京都学園大学

京都学園大学

Newsお知らせ

公開講演会「日本経済の現状と課題」が開催される

更新日:2018年12月7日(金)
このエントリーをはてなブックマークに追加

 1110日(土)に、本学太秦キャンパスのN402教室にて、「白書で学ぶ現代日本」の公開講演会が開催された。

 まず、第1部の基調講演では内閣府参事官補佐の室伏陽貴氏による、『平成30年版経済財政白書』の解説を中心とした「日本経済の現状と課題」についての解説が行われた。

 

 

 

 第1章「景気回復の現状と課題」関する解説では、201211月から現在まで日本経済は穏やかながらも長期のプラス成長を実現してきていることが強調された。また、同期間での実質GDP成長率の要因分解では、設備投資が05%ポイントと最大であり、純輸出や公需が0.3%ポイントで続き、消費が消費税引き上げの影響があったにも関わらず0.2%ポイントとプラス値を示したことが説明された。地域別の景気状況についても、公共投資の効果に加えてインバウンド消費の増加の寄与もあり、すべての地域で業況判断や有効求人倍率は改善の傾向を示していることが確認された。さらに、長期的な景気変動要因として、人口高齢化に伴う消費変化や労働力不足の影響、あるいは日銀や海外の中央銀行の金融政策スタンスの変更などに注視していくことが大切である旨が説明された。

 第2章の「人生100年時代の人材と働き方」では、日本の労働市場は人材不足への対応に加えて、IoTAIなどを活かした新技術への対応としても、働き方の見直しが迫られており、生産性の向上とワーク・ライフ・バランスの実現を促進し、男女ともに年齢によらず社会で活躍し、自分に合った仕事を長く続けて行くことを可能にする多様な働き方を実現していくことの必要性が強調された。そして、今後の需要が見込まれる高いスキルを有する人材を育成するためには、大学等での教育内容や経営の見直し、より効果的な企業内訓練の実施など、労働者の学び直しを可能にする環境整備が求められることが指摘された。さらには、女性や高齢者の労働参加を促し、生産性を向上させるための多様な働き方の実現に向けた課題にも言及された。

 第3章の「Society5.0に向けた行動変化」の解説では、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットなどの技術的発展と活用が急速に進展している第4次産業革命のイノベーションを、あらゆる産業や社会生活に取り入れることで、様々な社会的課題の解決を可能にする「Society5.0」の実現に向けて必要な社会的変化とそれに伴う課題が整理された。特に、日本が国際競争力とイノベーションの優位性を保つために必要な、知識・人的資本・技術力などの「イノベーション基礎力」と、組織の柔軟性や起業家精神などの「イノベーションへの適合力」の2つの視点からの分析を踏まえた、国際比較に基づく日本の強みと弱みが確認された。

 

 休憩時間を挟んだ後、第2部のパネル・ディスカッションでは、久下沼仁笥教授(公共経済学)の進行の下、基調講演をご担当頂いた室伏氏を含めた3人のパネリストの間で、平成30年度経済財政白書およびアベノミクスの有効性に関する討論が活発に行われた。

 

 まず、第1章の景気分析およびアベノミクスの評価では、本学の尾崎タイヨ名誉教授(計量経済学)からは、景気動向を左右する所得や消費の動きに焦点を当てた統計分析が提示された。特に、企業の売上高が伸びずに利益が拡大している背景にある費用削減の影響は、家計部門に集中する傾向にあり、非正規雇用だけでなく正規雇用にまで及んでいることが説明された。そして、家計の可処分所得が伸びずに労働分配率の低下が続いている現状を説明し、そこを刺激する政策への転換を図らない限りはアベノミクスによる消費の拡大、景気の回復は難しいことが指摘された。

 次に、第2章「人生100年時代の人材と働き方」に関係する議論では、本学の内山隆夫教授(経済政策論)から、人口高齢化、女性の社会進出、ICTの普及や経済のグローバル化など社会的背景の諸変化に適応できなくなった日本型雇用システムの限界が指摘され、労働者に人生のステージに応じた柔軟な働き方を可能にするための今後の労働市場の制度的整備として、「柔軟性」(flexibility)と「雇用・所得補償」(security)の両方の性質を備えた“flexicurity”の実現が必要であることが指摘された。そして、日本における労働力の確保と労働生産性の向上を両立させるための移行的労働市場として、「多方面双方向性型」の労働市場、すなわち多様な人材に多様な就業機会が開かれる一方で、労働者を取り巻く環境条件の変化への対応として労働者が働き方やスキルを柔軟に変化させることを可能にする労働政策の展開や雇用制度の確立が必要であることを強調して締め括られた。

 最後に、フロアから100枚以上出された質問票から取り上げられた外国人労働力の受入れや高齢者の学び直し等に関する質問に対して、3人のパネリストがそれぞれの専門領域の視点から簡潔かつ明瞭に回答し、名残惜しいまま閉会の時間となった。参加者のアンケート回答では、室伏氏の基調講演に対してはデータ分析に基づく分り易く説得力ある解説を称賛する意見が多数出された。また、後半のパネル・ディスカッションについても、アベノミクスに関する論点が整理でき有意義な時間を過ごせたことへの謝辞と合わせ、今後の講演会開催の継続を期待する温かい支持の声を頂いた。