京都学園大学

京都学園大学

Newsお知らせ

先生に聞いてみた【67】君塚 洋一 教授

更新日:2017年9月11日(月)
このエントリーをはてなブックマークに追加

京都学園大学でユニークな研究に携わる先生に突撃インタビューする「#聞いてみた」シリーズ。67回目は、心理学科の君塚先生にご専門の「マス・コミュニケーション」について、いろいろ聞いてみました。

ひとはなぜメディアによって動くのか
こころをひらく「コミュニケーション」のしくみ

学生時代から「マス・コミュニケーション」を研究してきた君塚先生。メディア表現への関心を軸に、媒体社の研究機関でのマーケティング・リサーチなど豊かな実務経験を重ね、その研究をさらに深めてきた。メディア論、広告広報論などの講義や実践プロジェクトの指導を通して、学生たちと共に「コミュニケーション」のしくみを考え、メディアを使った課題解決に取り組んでいる。

ひとを動かす「広告」の不思議

Q: 先生のご専門分野についてお聞かせください。

大学院で私が専攻した「コミュニケーション学」は、言語学、記号学、心理学、社会学など、さまざまな学問を使って研究される学際的な分野です。そのなかで私が選んだテーマは、映像や印刷媒体などを使った「マス・コミュニケーション」でした。広告やアートなどの作品表現が不特定多数のひとに影響を与えるのはなぜか、メディア論や記号学を用いて研究していました。
とくに当時は「みんななぜそんなにモノを買うのだろう」というバブル景気の頃でした。経済成長をとげた社会では、モノやサービスは空腹や寒さをしのぐだけでなく、それ自体がたとえば「カッコいい自分」とか、タレントが見せるスタイルの「シンボル」として発信の役割をはたします。「広告」のようなメディアが、そんな価値観を共有するしくみとして力を発揮することに興味を覚えたのです。

Q: 広告はなぜ人を動かすことができるのでしょうか。

たとえば映画やテレビ、コミックは受け手が「見たい」と思って接するのに、広告を「見たい」と思う人はいません。それはむしろスポンサー側の都合で発信され、見たくても見られるとは限らない。送り手は、見たいどころか、むしろ邪魔もの扱いをしてくる相手を振り向かせる高度な技術を駆使し、気がつくと消費者は広告で見たブランドに好意を抱いている。
広告は、商品を「売りたい」という発信側の目的は明確なのに、「買ってください」とじかに言うことはまずありません。そのルーツをたどれば、かつて曲芸団やサーカスが各地を回って芸を見せながら、ついでにモノを売っていた。買い物する気などない大衆を惹きつけるのはその芸の部分です。バナナの叩き売りのように小気味いい話芸に聞き入るうちに、気がつくとモノの売り買いに引き込まれるしくみが、私たちの日常生活に入り込む広告にも受け継がれているのです。

Q: 大学院を修了して、どのようなお仕事をされていましたか。

作品表現への関心が高かったため、媒体社の研究機関に勤め、映画や演劇などエンターテインメント分野のマーケティング・リサーチ(市場調査)を手がけました。映画や音楽などの作品制作や公開を活発にするために、企業や行政が文化事業や文化施設づくりを行うプロジェクトでリサーチやプランニングを行っていました。

Q: 現在はどんな研究をなさっていますか。

国際日本文化研究センターが全日本CM放送連盟(ACC)と提携し1950年代から現代までのCMアーカイブ(作品ライブラリー)を作成し、私もメンバーの一人として過去のCM表現から送り手の意図や手法、その時代の人々の価値観や願望を読み取っていく研究をしてきました。
たとえばテレビ草創期の1950年代にはCMが「映像で商品の効能を実証できる広告」として期待され、台所用洗剤がいかに油汚れを分解するかなどを実写で示していました。今のようにタレントやキャラクターを立て、親近感とかブランド名の反射的な想起を促したり、商品によって実現する人生の幸福や世界観の魅力を情緒的な表現で訴えるブランド広告とは、組み立てがかなり異なりますから面白いですね。
広告のような販売促進のコミュニケーションや、今問題となっている「ステルス・マーケティング」のような消費者をかたってなされる商品の推奨活動に対して、私たちはその意図を的確に読み解き、対処していく必要があります。
かたや、私たちの生活を成り立たせている資本主義経済では、商品の成否は個々の生産者の努力にゆだねられ、メーカーはライバルより強く訴えてはじめて生き残ることができます。広告などの販促や推奨コミュニケーションを批判するなら、それに代わる商品情報の共有のしくみをつくるべきだというのが私の立場です。

Q: アートなどの作品表現についても研究されていますね。
君塚研究室で刊行する表現文化研究誌『URBAN NATURE』
君塚研究室で刊行する表現文化研究誌『URBAN NATURE』

最近は、エレベーターやスーパーマーケットのBGMや、テレビ・ラジオの番組テーマ曲、ダンスフロアで人を踊らせるDJの選曲など、生活のなかでなめらかに人の意識に入り込んで行動や個人史に影響を与える広い意味の「放送音楽」の研究をしています。
研究室では、そんな芸術表現の奥深さを論文で論じるだけではなく、京都や東京の作家やアーティストの方々に小説やノンフィクションの作品を依頼し、『URBAN NATURE』という雑誌を刊行しています。
音楽や映画、小説は、作家やアーティストが自分の経験もふまえて作品を作ります。ただ、作品表現はそれにとどまらず、全容をとらえることがむずかしい複雑な世界の姿を「比喩」や「物語」によってわかりやすく示したり、反戦ソングのように、多くの人々がどうもこの社会はおかしいのではないか、自分たちは本当はこうしたいのではないか、という予見や願望を人々になりかわって目に見える形に表しているんですね。

実践的な課題から「基礎力」を身につける学び

Q: 授業では、どのようなことを?

3回生以上の専門のゼミでは、メディアを使ってものごとを解決する活動に取り組みます。地域や企業、行政と連携して、学生たちにはなるべく学外の現場で解決すべき実践的な課題を出します。たとえば、亀岡市が数年前にホームページをリニューアルしたのですが、学生たちが市民の情報ニーズを調べ、デザイナーさんと一緒に、市として打ち出すべき情報や見せ方を提案しました。あるいは、地元の資源を掘り起こして発信する取り組みもしています。亀岡や桂などのまちを実際に歩き、学生たちの目で発信すべきものを取材して制作した冊子を、区役所や観光協会に置いてもらって活用いただいています。

Q: 実践型の授業には多くの学びがありそうですね。

大学で基礎能力を身につけるのか、それとも社会で通用する即戦力をつけるのか。ゼミや実践プロジェクト科目をやれば、社会に出て即戦力となるスキルがただちに身につくということでもありません。学んでほしいのは、取材の約束の取り方、調査の手法、論理的な思考方法、情報整理の仕方など、あくまで基礎的な能力です。
ただ、現場に放り込まれることで、学生たちには、連携する相手の方々が解決しなければならない課題は本当に切実であり、そんな人たちと約束したのだから、自分らで知恵を絞り、いろいろな可能性を探って何とか役に立たなくては、と必死に活動に取り組もうとする真剣なモチベーションが生まれます。それが学びの質をすごく高めるのですね。

こころをひらく「コミュニケーション」

Q: 実践の場では、コミュニケーションのスキルも学べますか。

先ほどと裏腹になりますが、「みんなが感じていることを可視化するコミュニケーション」というものもあると思います。
例えばクラスで話し合いをしても、面と向かって話すとなかなか意見が出てこない。そのときに「KJ法」を使ってみる。付箋紙に各自の思ったことを書いて、ホワイトボードに貼り出していく方法です。話し合いでは黙っていても、一人で紙に向かうと思っていることは出てくるもので、書き出した意見を整理すれば、「このクラスの人たちの感じていることは、これとこれ」と見えてくる。この手法は、いろいろな場面に応用できます。
メンバーの感じていること、考えていることを引き出し、みんなの思いを反映できる方向を自分たちで探って、目に見えるものにしていく。学生時代はそういうこともどんどん経験してほしいと思います。

たくさんの経験の組み合わせから進路が見えてくる

Q: 最後に学生の皆さんへメッセージをお願いします。

10代では、進路の悩みは尽きないと思います。そのために、世の中のことをなるべく広く知って、幅広い選択肢から人生の方向を決められるといいですね。
美術大国フランスでは、美術館の学芸員を育てる専門教育で2〜3年間に数千枚の絵画や彫刻作品を覚えさせます。暗記でテストを乗り切るのではなく、膨大な作品を知って、その新しい組み合わせを考えることが展覧会のユニークな企画を生むからです。
大学では可能なかぎり学内外のつながりやチャンスをたぐり、友人や有志の関わり、クラブ活動、大学の催事、教職員との交流、フィールドワーク、アルバイト、ボランティアなどなど、さまざまな場に参加すれば、その人にしか得られない経験の組み合わせから、おのずと進路のヒントも見えてくるはずです。私のやっていることも、その場づくりのひとつになればいいと思っています。

人文学部 心理学科

君塚洋一(きみづか・よういち)教授

横浜市出身。成城大学大学院文学研究科コミュニケーション学専攻修了。媒体社の研究機関、国際日本文化研究センター客員研究員を経て、京都学園大学に。専門分野は、メディア論、表現文化論、広告広報論。幅広い人脈をもち、そのつながりから生まれた表現文化研究誌『URBAN NATURE』を主宰する。

コミュニケーションで地域や組織を元気にする

君塚 洋一 先生の教員紹介はこちら

人文学部 心理学科のページへ

突撃インタビュー「# 聞いてみた」