京都学園大学

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Departmentバイオサイエンス学科

生物有機化学研究室(分子生命科学コース)

更新日:2017年10月16日(月)
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“フェロモン”とは、異性を引き寄せる特有の香り。但し昆虫や植物は“性”のほかに“集合”“警報”と様々なフェロモンで仲間とコミュニケーションをとっている。生物有機化学研究室ではフェロモンを研究し、害虫の駆除などに利用。さらなる応用で人類を救う。
未来の暮らしを支える生物活性物質に着目
昆虫由来の抗菌素材、防御物質、フェロモンなど、生物が持つ有機化合物の構造を機器分析し、それらのメカニズムを解明。その働きを明らかにすることで、医薬や農業への応用を追求し、人々の健康と快適な生活の実現を目指します。研究成果をもとに、ニホンミツバチを飼い、都市の緑化につなげるプロジェクトなどに取り組んでいます。
教員紹介

清水 伸泰

コメントなし

若村 定男

コメントなし
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虫の匂いはどうやってつくられる?体内のメカニズムを研究
虫が「フェロモン」と呼ばれる匂いを出して異性を惹きつけるということはよく知られています。それでは、その匂いは虫たちの体のなかでどのようにして作られているのでしょうか?それが、生物有機化学研究室の研究テーマです。
主な研究対象はダニ。小麦粉などの粉に発生したり、農作物の根に付いたりするうえに、アレルギー性皮膚炎の原因にもなるといわれているやっかいな害虫です。ごく小さいためにどこからやってくるのかを突き止めることすら困難ですが、フェロモンを生成するメカニズムが解明できれば、発生を抑えられるようになるかもしれません。
フェロモンの正体は、体内で合成される有機化合物です。虫たちの体内では、分子がタンパク質の働きによって段階的に変化していき、最終的に完成した有機化合物が匂いとして外に出ていきます。
生物有機化学研究室で突き止めようとしているのは、ダニの匂いが完成する直前に作用するタンパク質。それがわかれば、その働きを阻害する薬を作ることができます。そうするとダニの体内でフェロモンが合成されなくなるため、オスとメスが出会えず、発生を根本から抑えることができるようになるのです。
虫が出す防御物質から殺虫剤を作るプロジェクト
虫が体外に出す匂いは、フェロモンだけではありません。捕食者などに襲われそうになると、「防御物質」という相手の嫌がる匂いを出すことがあります。生物有機化学研究室では、この匂いを利用して殺虫剤や忌避剤を作れないかという研究にも取り組んでいます。
この研究はもともと、園芸用商品のメーカーから「天然の成分を使った殺虫剤や忌避剤を作りたい」という相談を受けたことから始まりました。かなり有望な物質を発見できたのですが、残念ながらコストの問題で商品化には至っていません。低コストで簡単に手にいれることができ、かつ安全性の高い物質を新たに探しています。
今のところ、虫の匂いを利用した殺虫剤などは販売されていません。これからゼミに入ってくる学生が有用な物質を発見できれば、それが画期的なプロダクトの開発につながる可能性は十分あります。
飛ばないトビムシはなぜ生きられる?生物と化学を結びつけて考える
京都亀岡キャンパスにはたくさんの木が植えられているため、そこに生息している虫が研究材料になることもあります。
過去には、腐った木に発生するトビムシの一種を扱った学生がいました。その名の通りトビムシのほとんどは跳ぶことによってアリなどの捕食者から逃げるのですが、なかには跳べない種類もいます。なぜ跳べなくても生き延びることができるのか?それを調べるために生活史を観察することから始め、最終的には防御効果のある匂いを出しているということまで解明しました。
このように生物と化学をつなぎ合わせて考察できるところが、生物有機化学研究の面白みです。化学の知識を通して生き物と向き合いながら、私たちの暮らしを変えるかもしれない物質を探してみませんか?
卒業後の進路
農薬や医薬品などを開発・販売する化学系メーカー。
研究や分析を行う技術職として就職するために、大学院への進学を希望する学生も多く所属しています。
topics

研究内容

害虫防除のための合成フェロモンを圃場に設置した後の風景
害虫防除のための合成フェロモンを圃場に設置した後の風景
フェロモンの有機合成
フェロモンの有機合成

生物有機化学研究室では、昆虫などの身の回りの生物が放出する、防御物質やフェロモンなどの生物活性物質の探索と合成にチャレンジしています。ニホンミツバチの分蜂群を誘引する東洋ランのキンリョウヘンから誘引物質を抽出して化学合成したり、コガネムシの性フェロモン成分や、グンバイムシの警報フェロモン成分の化学構造と役割の解明を進めてきました。このような研究は、ニホンミツバチの分蜂群を巣箱に誘導する方法の開発や、合成フェロモンを使った害虫防除剤開発などの成果を産んできました。これからも、生き物が分泌して他の生き物に影響する物質の解明研究を発展させていきます。ところで、生物有機化学研究室は、2015年のノーベル生理学・医学賞に輝いた大村博士が所属していた研究室と同じ名前です。大村博士は放線菌がだす抗生物質の化学構造を解明されました。このことが、何億人もの命を救う抗線虫薬の開発につながりました。君が見つけた新規化合物が思いもよらないところで人々の役に立つかもしれない、そんな魅力も秘めた研究室です。

これまでにどんな発見をしましたか?

昆虫のフェロモンを利用した交信かく乱法の効果の検証
昆虫のフェロモンを利用した交信かく乱法の効果の検証
野外での昆虫の生態の調査
野外での昆虫の生態の調査

昆虫は匂い(化学物質)を頼りに繁殖行動を成立させたり、生存に役立てたりしています。それに関わる物質はフェロモンや防御物質ですが、昆虫から土壌小動物に至るまで、これまで数十種のフェロモンを解明しました。そのフェロモンの中には、これまで誰も発見できなかった全く新しい化学構造をもつ物質もありました。合成殺虫剤に頼らない害虫防除法としてフェロモンを利用した交信かく乱法が、実際の農業現場で威力を発揮することを実証できました。現在は、フェロモンが昆虫体内でどのように作られているのか、あるいは昆虫にだけ有効に働く殺虫成分の探索を進めています。将来的には、それらの新発見に基づいた新しい害虫防除法を提案したいと考えています。

学生による研究室紹介

学会発表インタビュー(男子院生)

ポスター発表
Q.どんな研究成果を発表しましたか?
モロコシソウのイエシロアリに対する摂食阻害物質の探索で、新しいシロアリのアッセイ方法とモロコシソウの効果についてポスター発表しました。
Q.学会の雰囲気を教えてください。
日本応用動物昆虫学会は、スーツや白衣で発表というわけではなく、特に学生はラフな格好で発表に望むことの出来る空間でした。
Q.発表はうまくいきましたか?
ガチガチに緊張しましたが、発表の内容に対し色々指摘してもらえた事から、自分が伝えたかった内容は、理解してもらえたと考えています。

卒論中間発表インタビュー(男子学生)

Q.卒論のテーマについて教えてください。
ミトコンドリア内膜に局在するタンパク質の機能解析に役立つ有機化合物の合成開発を行っています。生物活性を示すと期待される構造をデザインして、実際にそれを合成します。うまく進行しない反応も多いのですが、そんな時は背景にある反応機構を勉強して、条件検討に活かします。
Q.卒論中間発表とはなんですか?
卒業論文を書き始める前に、実験の途中経過を教員や学生の前で報告し、質問や意見をもらう場です。10分ほどの内容にまとめて口頭で発表を行った後、5分ほどの質疑応答があります。
Q.中間発表をおこなっての感想や、中間発表により得たものを教えてください。
先生や大学院生からの意外な質問にとまどうこともありました。しかしそれは新しい視点を与えてもらったということで、とても貴重な経験でした。また、資料作成に関するヒントを得られました。自分では「これでよし!」と作った図表でも、第三者が見ると分かりにくい場合があるとわかりました。やはり多くの人に見てもらうのが大切だと思います。

卒業論文のテーマについてインタビュー(女子学生)

ナシグンバイ 慌てて動き出す様子が可愛らしく
Q.卒論のテーマについて教えてください。
ナシ・リンゴの葉に寄生するナシグンバイを研究対象にしています。サクラの葉にも寄生するので、大学構内で簡単に採集できます。ナシグンバイはカメムシの仲間ですが、あの嫌な臭いはしません。その代わり特徴的な匂いを出しているようで、それがフェロモンの役割を果たしているかどうかを調べています。
Q.実験は楽しいですか?
毎日、いろいろな発見があります。普段、葉っぱの上でほとんど動かないグンバイ虫が、試験用に調製した匂い(虫の分泌成分)に反応して慌てて動き出す様子が可愛らしくて観察するのがとても楽しいです。
Q.研究を進める上で工夫している点を教えてください。
出来るだけ元気な虫で実験することです。虫は言葉を話せないので、じっくりと行動を観察することで、虫の気持ちを理解しようと頑張っています。そのために疲れていたり弱っていたりする虫よりも、捕まえたばかりの元気いっぱいの虫を使って実験をしています。

学生から先生へのインタビュー

反応いかねえなう
Q.研究は楽しいですか?
もちろん、楽しいから続けられるわけですが、それは単に「ラクチン」ということではありません。例えば48時間連続して観察を行わねばならない実験もあります。有機合成ではきれいに反応が進行することの方が珍しいくらいです。研究対象の生物を確保できないこともあります。傍からみると「苦行」とすら思われることがあるかもしれません。けれども、そのように思い通りには進まないことこそが「楽しい」のです。さらにあれこれと考えたり、次の実験を計画したりできるからです。仲間との議論や息抜きもかけがえのない時間です。

卒業研究の一例

  • カナブンの行動観察と体表物質の分析
  • ボウランによるリュウキュウツヤハナムグリのオスの誘引物質
  • モロコシソウに含まれるイエシロアリに対する摂食阻害物質の構造決定
  • クロコガネのアントラニル酸に対する行動反応
  • 各地域イネヨトウのフェロモン成分および成分比の特定
  • 節足動物由来の生理活性物質を用いた殺ダニ活性の評価
  • ササガワダニの脂肪族ギ酸エステル合成酵素
  • ワラジムシの外側板から分泌されるキノリン型アルカロイドの同定
  • サトウダニが生産する不飽和炭化水素(Z,Z)-6,9-heptadecadieneの生合成機構
  • トゲナシシロトビムシ由来のフェロモン機能を有するアルカロイドの生合成研究