京都学園大学

京都学園大学

Newsお知らせ

先生に聞いてみた【84】大秦 正揚 嘱託講師

更新日:2018年3月16日(金)
このエントリーをはてなブックマークに追加

京都学園大学でユニークな研究に携わる先生に突撃インタビューする「#聞いてみた」シリーズ。 84回目はバイオ環境デザイン学科の大秦先生に、「昆虫生態学」を専攻されるまでの経緯や、ご担当科目の「生物学」について、いろいろ聞いてみました。

わからないからこそ、つきとめたい。
科学の眼で、自然界の真実を見きわめる。

私たちがなにげない関心で見ている、虫たちなどの自然界の生き物。そこには、科学的な分析に根差した相互作用があると説く大秦正揚先生。大学で、生物学を学ぶ意義についてうかがいました。

Q: 先生は、子どもの頃から生き物に強く興味をもっておられましたか?

京都府の向日市の出身です。近くに竹林が広がる都市近郊の地で、小・中・高と育ちました。小学生の頃は、ごく普通の子どもたちと同じようにクワガタやザリガニなどの虫や生きものに興味をもっていました。池でフナを釣ったり、山に入って山菜やタケノコを採りにいったりしていました。随分、“渋めの小学生”だったかもしれませんね。
高校生になる頃には、虫採りもやらなくなって、本を通じて知った今西錦司(生態学者・人類学者であり登山家)に強い関心をいだくようになりました。そして、氏が学生生活を送った京都大学の農学部に進学しました。ただ、大学に入って生き物の研究に没頭したかと言うとそうではなくて、スキー競技部に入って、スキー競技をはじめたのです。それまでスキーが得意であったわけではなく、ほとんど初心者として、ジャンプ競技の練習に明け暮れていました。高所恐怖症だった私でも、慣れてくるとまずまずの跳躍ができるようになり、楽しかったですね。

生き物が生きている、そのフィールドを見つめる。

Q: どのような研究をされてこられたのでしょうか。

大学4年生になって、「スキーばかりじゃダメだな」と思い、ようやく“本職”と言える『昆虫生態学』の研究に本腰を入れて取り組むようになりました。それから大学院へと進んだのですが、その頃、研究対象にしていたのが、「アワフキムシ」です。セミの仲間で、雑草や木の樹液を吸って生きています。
この虫の幼虫の生態は変わっていて、茎や枝の上で、自分のおしっこをシャボン状に泡立てて、その中で生活しているんです。そうした奇妙な生態について、当時から研究している人は少なかったのです。それをつきとめようとしていました。
それから、現在まで、昆虫とその昆虫の生態に関わる植物までを対象に、彼らが棲息しているフィールドにおもむいて観察を続け、そこでの科学的な分析をもとに、研究を続けています。

自然界の不思議を不思議のままでなく、真実として追究。

Q: 現在も継続されている、昆虫の生態学研究についておたずねします。

今進めているのが、「ヤマトスジグロシロチョウ」と「スジグロシロチョウ」の食草選択に関わる配偶行動の研究です。両種は、成虫においてはほとんど見分けがつかないぐらい似ています。一般的に蝶は、その種によって幼虫が食べる餌である食草が異なるのですが、前者は、ハタザオ属、後者は、タネツケバナ属という草を食します。この2種の蝶について、伊丹市昆虫館などの協力をえて、成虫の見た目の類似と体の大きさの違いが、お互いの配偶行動に、ひいては食草選択に、どのように影響しているかの解明を進めています。
それから、ヤマトスジグロシロチョウは、近畿地方でハクサンハタザオとスズシロソウの2種の草を食します。これ自体不思議なのですが、これら植物は、ほとんどの場合同じ谷に生育していないのです。ですから、ある一つの谷に生息する個体は、そのどちらかの植物しか食べていません。このような、谷ごとに食べている食草が違うという事象から生じる、幼虫の形態や生態の変異について、伊吹山や多賀、京北町あるいは能勢町などの北摂の山中に入って調査研究をしています。

科学の眼を育む。楽しみながら、知る、学ぶ喜び。

Q: 学生たちが、生物学を学ぶ意義についてお話しください。

生物学は自然科学の一分野ですが、対象が生物という目に見えるものであることが多いので、ほかの分野に比べて身近に感じるのではないかと思います。ただ、身近に感じるが故に、生物学で扱っている現象を、自分が見たり体験したりした“経験側”で説明しがちなのではないでしょうか。しかし、そうした現象も起こる理屈があり、科学的に説明できるものなのです。この“経験則”で捉えていた現象を、科学的合理性で捉え直してみると、生物界を取り巻く世界が、いままでよりも少し変わって見えます。「世界観が少し変わる」という体験がしやすいということは、生物学を学ぶ意義の一つではないかと思います。私たちが、今生きている自然界には、まだまだわからないことがいっぱいですね。ただ、そこには、様々な相互作用がはたらいていのちが躍動しているのです。そうしたことを一つ一つ明らかにしていく醍醐味を、ぜひ理解して欲しいですね。
今、私は一般教養として生物学を教えているのですが、物事を科学的にとらえる眼を養って欲しいですね。この世の中には、わからないからといって曖昧なまま、嘘や噂となって捻じ曲げられた言説が流布されています。それに惑わされないようにするためにも、大学で生物学を学ぶ意義があると思っています。また最近は、日本人の受賞者も多くなったこともあり、ノーベル賞の報道が多くありますね。ただ、ノーベル賞のニュースを見ていても、その研究がどんな意味合いがあるのかを、知っているのとまったく知らないとでは、大きな違いがあります。自然界の中で起っている、知らなかったことを一つ一つ知る喜びをぜひ、自分のものにしていってください。

科学者の心得は、「できるだけ真実に近づく」ということなのです。それは知識とともに倫理にも関わることですね。今現時点で真実に達していなくとも、真実を追い求めた到達点を次代に受け渡していくことはできます。

Q: ご家族の皆さんとも、自然に親しむことをされているのでしょうか。

今、自分の子どもたちと、自然の中に入っていってそれをともに身近に感ずるようにしています。山、川、海、そこには多種多様な生き物がいます。
自分が小学生だった頃に楽しんでいた、山菜採りや釣りなども子どもといっしょになってふたたびやるようになりました。タラの芽やキノコなどを採ってきては、貴い恵みとして美味しくいただく。これもまた自然界の相互作用の一つかもしれませんね。素晴らしい享受ですね。ただ、そうした生き物が実際に生きているところを知らないで恩恵をいただくのとそうでないのとでは違うのですね。
楽しく、知る、学ぶ。そうした大切なことも、自然は、私たちに教えてくれます。

バイオ環境学部 バイオ環境デザイン学科

大秦正揚(おおはた・まさあき)嘱託講師

農学博士(京都大学)。京都大学大学院農学研究科博士後期課程 研究指導認定退学。専門分野は、「昆虫生態学」「動物行動学」「応用昆虫学」。担当科目は、「生物学」「環境リスクマネジメント」「生態学」など。主な研究内容は、「植食性昆虫の食草に対する適応進化」など。

大秦 正揚 先生の教員紹介はこちら

バイオ環境学部 バイオ環境デザイン学科

突撃インタビュー「# 聞いてみた」