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先生に聞いてみた【42】 Stephen Richmond(スティーブン・リッチモンド)准教授

更新日:2017年2月28日(火)
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京都学園大学でユニークな研究に携わる先生に突撃インタビューする「#聞いてみた」シリーズ。42回目は、第二言語の英語を、アドリブでかっこ良く話すことを授業目標とされているリッチモンド先生に、文化の違いを学び、相手に配慮した会話の大切さについていろいろ聞いてみました。

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文化の違う外国人だから面白い!
自然にかっこ良く話せて、相手を気持ちよくさせる英会話。

オーストラリア出身のリッチモンド先生は日本に来て約17年。
本学では、よりネイティブに近い自然な会話のやりとりができるようにと、
自作の教材を使った授業を行っています。

文化の違う国での接客や会話は、
言葉だけでなく“文脈”で気持ちを伝えることが大事。

Q:まずは、リッチモンド先生の専門分野を教えてください。

研究分野は、プラグマティックス(語用論)。あまり知られていないので、聞き慣れない言葉だと思いますが、言語学の一分野です。英語を使った挨拶や会話の中で、言葉の意味だけでなく文脈が影響しているという研究です。
2年前から、母校のメルボルン大学の博士課程をとるために“日本人がネイティブ英語の現場で接客する場合のやりとり”をテーマに研究しています。

Q:先生がそうした研究を始められたきっかけはありますか?

私はオーストラリア出身で、中学生の頃から日本語を勉強していました。日本はオーストラリアと経済的なつながりもありますし、将来の仕事に役立つだろうと思って。その頃はとくに日本語が好きだったという訳ではなかったんです。何度か日本へ留学しましたが、大学生の時から面白く感じるようになりました。それは、英語と日本語では、ふるまいが違うという点です。母国語以外の言語を勉強していると、そうした気づきがあります。暗記した英語で文を訳すと、不自然さが出てしまうんですね。受験では、正しい文法を覚えることが必要で、言葉の文化に合うようなふるまいが大事であるということは学校ではなかなか教わりませんが、第二言語を勉強していると、そうした気付きがあります。

文化の違いを知って、相手に配慮した会話を。
第二言語を学ぶことは自国の文化をみつめる機会になる。

Q:具体的にはどのような研究をされているのでしょうか?

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例えば、日本企業がオーストラリアに出店したファストファッションのお店があります。ここで評判を落としたのが、世界共通日本式接客でした。お客さんが店に入ると、ショップスタッフが大きな声で発する「Welcome to ○○○!」の嵐。これは現地のお客さんにとっては慣れないもので、プレッシャーや気持ち悪さを感じてしまったんですね。オーストラリアのお店のスタッフはお客さんに対して友達のように話しかけます。私は日本に来てから17年程経つので日本式に慣れてしまったせいか、逆に母国へ帰ってお店に入った時の店員さんのカジュアルな接客に違和感を感じてしまうほどです。そうした違いがある。一つのカルチャーショックのようなものです。
これはプラグマティックスの中でも、ポライトネスという言語的配慮に当たります。人が気持ちを伝える時に、どんな言葉で相手を気持ちよくさせるかがポイントになります。第二言語を使って、その国の人を相手にどう話せば気持ちよく伝わるかを考え、ヒントをつくる研究といえば分かりやすいでしょうか。来日外国人観光客が増加する中、日本は2020年のオリンピックに向けても、外国人が喜ぶ接客や会話をすることが大きな課題になると思います。

Q:学生がこれから英語を学ぶ上でも、文化の違いを知ることは大切ですね。

私は学生を海外へ連れて行く引率の仕事もしていますが、現地で困るのは、やはり会話のやりとり。コツを掴むのは本当に難しいんです。英語能力は大事ですが、完璧な英語を話しても伝わらないのには、文化の違いが影響しています。まず、文化の違いは当たり前にあるという意識を上げること。先ほどの接客の話のように、オーストラリアだけでなくアメリカでも「いらっしゃいまいせ」「かしこまりました」といった日本の決まった表現は冷たい感じに受け取られることが多いです。このように親近感をもって会話をするのはオーストラリアとアメリカの共通点ですが、アメリカは自慢話をするのに対してオーストラリア人は目立ちたがらない。そこは謙虚な日本人に似ているかもしれません。私はロンドンの大学にも留学経験がありますが、日本とイギリスは遠慮がちなところが似ているように思います。
第二言語を学ぶことは、自国の文化をみつめる機会にもなるでしょう。

授業の教材はテーマを絞った簡単なもの。
アドリブでかっこ良く話せるようになるのが目標。

Q:本学ではどんな授業を行っていますか?

現在は異文化コミュニケーションや現代オーストラリア事情などの科目も担当していますが、一般的な英語が多いですね。
先ほども挙げた、日本人の謙虚さや遠慮がちなところが出ているのですが、キャリアの初めての英語の授業で「Hi」と話しかけても学生からは返事がありません。これはネイティブ教員の先生方は皆さんショックを受けています。日本文化にないことを習得して自然に英語を話せるようになるには、繰り返し練習することが必要です。
そこで、授業では一つの文化をマスターして、自分の話をリアルタイムに話せるようになることを目標にしています。毎回テストを行って、先生との会話の中でどれだけ話せるかを評価します。
教材も私の自作です。自分が留学したり日本で暮らしたりしてきた中での経験をいかして10年前から教材づくりも手掛けているんです。一般的な英語教材はコンテンツが多過ぎて、一年目に学ぶ学生は圧倒されてしまいますから、テーマを絞り込んであります。お金の使い方、暇な週末の計画など、10のテーマについて、アドリブで話すことができるかどうかを毎回の目的にしています。
よりネイティブの会話に近く、英語らしい話ができるようになるために、3つのルールも作りました。
①質問に対して、7秒以上黙らないこと。これも文化の違いですが、英語では、沈黙は概ねよくない。分からなければ、そのことを聞く。聞き取れなかったら、もう一度言ってもらう。ネイティブ同士でもやることで、これを繰り返し練習することで自然に反応できるようになります。②は中級、質問の答えにはプラスαの情報を入れること。日本人はとくに目上の人に対して長く話さない風潮がありますが、海外でそれはやや冷たい印象になります。質問に対する答えは「Yes」「No」だけでなく、プラスαの情報を入れるのは義務のようなもの。そうすると相手が次の質問の題材ができて、やりとりがスムーズになります。 ③は上級、1年目に学ぶ英語授業の後半で実践するのは“かっこ良く話す”こと。よくあるQ&A形式は文法として覚えやすいのですが、実は普段の会話で使われるのは15~20%程度です。実際には「昨日こんなことがあった……」というような話から会話が始まり、相手がそのコメントに反応して会話になることが多い。それを日本語ではやっていても英語ではできなかったりするんです。自分からコメントする、質問禁止というように自分から発言する手法も進めます。

Q:最後に、これから大学で第二言語の英語、異文化を学ぶ学生の皆さんにメッセージをお願いします。

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大学は、今まで受けてきた英語教育とは違います。皆さんにとって英語を見直すチャンスになると思います。2020年にはオリンピックもありますし、日本人がどうやって英語を話すようになるかは注目されるでしょう。
英語を難しいと感じて嫌いになってしまう前にチャンスをつくることが大切。大学生のあいだに留学しておくのもとても良い経験になると思います。これまで教えた学生の中にはワーキングホリデーでオーストラリアへ行ったり、海外の大学院に進学したり、日本の会社に入って海外勤務になったりとさまざまですが、英語が好きになって海外に住んでいる学生もいます。
まずは、簡単な教材を使って、文化の壁や違いを考えながら教わっていくことで、少しずつ話せるようになりますよ。

ステファン・リッチモンド先生人文学部 心理学科

Stephen Richmond(スティーブン・リッチモンド)准教授

メルボルン大学文学部卒業。ロンドン大学SOAS大学院応用言語学修士課程修了。本学では経済学部嘱託講師、人間文化学部専任講師を経て、2013年4月より同准教授。高校・大学時代に日本への短期留学を経験し、日本で暮らすようになって約17年が経つ。研究や学生の引率以外でもオーストラリアやアメリカ、アジアの国々などを旅する。趣味は他に映画鑑賞、料理、バスケットボール観戦。

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