京都学園大学

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Departmentバイオサイエンス学科

植物バイオテクノロジー研究室(生物機能開発コース)

更新日:2017年10月17日(火)
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不可能に挑戦するプロジェクトをスタートさせた植物バイオテクノロジー研究室。なんとターゲットは秋の味覚・マツタケ!遺伝子組換え技術やバイオ技術を駆使し、マツタケの人工増殖に挑戦。今後の研究成果いかんで、亀岡の里山にマツタケが繁殖し、マツタケ狩りが実現する!?
植物エネルギーを社会貢献に役立てる
植物は、私たちが気づいていない多くの能力を秘めています。そんな植物の潜在的な能力を発見し、さらに産業利用に繋げることによる、より豊かな社会や生活の実現が期待されています。その範囲は、農業に留まらず、健康・医療、環境・資源・エネルギーなど、様々な分野に及びます。こうした期待に応えるべき、植物バイオテクノロジー研究室は植物の遺伝子やタンパク質の働きを解き明かしながら、遺伝的改良による新植物の開発に取り組んでいます。
教員紹介

髙瀨 尚文

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Rafael Prieto

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生命の設計図であるDNAを解析して植物に秘められた才能を引き出す
植物を人の暮らしに役立てる方法といえば、まず思い浮かぶのが食料としての利用です。そのため、大学で植物を研究するというと、食糧生産としての農業分野に特化したことをすると思われてしまうかもしれません。
しかし、実際のところ、医学・工学・環境分野といった様々な分野で植物は研究対象となっているのです。農業分野だけを見てみても、環境と調和した食料生産や機能性を高めた農産物の開発が研究課題になっています。地球外の惑星への移住や宇宙ステーションでの長期滞在を夢想してみると、宇宙空間での植物による食料生産は、重要な研究課題ではないでしょうか。植物研究は、私たちの生活を多方面から支えると同時に、広がりのある分野なのです。
とはいえ、今の社会において植物がもつパワーを100%利用できているのでしょうか?私たちは、そうは思っていません。そこで植物バイオテクノロジー研究室では、生命の設計図であるDNAに着目し、植物に眠る知られざる才能を発見しようとしています。植物の潜在能力を100%引き出し、そのパワーを200%にも300%にも引き上げることを視野に入れて、産業を通じて暮らしに役立てる方法を探っています。
大豆の根には化学工場がある?自分で養分をつくる植物の力
植物に与える肥料の成分で、欠かせないもののひとつがチッ素です。大気中のチッ素ガスは、そのままの状態だと植物は利用できません。そのため、500℃以上、200気圧の環境で鉄を触媒にして、チッ素ガスを水と反応させる「ハーバー・ボッシュ法」によって、チッ素ガスを植物が栄養素として利用できるアンモニアを合成し、化学肥料として作物に与えています。
ハーバー・ボッシュ法でつくられた化成肥料は、植物による食料生産力を飛躍的に高めました。しかし、高温・高圧の環境を人工的につくりだすためには大量のエネルギーを投入しなければなりません。つまり、化学肥料の発明によって農産物は「自然の恵み」から「エネルギーの賜物」へと変貌を遂げてしまったのです。
ところが、植物のなかには常温・常圧でチッ素ガスからアンモニアを合成できる植物がいます。その代表選手が大豆。「根粒」といわれる根に付いたつぶつぶの部分において、生体触媒である酵素の働きによってチッ素からアンモニアを合成しています。
この根粒がずっと働いてくれればたくさんの大豆が獲れるのですが、花が咲いて実が大きくなり始めると、根粒は老化してしまいます。植物バイオテクノロジー研究室では根粒の老化の原因を突き止めるため、成長段階ごとに根粒のタンパク質を分析し、タンパク質を分解する酵素「プロテアーゼ」を発見しました。この酵素は実が大きくなろうとするときに突然出現するため、根粒の老化に関係があるのではないかと睨んでいます。
今は、このプロテアーゼをつくる元となるDNAを探している段階。それが見つかれば、遺伝子組換え技術を使ってタンパク質分解酵素の働きを抑制し、根粒が老化しにくく収量の多い新品種を生み出せると考えています。
農産物を「エネルギーの賜物」から「自然の恵み」に戻せることを目指しながら、研究を進めていきます。
植物から抽出した糖で車が走る!捨ててしまう茎や葉の利用方法
エネルギー問題を解決する植物資源の開発にも取り組んでいます。「バイオエタノール」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ガソリンや軽油に代わる新たな燃料として、ブラジルではすでに実用化されており、アメリカをはじめとする各国でも開発が進んでいます。
バイオエタノールは、植物から糖を取り出し、その糖を微生物で発酵させることによってつくられます。ブラジルはサトウキビの産地なので、サトウキビから取った糖をそのまま利用。アメリカでは、トウモロコシの穀粒からまずはでんぷんを取り出し、それを糖に分解してから発酵させています。
そして現在、世界中で研究が進められているのが、収穫した後に残った葉や茎の細胞壁から糖を抽出するという方法です。植物を分解する微生物の酵素を使えば可能ですが、酵素の生産コストがかかりすぎるため実用化されていないのが現状です。
植物バイオテクノロジー研究室では、細胞壁から糖を取り出す微生物の働きを、植物自体に持たせられないかと考えています。細胞壁を分解して糖を生成する「糖化酵素」をもった微生物の遺伝子を、植物にもたせることができれば、葉と茎をすりつぶすだけで糖を取り出せるようになるのです。
既に、遺伝子組換え操作がしやすい植物であるタバコを使って、葉緑体のなかで細胞壁糖化酵素のひとつを生産できる植物をつくることに成功しています。研究が進めば、ガソリンや軽油の代わりに、植物細胞壁からつくったバイオ燃料で車が走るようになり、石油製品に代わるバイオ化成品製造の道も拓かれます。近い将来、有限な化石資源から脱却し、再生可能な植物資源の時代へと移行することができるかもしれません。
植物が秘める生命の設計図を発掘!植物界の遺伝子ハンターになる
植物バイオテクノロジー研究室ではまた、遺伝子と生命現象との新しい関わりを探るために、遺伝子が壊れて環境ストレスへの適応、チッ素代謝、植物ホルモンの作用などが変わってしまった植物(遺伝子破壊株)の性質にも着目しています。
植物が持つ遺伝子の数は、およそ2万数千個。しかし、働きが解明されている遺伝子はその一部にすぎず、そうした遺伝子でさえ詳しく調べてみると予想もしなかった役割が発見されることもあります。
「オーキシン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?光や重力といった環境刺激に反応を示し、初期発生から細胞の分裂・伸長・分化、形態形成などに働く重要な植物ホルモンです。オーキシンの作用をより深く理解するために、オーキシンに敏感になった遺伝子破壊株や、逆に鈍感になった遺伝子破壊株の取得とその原因遺伝子の単離と解析、さらにはオーキシンの輸送やシグナル伝達に関与する遺伝子の解析を行っています。
また、さまざまな性質をもつ遺伝子破壊株を分析することで、植物がもつ解毒作用を解明することもできるかもしれません。農業で用いられる除草剤などの薬剤に対して、その作用を受けやすい遺伝子破壊株や、反対に作用を受けにくい遺伝子破壊株も探しています。そこから解毒に関わる遺伝子を発見すれば、除草剤を撒いても枯れない新種の農作物を開発することができます。
除草剤だけでなく、生物に対する毒性をもった重金属に対して、極微量の濃度でも生育不全を示したり、反対に耐性能が高かったりする遺伝子破壊株を解析し、解毒作用をもつ遺伝子のみを取り出すことができれば、重金属で汚染された土壌を浄化できる植物もつくりだせるのです。そこで現在は、生体内の酸化還元状態の維持、薬剤や除草剤などの生体異物の解毒、重金属防御などに重要な役割を担って3つのアミノ酸からなる「グルタチオン」の調節機構に関与する遺伝子の解析を行っています。
このように、遺伝子破壊株を通して植物DNAに秘められた生命の設計図を発掘・利用し、社会が求める新植物を開発することも、植物バイオテクノロジー研究室のミッションのひとつです。
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研究内容

丹波黒大豆に関する研究

丹波黒大豆に関する研究
大学の研究用農場におけるサンプリング風景(上段左)、採取した植物体(上段中央)、
根に着生した根粒(上段右)、花(下段左)、エダマメ(下段中央)、黒豆(下段右)

極大粒な外観と品質・食味が良い煮豆の食材として有名な丹波黒大豆。その安定的多収が実現すれば、丹波黒大豆の多様な加工用途が可能となり、私たちの食文化もより豊かなものになります。丹波黒大豆の安定的多収の実現には、根粒を生かした栽培管理技術の開発が必要です。私たちは根粒の健康寿命を延ばすことによる丹波黒大豆の増収を計画し、丹波黒大豆根粒の老化に関わる遺伝子やタンパク質の解明に取り組んでいます。

丹波黒大豆は黒豆だけではなく、エダマメは地域特産品としても大人気です。しかし、極晩生品種である丹波黒大豆のエダマメ最盛期は10月中旬。しかも旬が短く、楽しめるのもわずかな期間。エダマメが夏に収穫できる丹波黒大豆の早生品種育成は、消費者と生産者に共通の願いなのです。丹波黒大豆の早生品種の育成を目指し、丹波黒大豆の極晩生形質や早生大豆の早生形質を規定する遺伝子の解明に取り組んでいます。

バイオ原料植物の開発

バイオ原料植物の開発
バイオ原料植物の開発

有限な化石資源に依存する産業構造のもとで生活する人類にとって、資源枯渇の問題は避けては通れない課題の1つでしょう。代替資源として植物バイオマスに注目が集まる理由は色々ありますが、植物バイオマスは「再生産可能な資源」である点に期待するところが大きいのではないでしょうか。植物バイオマスからのバイオ燃料やバイオ化成品の製造には、石油化学プロセスに替わる多くの要素技術の研究開発と、これら各要素技術を組合せて統合化するための研究開発が必要となります。私たちは、炭素循環型産業の実現を目指し、植物バイオマスの資源性を高めることを目的に、バイオ燃料やバイオ化成品の原材料に適した植物である「バイオ原料植物」を育成する要素技術の開発に取り組んでいます。

植物ホルモンオーキシンの作用機構

オーキシン
オーキシンを含む寒天培地と含まない寒天培地で1週間成長させた
シロイヌナズナの野生型とオーキシン高感受性変異株

天然オーキシンであるインドール酢酸は、植物における環境刺激に対する応答因子であり、また、内部因子として発生、形態形成や細胞の分裂・伸長・分化などに働く重要な植物ホルモンです。私たちは、野生型と比べると根の伸長がオーキシンによって強く抑制されるシロイヌナズナ株を分離して、その変異株の原因遺伝子の単離と解析を行うことによりオーキシン応答の解明に取り組んでいます。

植物におけるグルタチオンの調節機構

グルタチオン
1μM Cd2+を含む寒天培地と含まない寒天培地で1週間成長させた野生型とGSH合成変異株(A)。
液体クロマトグラフィーによるGSHとGSH代謝物の蓄積定量 (B)。

三つのアミノ酸(γ-GluCysGly)からなるグルタチオン( GSH) は、生体内の酸化還元状態の維持、薬剤・除草剤などの生体異物の解毒、重金属防御などに関与しています。本研究では、GSHの生合成、代謝、またはその調節機構に関与する遺伝子の単離と解析を行うことにより、環境ストレス耐性が向上した作物の開発を目指します。

卒業研究の一例

  • キシラーゼを生産する組換え植物の資源特性の評価
  • 生育ステージの進行に伴う根粒の性状変化に関する研究
  • 丹波黒大豆根粒の老化に関する研究
  • 丹波黒大豆の開花調節遺伝子に関する研究
  • 没食子酸を応用した選択的除草剤開発のための基礎研究
  • 葉緑体形質転換技術で作成したバイオ原料植物の評価
  • γ-グルタミルトランスフェラーゼによる生体物の解毒
  • 挿入変異法によるオーキシン高感受性シロイヌナズナ株の分離と機能解析-AXHS10遺
  • 伝子とオーキシン応答性遺伝子発現との関連について-
  • シロイヌナズナのγグルタミントランスフェラーゼ(GGT)遺伝子ファミリー機能解析
  • 挿入変更法による硝酸同化経路の調節に関与する変異株の分離と解析 Chr15遺伝子の単離と解析
  • 挿入変異法によるオーキシン高感受性シロイヌナズナ株の分離と解析-axhs10変異株の単離と解析-