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先生に聞いてみた【83】岡本 裕介 教授

更新日:2018年3月1日(木)
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京都学園大学でユニークな研究に携わる先生に突撃インタビューする「#聞いてみた」シリーズ。83回目は心理学科の岡本先生に、「実践プロジェクト」を通じて育むコミュニケーション能力の必要性について、いろいろ聞いてみました。

コミュニケーションこそが、現代社会の重要なテーマ。
なぜそれほどに大切なのかを、実践学習から学ぶ。

人間、言葉、コミュニケーションへの考察から、今という社会をとらえる。そのためにまず自分からすすんで会話をすることの大切さを説く岡本裕介先生に、ご専門の研究内容についてお話をうかがいました。

人間への関心から、社会学、社会心理学の研究へ。

Q: 教員になるまでの先生のご関心の変遷についておたずねします。

兵庫県の西宮市で生まれました。高校生の時には、バドミントン部に属していました。その頃から、文学や哲学に興味があって、ニーチェや夏目漱石、森鴎外などの本をよく読んでいました。大学は人間科学部に入りました。心理学、社会学、教育学、哲学、文化人類学など、実に幅広い学問領域を対象にした学部で、大きく言えば「人間を学際的に考える」という理念に根差していました。
大学に入学したときは社会心理学に興味をもっていましたが、学部生から院生になる頃から、とくにコミュニケーション論への関心が高まり、研究を進めてきました。修士論文では、人がコミュニケーションをするときに修辞的な表現をどのように理解しているかを分析しました。その後も、修辞というか、言語に関心をもって研究を進めてきました。

Q: 現在のご専門の研究分野は、どういった内容でしょうか。

1997年から、本学で学生たちを指導しています。いくつかの研究テーマを並行して進めていますが、その中の一つに「里山コミュニティの人々の関係性」があります。
もともとなぜ里山に興味をもったのかというと、先ほどお話しした修辞とか言語への関心の続きでした。映画やテレビドラマでは、登場人物の感情を表わすのに自然が使われたりします。雷とか豪雨で怒りや恐怖を表わすとか、穏やかな天気でそのような気分を表わすとか。自然そのものも宗教的な意味づけがなされたり、人間がもつ科学技術や文化と対比されて手つかずの自然が崇拝されたりします。
それで人々が自然をどうとらえているかとか、どんな表現をするかというようなことを調べ始め、日本の里山に住んでいる人に話を聞きに行きました。

「新しい里山コミュニティ」という観点から、今の社会と人を見つめる。

Q: 里山と言えばすぐに、昔ながらの自然豊かな地域を想像しますが。

「里山」というのは日本独特のことばで、山なのに同時に里でもある、自然の中なのに人が住んでいるということです。なので、手つかずの自然とはちがう、生活文化に密着した自然観があります。それから、昔からずっと里山に住んでいる人とは別に、もともと街中に住んでいたのに引っ越してきた人とか、現在も住まいは街中なのに里山に長期滞在している人とかもいます。彼らの中の1人に里山の魅力について聞いたら、街中では一定の人間関係の中に閉じ込められていて、もう新しい出会いがない、これに対し里山では次々に新しい関係が生まれ、発見があると言っていました。
以前なら、一定の人間関係のなかに閉じ込められるのは田舎で、新しい出会いがあるのは都会のはずだったのに、この方の説明のなかでは逆転していたので、興味をひかれました。どうやって新しい人間関係のなかに身を置いて、新しい見方ができるようになるかというのは、けっこう現代的な課題だと思います。インターネットでも、さまざまなサービスに自分の好みの情報だけを提供する仕組みが備わっていたり、SNSで自分と似た立場や考え方の人だけだったりして、接している情報が偏りがちであることが問題になっています。

それから、里山では自然や古い文化を守る活動がある一方で、その枠のなかで新しい生産物や文化が生まれることがけっこうあります。活動に関わっている人たちの話を聞いていると、自然は古くからある帰るべき場所であると同時に、いま生み出されつつある未来の何かでもあるような気がしてきます。

話す、聞く。社会で活きるコミュニケーション能力を育む。

Q: 学生たちには、どのようなことを学んで欲しいでしょうか。

心理学科の「実践プロジェクト」の授業では、学生たちが実際に里山で暮らす方々のお話を聞くということをやっています。本学から車で15分くらいのところに「大槻並おおつくなみ」という地区があります。そちらへうかがって現地の事情を聞き出します。かつては、寒天の生産が盛んだったこの地ですが、暮らしぶりも時代の変化とともに様変わりしてきています。自分の足で訪れて、土地の空気のもとで地元の人たちのお話にじっくり耳をかたむける。受動的に聞くだけではないですね。どんな話を聞くか、事前の学習も必要ですし、それを自分の声で語りかけないと言葉は返ってきません。

大学で得た知識を使って、社会のなかでコミュニケーションを実践する機会でもあるわけです。いわゆるインタビューなのですが、コミュニケーションのトレーニングでもあります。今の学生は、私が学生だったころと違って、社会に出たら「コミュニケーション能力」を求められると繰り返し言われています。だから一部の学生はこのような実践の機会に強い関心をもっているようです。彼らもインタビューのしかたを工夫しようとしたりしていて、真剣に取り組んでいますね。今の学生は、よく勉強もしますし、とても真面目だと思っています。

Q: ふだんから、自然に親しんでおられますか。ご趣味についておたずねします。

趣味は、音楽を聴くことですね。“自然”と言えば、自然の音や都会の騒音のような環境音の作品とか、それをもとにした音楽を聴いたりします。研究室にも、愛聴盤を置いて、たまに休憩するときにパソコンを介して聴いています。 ジャンルは、もともとクラシック音楽が中心でした。ベートーベンやマーラーなどもひと通り聴いてきましたが、今は、現代音楽と古楽を好んで聴いています。
どちらもクラシックファンとしては少々、とっつきにくいジャンルかもしれませんが、私にとっては、心を落ち着かせるのには一番なのです。ある種のカタルシスを得ますし、古楽などは、素朴で癒されます。現代音楽も、その音世界に入っていきますと、案外優しくソフトな感覚につつまれるものがあります。食べず嫌いじゃないですけど、聴いたことがないので嫌いな方も多いんじゃないかなあ。わかりやすく、心地いい現代音楽だってあるのです。
どうですか。一度、今まで感じたこともない不思議な音楽体験をしてみてはいかがでしょうか。アメリカの作曲家、フィリップ・グラスあたりからぜひ、一聴を。

人文学部 心理学科

岡本裕介(おかもと・ゆうすけ)教授

学術修士(大阪大学)。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。大阪大学大学院言語文化研究科助手等を経て現職。専門分野は、「コミュニケーション社会学」。担当科目は、「社会調査法」「コミュニケーション社会学」「社会コミュニケーション基礎演習」など。主な研究内容は、「統計学的知識の社会学」「里山コミュニティの関係性」など。 著書に『コミュニケーション社会学入門』、『里山のこころ――新しいつながりを生きる』(いずれも共著)などがある。

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