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先生に聞いてみた【79】松原 守教授

更新日:2018年1月9日(火)
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京都学園大学でユニークな研究に携わる先生に突撃インタビューする「#聞いてみた」シリーズ。79回目は、学生がもつ「超難しい!」という先入観を、「これ、面白い」に変えることも役割の一つとお話されるバイオサイエンス学科の松原先生に、細胞研究の奥深さやおもしろさについて、いろいろ聞いてみました。

細胞の世界を分子レベルで理解することで
病気を防ぎ、人々の健康にも寄与するために。

私たちの細胞の中でおきていることは、社会のしくみにとても似ているとお話しされる松原守先生。人々を健康に導く、学問の今についてわかりやすく語っていただきました。

Q: 現在の研究者になられるまでの道筋についておたずねします。

大いなる田舎、名古屋で産まれ育ちました。住んでいたのは名古屋の郊外だったので、自然にかこまれており、子供の頃はオタマジャクシを飼ったりカブトムシやクワガタをとったりしていました。そういうわけか生物分野には興味がありました。高校生の時に卒業生である医学部の先生の話を聞いて、人の健康や身体のこと、病気の治療にも興味がわきました。その頃、海外では遺伝子組換え技術が発展し“バイオテクノロジー”が話題になったりして、そういう技術を使って何かしたいと思うようになりました。
大学は、薬学部に入りました。人の健康や病気の治療に関心がありましたから、“人のためになる新しい薬を開発したい”という思いが強かったですね。大学にいた80年代後半には、利根川進氏が日本人初のノーベル生理学・医学賞を受賞し、立花隆氏との共著『精神と物質』という本が出版され、それを読んで強い刺激を受けました。「遺伝子などの物質で脳の活動などあらゆる生命活動が説明できる」、そういう時代が本当にくるのではとわくわくしました。
分子生物学という考えが広まった時代ですね。遺伝子という生命の設計図があって、それをもとにしてタンパク質ができる。そのはたらきによって、手や足の形ができたり、五感でものごとを感じたり、外敵から身を守ったりする。一つ一つの生体分子で生命のストーリーができるのです。そういうことを解明する研究者って楽しいと思いませんか。

病気の原因となるタンパク質のはたらきを解明することで医療に貢献。

Q: 人の健康に役立つサイエンスを追究されているのですね。

大学院で博士号(薬学)をとった後、医学系大学の研究所、理化学研究所、外資系製薬企業、バイオベンチャーの立ち上げというようにキャリアアップしてきました。このようにめまぐるしく転職している人は大学教員ではあまりいないのではないでしょうか。この間、一貫して病気の原因となるタンパク質の機能構造研究に従事しました。2003年にヒトのゲノム解読が終了し、次はタンパク質の時代といわれ、ゲノムに対応する言葉として細胞の中の全てのタンパク質を表す“プロテオーム”研究が盛んになってきました。日本では比較的早くこのプロテオーム研究に着手したのではないかと思います。プロテオーム研究によって、病気の原因となるタンパク質の特定がいち早く出来るようになりますし、病気の早期発見はもちろんのこと病気を治療する画期的な医薬品の開発にもつながります。実際に製薬企業やバイオベンチャーでは、がん、神経変性疾患、免疫疾患の治療薬の開発に携り、とてもいい経験になりましたね。
たとえば、がんは、正常時には細胞の増殖を制御するタンパク質に異常をきたし、細胞の増殖が止まらなくなってしまうわけです。車で例えるならばブレーキが効かなくなって暴走してしまう状態といえます。それをストップするためには、その異常となったタンパク質だけに特異的に作用して正常なものには作用しない薬を作らなければなりません。このような薬を「分子標的治療薬」といいます。本学にきてからもこの研究は続けています。

薬による病気の治療も大切ですが、病気を予防するという考え方も超高齢化をむかえた日本の医療において重要となります。それを実現するために食品の中から病気を予防できるような成分を抽出して、本当に効果があるのかどうかを遺伝子やタンパク質レベルで明らかにしています。巷で売られている健康食品には実に怪しいものが多いので、分子レベルでの検証が必要だと考えています。 老化すると筋肉萎縮がおこり寝たきり状態になってしまうサルコペニアという病気があります。こういう人々に筋肉を作らせるための運動をさせることはできません。もし食品成分で筋肉を増強し病気を予防することができれば医療費の削減につながります。このような食品成分を運動機能性食品といい、まるで運動をした時と同じ現象が、食べることだけで細胞中に再現できます。それが実用化できるように、現在バイオベンチャーと共同研究をしています。その他にも、野菜の様々な成分が、パーキンソン病の原因タンパク質の異常を抑えることを明らかにしました。このような研究をとおして平均寿命のみならず、健康寿命をもっと伸ばしていくことに貢献したいと思っています。

分子の世界は、知れば知るほど興味が増す研究分野。

Q: 学生たちへの講義においては、どういうことに留意されていますか?

たとえば、「細胞生物学」の講義では、なるべく面白くわかりやすくをモットーに話すようにしています。細胞の中でおきていることは、私たちが生きている社会と同じだと力説しています。
我々の身近なところに、宅急便屋さんがいます。荷物を正確に届けることができます。それは荷物には宛名があるためです。それと同じように細胞の中で働くタンパク質にも宛名がついており、正確に目的の場所に運ばれます。例えば、細胞の核で働くタンパク質は、核に運ばれるための特定の宛名がついているのです。
また、細胞外からの情報は細胞内へ正確に伝わる仕組みがあります。細胞内情報伝達という仕組みなのですが、これはまさに“伝言ゲーム”みたいなものなのです。まったく社会と同じです。
学生たちは、大学に入学するまではほとんどの人がこういうことを知りません。また学問の名前だけで「超難しい!」と思ってしまいます。だから、わかりやすく話をしますと、その先入観がとれて一気に興味をもつようになります。分子レベルの話って、ほんとうはすごく面白い世界なんです。生命の話も同様です。その興味の階段を一歩一歩高めていって徐々に、自分の研究テーマを見つけて欲しいですね。

自分の中での「1」の興味を「10」にまで育んでいくために。

Q: 先生が、学生たちに望むことがあれば、お話しください。

まず、興味をもつことが大切で第一歩ですね。それから、それを「1」だとすると、「10」にまで育んでいく。私の役割は、興味を喚起させる努力をすることだと思っています。
だから、専門的で高度なレベルの学会にも、学生たちを連れていくようにもしています。すべてが理解できなくても、学会の空気はそのまま体験することができます。そうした経験の中から、自分だけの「1」が発見できるのですから。
また、学生たちにはもっと視野を広げる意味でも、海外で学ぶといった意欲ももって欲しいですね。いろいろな分野の本を読んで、「これ、面白い」「もっと知りたい」といった興味の振幅を広げていって欲しい。私自身、大学生の時に名古屋テレビ放送が募集した海外派遣学生に選ばれ、2ヵ月アメリカで学んだことがあります。ニューヨークのコロンビア大学やボストンのマサチューセッツ工科大学などの寮でも生活することができ、すごく刺激になりましたね。若い時は、なんでも積極的にチャレンジすることができます。活かさないと、あとあと後悔するようなことになってしまいます。どんどん、前へ、外へ、広く。失敗したっていいじゃないですか。

Q: 大学での研究以外で、ふだんから興味のあることは何ですか?

美味しいお料理とお酒が大好きで、そういうお店に行っては、“インスタ映え”写真を撮っていますよ。
音楽も好きで、実は、サザンオールスターズのファンクラブに入っています。桑田佳祐さん、ほんと大好きです。カラオケでも桑田さん風に時々唄っています。2018年はサザンオールスターズ結成40周年。今からドキドキしています。
あとは、学生の頃からずっと、クラシックギターをやっています。今でも名曲である“アルハンブラ宮殿の思い出”などを演奏することができます。いつか、スペインのアルハンブラ宮殿でそれを弾くことができれば最高なんですが、最近はなかなか練習する時間がなくて…
それから、娘が大学でサークルに入っている“よさこい”にもはまっています。元気があって、ダイナミックで、ある種のストーリーがあって、見ていてあきることはありませんね。
クラシックのコンサートにもたまに行きます。交響曲や協奏曲なんかはたまりません。音楽全般が好きなのでしょうが、グループや楽団が創りだす、統一されたオーケストレーションへの関心が強いのかもしれませんね。
人間の身体も、生命のオーケストレーションで、一つ一つの細胞が美しく調和して機能しているんですね。それは、心地のいい音楽とたとえてもいいかもしれません。こじつけみたいですが、細胞の世界を見ていると、そんなことをよく考えます。

バイオ環境学部 バイオサイエンス学科

松原守(まつばら・まもる) 教授

名古屋市出身。博士(薬学)。薬剤師、上級健康食品管理士の資格をもつ。名古屋市立大学大学院薬学研究科博士後期課程薬品製造工学専攻。藤田保健衛生大学総合医科学研究所助手、理化学研究所研究員、日本オルガノン株式会社医薬研究所主任研究員、カルナバイオサイエンス株式会社プロテオミクス室長を経て現職。専門分野は、「蛋白質科学」「細胞生物学」「構造生物学」等。担当科目は、「細胞生物学」「健康食品学」「科学英語」等。 趣味は、読書、テニス、クラシック音楽鑑賞、ギター演奏、グルメ、お酒など。
サザンオールスターズファンクラブ、中島みゆきファンクラブ。
SNS(Twitter, Facebook, Instagramなど)にも興味あり。

Twitter:@matsubara_m

個人HP:http://mamoru-matsubara.com/

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