京都学園大学

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Departmentバイオ環境デザイン学科

水環境研究室(環境再生コース)

更新日:2017年10月16日(月)
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廃水が湖に流れ込むことで起こる富栄養化。このため、水中のプランクトンが増えてアオコや赤潮の原因に…。そこで正義の細菌「アナモックス菌」が登場!廃水に含まれている窒素を分解して水中から除去。鳥や魚など湖の生態系を守る!
水質浄化の仕組みを分析・改善
安全な飲み水の確保や良好な河川・海域環境の再生・保全について研究しています。家庭や工場からの出た廃水の処理方法、水中に生存する微生物による河川や湖の水質浄化作用の解明と促進など、さまざまな角度からのアプローチで、環境への負荷をかけず、よりよい水環境を実現するための方法を考えます。
教員紹介

高澤(笠松)伸江

コメントなし

金川 貴博

コメントなし
Pick UP!
単純なのに難しい。最先端科学でもわからないことだらけの微生物集団
「微生物の一匹ずつを見てみると、非常に単純な生き物です。しかし、そんな単純な生き物たちが集団になったとたんに複雑になり、最先端の技術をもってしても種類や働きを正確に調べることができなくなるといったら、信じられるでしょうか?
微生物の代表格である細菌や古細菌のサイズは、1/1000mmほど。顕微鏡で覗いても小さな点にしか見えないので、見た目から特徴を捉えるのは困難です。そのうえ、遺伝子の多様性は動物や植物よりもはるかに豊富。解析方法はいくつか開発されていますが、どの方法を使ってもデータに偏りが出てしまうため、解析結果がどれくらい真実に近いのかはわかりません。
つまり、微生物の集団はブラックボックスのようなものなのです。しかし、私たちはそのよくわからないものを生活のあちこちで利用しています。
排水処理の現場に欠かせない活性汚泥はどうやってつくられた?
微生物の利用というと味噌や納豆などの発酵食品を思い浮かべるかもしれませんが、最も利用の件数が多いのは廃水処理です。下水処理場はもちろん、業種を問わずほとんどの工場において、廃水処理には微生物の集団である「活性汚泥」が使われています。
廃水に含まれる有機物は、微生物にとっての餌。活性汚泥のなかの多種多様な微生物が有機物をバラバラに分解し、さらに二酸化炭素や水といった無害な物質に変化させることで、水がキレイになっていきます。
活性汚泥は使っているうちに増えていくため、別の場所で必要になったとしても新しくつくる必要はありません。廃水処理に適した微生物集団がどのようにしてできるのか、そのメカニズムはだいたいわかっていますが、その過程が実証的に研究されたことはありませんでした。そこで、水環境研究室では活性汚泥を実験室でつくる方法を開発しています。
2週間で劇的に変化していく、水槽のなかの生態系
さまざまな試行の結果、活性汚泥は実験室でごく簡単につくれるということがわかりました。
川から汲んできた水に、グルコースとペプトンでつくった人工下水を入れ、空気を送り込んでいれば、勝手に微生物が増えていきます。最初のうちは細菌ばかりですが、やがて細菌を食べる大きな微生物(原生生物や微小な動物)が登場。生態系が劇的に変化していくにつれ、濁っていた水がどんどん澄んでいき、下水処理場の活性汚泥と同じような微生物集団が出来上がっていきます。
観察していると非常におもしろいのですが、微生物相(集団に含まれている微生物の種類)がどのように変化したのかを解明するのは至難の技。今後は外部の研究機関とも連携しながら、遺伝子の解析を通じて微生物相の解明に取り組む予定です。
美肌の菌相を解析してバイオ化粧品の開発を目指す
人間の体に住んでいる微生物たちについても、未だにわかっていないことばかりです。しかし、活性汚泥に用いてきた技術を応用することによって解析できそうな部分もあるため、化粧品メーカーからの依頼を受けて皮膚の常在菌の研究にも取り組んでいます。
きめ細かく美しい肌の表面の微生物相は、どのようなものなのか。それがわかれば、微生物の働きを利用した新しい化粧品が生まれるかもしれません。
これからの豊かな暮らしは微生物との付き合い方にかかっているかも
水環境研究室で学んだ学生は、主に水処理関係などの環境に関わる企業に就職しています。そういった仕事につながる専門知識を習得することはもちろんですが、微生物集団の研究を通して一番学んでもらいたいのは、人間の力には限界があるということ。
自然のなかには、微生物をはじめとして多種類の生物が働くすばらしい循環システムがあって、私たちが快適に暮らせる環境をつくり上げていますが、その仕組みのわずかしか解明できていません。そのため、一度壊してしまったら私たちがそれを再現することはできないのです。
循環システムの一部が壊れると、私たちは環境保全を人工的に行わないといけなくなって、たくさんの資源とエネルギーを投入することになります。そうしたことを防ぐために、今後は、すでにある良好な環境を尊重し、生物の力をうまく利用する知恵を習得して、豊かな生活を実現していくという考え方がますます重要になってくると思います。

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研究内容

水資源という視点から見た流域環境に関する研究

るり渓上流の川の調査
るり渓上流の川の調査
亀岡のため池の調査
亀岡のため池の調査
七谷川の沈水植物の調査
七谷川の沈水植物の調査

関西圏、主に琵琶湖・淀川水系から大阪湾を対象として、様々な水域でのフィールドワーク主体の研究を行っています。河川では、るり渓、大学周辺の曽我谷川や犬飼川など、湖沼では、通天湖(るり渓上流)などのダム湖、大学周辺のため池、琵琶湖など、海域では大阪湾や久美浜湾などで調査を行ってきました。それぞれの水域において、人間活動がその水域に及ぼしている影響や、水質と生物の関わり、物質循環について研究テーマを設定し、調査を行っています。自分の生まれ育った地域の水環境に強い関心を持ち、卒業研究の調査地として地元の河川や湖沼を選択する学生が多いことも特徴の一つとなっています。

環境浄化技術に関する研究

アナモックス実験装置

琵琶湖や大阪湾のアオコや赤潮の発生防止のためには、家庭下水や工場廃水からの窒素とリンの除去が必要です。下水や廃水中の窒素成分の除去には、窒素成分を微生物の力で窒素ガスに変換して空気中へ飛ばす方法が現在最も多く用いられています。窒素ガスへ変換する新しい方法として、アナモックス菌(アンモニアと亜硝酸から窒素ガスを作り出す微生物)を利用した方法が開発されました。アナモックス菌を使うと、これまでの方法(硝化脱窒法)よりも少ないエネルギーで窒素成分を除去することができます。アナモックス菌を利用して、効率の良く窒素を除去する技術を確立するために、小型の実験装置を作って研究を行っています。

この他にも、微生物を利用した廃水処理の基礎的な研究を行っています。

DNAを利用した生物の同定

研究室で運転しているアナモックス法の装置内での亜硝酸菌とアナモックス菌の存在を確認するために、蛍光色素付きのDNAを使って、亜硝酸菌が緑、アナモックス菌が赤に光るようにしました。FISH法という方法です。下の3枚の顕微鏡写真は同一の視野で、真ん中が普通の顕微鏡像、左が亜硝酸菌からの光、右がアナモックス菌からの光を撮影したものです。アナモックス菌は塊になって1箇所にかたまっていますが亜硝酸菌は全体に広がっていることがわかりました。

また、生物体からDNAを抽出し、DNAの塩基配列を調べて、生物の種類を同定する方法を、アナモックス装置内の微生物に適用してアナモックス菌の種類を調べたり、二枚貝に適用して固有種かどうかを調べたり、国内の道路わきに自生した遺伝子組換えナタネに適用して、野生種との交雑体かどうかを調べたりしています。

卒業研究の一例

  • 活性汚泥を実験室で作る
  • アナモックス反応を利用した廃水処理
  • 顔の皮膚に存在するブドウ球菌のFISH法による検出
  • 輸入ナタネの輸送道路脇に生育したナタネの検査
  • 琵琶湖に生息するタテボシガイの分子系統 ミトコンドリアDNAの解析
  • 琵琶湖に生息するタテボシガイの分子系統 ミトコンドリアDNAの解析
  • 琵琶湖に生息するタテボシガイの分子系統 細胞核DNAの解析
  • 犬飼川の水質に関する研究
  • 曽我谷川の水質調査
  • 大和川水系 初瀬川の水質について
  • 飛鳥川の汚染原因と現状について
  • 琵琶湖疏水の水質とプランクトンの現状
  • 兵庫県武庫川におけるマイクロプラスチックの動態について