京都学園大学

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Department心理学科

広がる対人援助:どんな仕事があるの?

更新日:2015年9月3日(木)
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広がる対人援助:どんな仕事があるの?

自分の進路を考えよう!——「人を援助する」仕事にはどんなのがあるの?

京都学園大学の心理学科では、心の悩みや生活の困難を抱えた人たちに寄り添い支援を行う、広い意味での「対人援助職」につくことのできる人材を育てています。

心理学科を卒業して開ける進路は、大学院修士課程で臨床心理学専攻(コース)を修了し資格試験に合格して付与される「臨床心理士」が代表的です。本学大学院人間文化研究科臨床心理学コースは公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会の第1種指定大学院であり、このコースを修了すれば同協会の臨床心理士資格試験の受験資格が得られます。

じつはそれ以外にも、心理学科での学びはさまざまな「対人援助」の仕事で生かすことができます。こうした「対人援助」の仕事についてみてみましょう。

1.「対人援助」の仕事にはどんなものがありますか?

日常生活や社会生活のなかで、私たちはみんな助け合いながら生きています。その意味でどんな仕事も「人を援助する」活動にちがいありません。

一方、狭い意味での「対人援助」は「援助の必要な人を援助する」仕事です。こんにちさまざまな分野で行われているボランティアも対人援助ですね。そして、これを業務(仕事)として行う職種には、より直接的に援助する仕事と、より間接的に援助する仕事があります。これらを分野ごとにみてみましょう。

「対人援助」の仕事

A. 人を援助する職種(より直接的な援助)
  • ◎医療・保健:医師、歯科医師、看護師、助産師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、
    救急救命士、ソーシャルワーカー、心理士、歯科衛生士、視能訓練士、カイロプラクター、
    柔道整復師、はり師・きゅう師、あんまマッサージ指圧師など
  • ◎教育:教員、学童保育指導員、カウンセラーなど
  • ◎福祉:保育士、児童指導員、心理士、介護士、ホームヘルパー、手話通訳者、ソーシャルワーカー、
    相談員など
  • ◎その他:裁判官、弁護士、検察官、警察官、消防士など
B. 人を援助する職種(より間接的な援助)
  • ◎薬剤師、臨床検査技師、診療放射線技師、歯科技工士、臨床工学技士、栄養士、調理師、
    義肢装具士、学校事務員など
  • ◎その他

2.教育・福祉分野の対人援助職
——保育士、幼稚園・小中高校、特別支援学校の教諭・養護教諭

この項から、対人援助職のいくつかをピックアップして紹介します。
上のように、教員や保育士は直接の対人援助の仕事です。幼児や児童・生徒を支援する仕事の資格には以下のようなものがあります。

(1)保育士

4年制大学や短大の保育士養成課程を卒業するか、もしくは保育士試験(国家試験)に合格すれば取得できます。保育園やその他の福祉関係の職場に採用されます。

(2)幼稚園・小中高、特別支援学校の教諭

短大や4年制大学で教職課程の単位を取得するか、教員資格認定試験に合格した上で、都道府県等や民間の教員採用試験に合格すれば資格取得できます。

(3)養護教諭

4年制大学で養護教員養成課程の単位を取得するか、もしくは看護師・保健師資格を得た上で、都道府県等養護教員採用試験に合格すれば資格取得できます。

3.福祉・医療分野の対人援助職
——社会福祉士、精神保健福祉士

社会福祉士と精神保健福祉士は国家試験合格によって取得できる資格です。大学の社会福祉学科や専門学校で必要単位を取得したのち、国家試験を受験します。

(1)社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格が必要な仕事
  • 精神保健福祉相談員:保健所(精神保健福祉士)や精神保健福祉センター(公立機関)など
  • 病院などのソーシャルワーカー:社会福祉士ないし精神保健福祉士(民間・公立)
(2)社会福祉士もしくは精神保健福祉士の資格があれば就職に有利になる仕事
  • 児童福祉司:社会福祉士(児童相談所)
  • ソーシャルワーク業務(民間・公立)

4.臨床心理士

臨床心理士は、公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会の資格試験の受験により取得できる資格です。この試験の受験資格を得るためには、同協会が指定する大学院の臨床心理学専攻ないしコースの修士課程(2年間)を修了する必要があります。

大学の心理学科・臨床心理学科に在席してもその大学に指定大学院がない場合、指定を受けている他大学大学院に進学して受験資格を得ることも可能です。

臨床心理士は民間団体の資格ですが、カウンセラーなどの仕事につく上で有力な資格です。近年、国会で「公認心理師」という国家資格を設ける法案が審議中ですが、詳細は未定です。

※公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会のホームページをご覧ください。

5.資格取得と対人援助職場への就職

対人援助にかかわる免許(資格)が必要な職種は、その資格や資格試験受験資格がとれる学校、試験に受かるための勉強が実質的にできる学校へ進学することが一般的です(独学でも受験可の職種もあります)。希望する対人援助職につくためには、こうした資格をとると同時に、その仕事ができる職場に採用される必要があります。

一方で、資格取得の必要がなく、対人援助業務につくことのできる職場に就職できる仕事もあります。こうした職場は大きく分けて、民間(私立)と公立(公務員)とがあります。

(1)民間(私立)の職場

民間(私立)の対人援助職の職場には、医療機関、相談機関、私立学校、社会福祉施設(児童・障害者・高齢者・その他)、NPO(Not-for-Profit Organization 非営利団体)などがあります。これらの職場には、学部卒・大学院卒などの学歴に加え、必要とされる免許・資格を取得した上で就職活動を行い、専門職として採用される場合と、免許・資格が必要なくその職場への就職活動により採用されれば専門職につける場合があります。

免許・資格を得た上での採用試験は、いずれも大学4年生、ないし大学院修士2年生の春以降に選考が行われます。

(2)国家公務員と地方公務員(都道府県・市町村)

公務員には国家公務員と地方公務員とがあり、それぞれ一般教養と専門の試験、および面接などを含む公務員試験に合格した上で採用されます。4年制大学以上を卒業した人を対象とする試験は「上級職」試験と呼ばれます。

一般に公務員と呼ばれるのは「一般行政職」で、これは特定の分野ではなく、行政のさまざまな分野で事務業務を行う総合職です。どの部門につくかは採用後、辞令によって配属が決まります。これとは別に、「専門職」の公務員があります。専門職の公務員は一般行政職と比べ採用数はぐっと少なくなりますが、さまざまな職種があります。

また、警察官や消防士などは地方公務員で独自の枠で試験・採用が行われています。公立学校の教員や学校事務員も教育公務員です。

(3)国家公務員の対人援助職の例

国家公務員の対人援助職の例をいくつかみてみましょう。

  1. 矯正心理専門職(法務技官)、法務教官、保護観察官
    法務省専門職員試験(人間科学)によりつける仕事です。少年鑑別所、少年院、拘置所、刑務所や、保護観察所、地方更生保護委員会などの職場があります。
  2. 家庭裁判所調査官(補)
    国家総合職試験(人間科学区分)によりつける仕事です。家庭裁判所(家事部・少年部)に採用されます。
(4)地方公務員の対人援助職の例

次に、地方公務員の対人援助職の例をいくつかみてみましょう。

  1. 一般行政職
    対人援助職場に異動になり実際の援助業務につく場合もありえます。
  2. 福祉職(専門職)
    福祉・医療分野のソーシャルワーカー、児童相談所の児童福祉司などがあります。
  3. 心理職(専門職)
    児童相談所、知的障害者更生相談所、保健センター、病院、その他の職場での心理職です。臨床心理士を求める職場もあります。

6.対人援助職場での仕事の例

(1)児童福祉施設で働く

児童虐待など、何らかの理由で家庭では生活できない子どもたちのために児童養護施設があります。児童養護施設で働いている人の職種は、保育士(国家資格)、児童指導員、心理士(臨床心理士など)などですが、児童指導員になるための資格は、今の時点では厳格には設定されていません。

児童福祉施設には、この児童養護施設の他に、乳児院、情緒障害児短期治療施設、児童自立支援施設、母子生活支援施設、障害児支援施設、その他があり、上記の職種の人たちが働いています。

(2)障害者施設や高齢者施設で働く

知的障害者や重症心身障害者などのケアをする障害者支援施設では、入所者の基本的な生活支援や施設外での社会生活の支援、就労支援などを行います。

また、特別養護老人ホームなどでは、自力での生活が困難なお年寄りの介護や生活支援を行ったり、デイケア(日帰りの支援)を行います。

これらの職場でケアワーカーとして働くには、特別な資格などは不要な場合が多いのですが、就職してから関連する資格を取得する人が多いようです(高齢者施設では介護福祉士など)。

(3)児童相談所で働く

都道府県、政令指定都市、中核市の一部では児童相談所を設置して、子育ての悩みや子どもたちに関する相談を受けています。児童相談所で働く人の職種には、児童福祉司、児童心理司、保育士、児童指導員、その他がありますが、まずは地方公務員試験に受からなければなりません。児童福祉司ほかについてはすでに述べましたが、児童心理司の場合は「心理学を主に勉強する学科を卒業した者」や「臨床心理士」が求められています。

なお、子どもに関する相談を行なうところには、児童相談所のほかにもいろいろな機関があります。

(4)スクールカウンセラーになる

みなさんにもおなじみのスクールカウンセラーは、ほとんど臨床心理士の資格をもつ人が従事しています。スクールカウンセラーは自治体教育委員会との契約により公立学校に派遣されている非常勤職員です。

また、スクールカウンセラーと同様に教育委員会から派遣されているスクールソーシャルワーカーもいます。スクールカウンセラーが子どもや保護者の心の内面に向かうのに対して、スクールソーシャルワーカーは社会とのつながりに目を向け、両者が協力しながら援助活動を行っていきます。

7.対人援助職のひろがり

社会にはさまざまな援助を必要としている人たちがいます。近年、次のような分野にも支援の仕事が拡がっています。

子育て支援、発達障害者支援、種々の障害者の在宅支援、犯罪被害者支援、労働者支援ほか。

なお、ここまでは正規採用職員を中心に紹介してきましたが、契約職員や非常勤職員など正職員ではない雇用形態も多くとられています。一般に非正職員は、一定の期間で契約を結び、週40時間以下の労働時間で働く職務形態をとるものが多くみられます。

8.おわりに
——人を助ける仕事をしたいと思う自分自身を見つめなしてみよう

対人援助職の仕事と、その仕事につくための道筋を、限定的ではありますが述べました。

どのような仕事でもそうですが、人を援助することはじっさいにそれほど易しい仕事ではなく、自分自身を見つめなおすことがしょっちゅう求められます。

  • *人に「優しい人」だと見られたかったり、自分に満足したかったり、結局は自分のためなの?
  • *それってあなたの考えの押しつけじゃないの? 私のことを考えてよ。あなたはそんなふうにできるかもしれないけどさ。
  • *そんなにあなたは偉いのかな。私はそんなにダメなのかな。あなたは違うって言うけど、あなたのしてくれる助言を聴いてると、そう感じるよ。
  • *助けてほしいのはこっちだよ。あたしがちょっと投げやりなことを言っただけで、あなた、そんなに困った顔をして、大丈夫? 人の悩みを聴けるの?

……人を援助するってそんなに易しいことじゃありません。でも、相手の人生に対して謙虚に真摯に向き合っている姿は、輝いているかもしれません。

対人援助職につくにはさまざまな専門知識や技術、そして免許や資格が求められています。しかし知識や資格がそれ自体で相手を援助してくれるわけではなく、そこでは援助する人自身の「中身」そのものが問われるのです。援助は、援助される人にとって助けとなってはじめて「援助」になるのです。

みなさんは、大学という新しい学びの環境に入ってこられます。そこやそこ以外での新しいいろんな活動や人間関係をとおして、さまざまに異なった立場や考え方にふれ、人生経験を豊かに積み上げていってください。とくに対人援助職をめざす人には、そのことを期待しています。

京都学園大学心理学科「高校生のための臨床心理学セミナー」より
2014年8月2日 於:京都学園大学悠心館Y22教室
講師:京都学園大学心理学科教授 川畑 隆

川畑 隆 教授(発達臨床心理学)
専門は児童福祉や教育分野等における対人援助。担当科目は「発達臨床心理学」「心理アセスメント」など。同志社大学大学院博士前期課程修了、文学修士。28年間の京都府児童相談所勤務をへて現職。臨床心理士。
川畑 隆 教授