいいのか、教えてもらえますか?

“やりがい”のために会社ができること

田中秀樹先生

企業への忠誠心や愛着を高めるためには三つの要素があると言われています。忠誠心って、われわれの研究領域において英語ではコミットメントというんですが……、

田中秀樹先生

ひとつは、組織が好きでこの組織にいたい・この組織にいる自分が好きだ・この組織で何か起こったら自分のことにように思うという「愛着的コミットメント」。
ふたつめは、日本人に多いタイプで「今この会社を自分が辞めたら60歳でやめたときより退職金が減る」とかっていう、「経済的(功利的)コミットメント」。
それから最後が、一回入ったらやめるべきじゃないとか、辞めないのが美徳だという「道徳的コミットメント」。

田中秀樹先生

働く人たちが会社を辞めずに、かつやりがいを持って働いてもらうには、この三つのコミットメントをどのように使うかが大事になってくるんです。

田中秀樹先生

たとえば、愛着的コミットメントを高めたいなら組織と個人が一体感をもつような家族的な雰囲気をつくるとか、経済的コミットメントを高めるためには「いまここで辞めずに働けたら退職金が3倍になるよ」みたいな褒美を作るとか。

さえり

ふむ……。どれを高めればいいかは、働いている人によって変えるということですね。

さえり

ちなみにその三つの忠誠心のなかで、これを高めると特にやりがいを感じるというものはあるんでしょうか?

田中秀樹先生

それはもちろん、愛着的なコミットメントだと思いますね。

さえり

やっぱり、そうですよね。一昔前だと、道徳的コミットメントも主要だったのかもしれないですが、時代も変わってきていて今は「愛着」が一番重要な気がします。

さえり

その「愛着が持てる会社作り」が難しそうな気ももちろんしますが……。

田中秀樹先生

そうですね。何をすればいいかは、僕たちも研究をしながらその都度提案しています。具体的にいえば、愛着的コミットメントを高めるためには、上司が部下の話をよく聞く“傾聴”っていう行為をよくするといい、とか。

田中秀樹先生

傾聴って、英語だとアクティブリスニングっていうんですが、「積極的に耳を傾ける」上司がいるだけで、組織に対する愛着が高まると言われているんです。

さえり

なるほど……。これをすればみんなが会社を好きになるよ! なんて安易な方法はないですもんね。ひとつひとつやっていくしかないんですね。

田中秀樹先生

そうですね。そのほかにも、たとえば研究者や技術者であれば、仕事であたえたもの以外の研究を黙認してくれるとかが「愛着」に関わってくるようです。「自分の研究を理解して、バックアップしてくれている」と感じることができるじゃないですか。会社の駒としてみているんじゃなくて、自分を認めてくれてると感じられる。

さえり

仕事以外のことを許容するのも、仕事の上では大事なんですね。

田中秀樹先生

あとは、彼らの私生活が研究にも影響を与えるということもわかっているんです。私生活が充実してたら仕事がノリノリになると。家庭生活うまくいってるひとは仕事もうまくいってるんですよね。

さえり

あ〜、それはすごくよくわかります!

田中秀樹先生

だから、会社が仕事以外の時間をどれだけ大事に思えるか、というのはかなり鍵になってくると思いますね。

さえり

でも仕事以外の時間に会社が関与するのって難しいような……。例えば家庭で過ごせるように休みを作るとかそういうことしか思いつきません……。

田中秀樹先生

以前、全国の働きがいが高い会社を集めてヒアリングしたことあるんですが、会社の格言として「仕事とプライベート両方充実させよう」というのをかかげている会社は、社内報を家族にまで送っていましたよ。

さえり

社内報を家族に?

田中秀樹先生

そうです。社内報を家族に送ることでお父さんがどういう仕事をしているのかがわかるっていう。

さえり

あぁ、なるほど!

田中秀樹先生

それがわかると、「この時期、旦那さんは残業が多いけどなにしてたのかな」とか、わかるようになるんですよね。夫婦間でも、職種が違えば相手が何しているかわからないことも多いですよね。でもそれがお互いわかったとしたらもっと支え合おうとか、サポートできることなんだろうって考えられる、と。

田中秀樹先生

家庭のサポートがあると私生活が充実する。すると仕事が充実する。こんなふうに正のスパイラルができるんです。

さえり

わかるだけで安心するし、「こんなことしてたのね」って尊敬できるとかそういう効果もありそうですね。それに、事情をわかってもらえれば働きやすくもなりそう。

田中秀樹先生

実際、社内報をつくると、離職率がすごく減ったそうですよ。

さえり

社内報めっちゃいいじゃないですか!

田中秀樹先生

そうですよね。

さえり

それじゃあ、結論としては……。

さえり

やりがいのために、社内報を作れってことでいいですか?

田中秀樹先生

えっ、いや、ちょっと違いますね(笑)。

田中秀樹先生

“やりがい”は働く人にとっても、会社にとっても考えるべき大事なことで、“やりがい”がないと思っている社員たちのために会社は努力し続けなければならない。なぜなら、それが個人だけでなく会社のため、ひいては社会のためになるから、ですかね。

さえり

はい! 今日は、ありがとうございました!

さえり

ってことらしいけど、どうかな。

学生

うーん、なるほど。企業にはちゃんと頑張ってもらいたいなって思いました。

さえり

(その結論でよいのだろうか)。

学生

でも、会社がいくら頑張ってくれていても“やる気”がでないときってありそうだなぁとも思いました。

さえり

あっ、それに関しても先生が言っていたんですが……、

田中秀樹先生

目標の立て方によって、モチベーションって変わるんですよ。たとえばさえりさんが野球部だとして、もっと強くなるぞっていう目標と、××高校に勝つために守備を強くするぞっていう話があるとしたらどっちが頑張れると思いますか?

さえり

えっとちょっと想像できないので、「きれいになるぞ!」って目標と「××kg痩せるぞ!」っていう目標に置き換えてもいいですか?

田中秀樹先生

ど、どうぞ。

さえり

より具体的なほうがやる気がでますね。

田中秀樹先生

ですよね。目標を立てるときには具体的にしないとダメなんです。具体的じゃないと次に何をすればいいのかわからない。そしてなにをしたらいいかわからないとなると、やる気がでない。

田中秀樹先生

漠然とした目標だとやる気もなくなっていくことがありますよ。仕事も、部活も、サークルも、勉強も一緒です。

さえり

より具体的なほうがやる気がでますね。

さえり

って、先生が。

学生

なるほど……! じゃあ、やりがい作りは会社に頑張ってもらって、わたしは具体的な目標作りを頑張ろうと思います!

さえり

は、はい! がんばってください……!今日はありがとうございました!

さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

あわせて読みたい さえりさんの記事

トップページ > 結局“やりがい”って必要ですか?京都学園大学経営学科・田中先生に聞いてみた

入試に関するお問い合わせ

入学センター

Mail nyushi@kyotogakuen.ac.jp

Tel (0771)29-2222

Instagramで、ハッシュタグ
#京都学園大学
をつけて投稿してみよう!

Instagramの詳しい利用方法はこちら

Load More
Something is wrong. Response takes too long or there is JS error. Press Ctrl+Shift+J or Cmd+Shift+J on a Mac.

ページトップへ

  • YouTube
  • Facebook
  • Twitter
  • LINE