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先生に聞いてみた【89】前田 正史 教授(前編)

更新日:2018年11月28日(水)
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京都学園大学でユニークな研究に携わる先生に突撃インタビューする「#聞いてみた」シリーズ。 今回は、89回目と90回目の2回にわたって、次期学長就任予定の前田正史先生にいろいろ聞いてみました。前編は2020年4月に開設構想中の京都先端科学大学 工学部についてです。

先端科学とは?工学とは?
新しい総合大学への道を目指す本学の想いについて伺いました。

Q:校名が『京都先端科学大学』に変わり、工学部も誕生します。どのような想いがあるのでしょうか。

本学には、経済経営学部(社会科学分野)、健康医療学部(医療健康分野)、人文学部(人文科学分野)、バイオ環境学部(自然科学分野)の4つの学部があります。それぞれが互いに密接に関わり合い、ときに融合し、より高い次元で響き合うことを理念に掲げていて、それが新しい校名にも象徴されています。そしてその理念の中の新たな柱として工学部も加わります。これらすべての土台になっているのが「ヒューマニティー」(人文学、人間性の本質に関わる学術)であると考えています。

工学は自然科学の分野で、このヒューマニティーと深く関わっています。私たち人間のために何を為すべきかを追求することが本質的な目的です。具体的にいうと、例えば、世界中の産業界は工場内で稼動している機械によって成り立っています。そして、それを操作・制御する指令を出すのは人間です。なんらかのトラブルによってひとたび稼動が停止してしまうと、再び稼働させるために人の手が必要になります。人の体が機械の世界に入ると、機械と人との間に会話や交渉が発生します。

人間には感情があり、個性があり、行動パターンは一定ではなく、個々それぞれです。その時の気分によっても様々に変化する不可解な存在とも言えます。当然その人間の育った文化的背景や宗教観は機械との会話や交渉に大きな影響を与えるので、生産技術の最高峰を目指すためには、人と機械の関わり方について十分な考察が必要になります。機械やロボットを人間と協働するように動かすためには、人間の心理やその行動の本質的原因を知る必要があるのです。

Q:他の学部、分野との関わりついて教えてください。

社会科学との関連で言うと、経済や法律、特に法律と工学はとても相性がよく、似ている部分が多いと考えます。私たちが暮らすこの社会は、様々な法律によって成り立っています。法律は、人間社会を動かしていくための現実を抽象化・一般化し、一般的なルールをつくります。
一方、工学もまた現実に起こる事象を自然科学的な原理(ルール)に抽象化・一般化し、その結果を様々な生産現場に適用できるようにしていくことを追求する学問です。法律と工学は問題解決に向けたプロセスがとてもよく似ており、基本的には同じだと思っています。

例えば、海外のある国に工場をつくるとします。そこではまず前提として、その国の文化や歴史、また日常的な慣習や思想・信条や細やかな心理までを理解しておかなければなりません。先ほども述べましたが、そうした人文学的な理解を怠り、工場を稼動させてしまうと、後々、思いもかけない複雑な課題に直面してしまう可能性があります。そういう意味でも人文学系の学問の基盤の上に工学は存在するのです。

医療工学分野においては、膨大な医療データの蓄積とその分析などで、健康医療学部とも大きな接点があると考えています。また、バイオ環境学部は理系でもあり、工学的知見のユーザーでもあります。ゲノム解析に関わる数的処理、大規模データを用いた植物の生産管理技術、リモートセンシング(ものに触れずに計測する技術)を利用した国土の管理など、沢山の分野で協働してもらいたいものです。

『京都先端科学大学』という校名の土台には、このようにまず人間に根差した科学の追求という理念があります。それぞれの分野が高次に連携して交わり、ケミストリー(融合・反応)していくことを目指しています。工学部の開設は、この理念の一環でもあります。

Q:工学部の具体的な「学びの特色」について教えてください。

開設準備しているのは、『工学部 機械電気システム工学科』(仮)です。ロボット、ドローン、電気自動車から、医療機器、家電、食品など、成長著しいメカトロニクス分野を中心にしたグローバルエンジニア・研究者を企業と連携しながら育成していきます。また同時に、大学院工学研究科も開設する予定です。

まず、1、2回生では専門領域の基盤となる数学・物理学を基礎から確実に修得します。そして将来の進路希望に沿って専門分野を選択し、個人ワーク(演習)とグループワーク(実習・PBL型学習※)に取り組み、考察力と実践力を養っていきます。専門分野では、設計生産、メカトロニクス、計測、制御、材料、イオニクス、電磁気、通信、エネルギー、デバイス、回路、アクチュエータなどの分野を学びます。そして、3回生の秋学期、4回生春学期の2回に渡って、実際の企業の現場が抱えている課題の解決に取り組みます。
これは、「キャップストーンプログラム」と呼ばれる学びのシステムです。

PBL型学習※…課題解決型学習(Project based learning)のこと。あらかじめ準備された正解を探すのではなく、自ら課題を見つけ、チームで協力して解決に取り組みます。

Q: 「キャップストーンプログラム」とは??

ピラミッドの頂上が冠石(キャップストーン)で閉じられていることから発想された、学びの集大成である実践的教育プログラムを比喩的に表現した言葉です。工学部では日本初の導入で、従来の卒業研究に代わるプログラムです。この根底にある考え方は、ストリート(現場、社会)に開かれた知識とスキルを使いこなす叡智の実践、つまり「ストリート・スマート」な人材育成にあります。

今、まさに動いているリアルタイムの産業界とのコラボレーションです。実社会において企業が抱えているテーマを提示していただき、学生5、6人、先生2、3人とともに、課題解決のための研究を推進していきます。学生群、先生群、そして企業群のいわば複合型の各チームが、一つのテーマに向かってプロジェクトを動かしていくのです。単に実践的な体験学習というだけでなく、現場での具現化の道を探るチャレンジでもあります。その上で、かけがえのない達成感も得られると期待しています。

ビジネス、生産技術の現場を想定した実践的な英語の習得も、大きなポイントです。創業140年余りの歴史を持つアメリカ発祥の語学スクール『ベルリッツ』と連携し、1、2回生の間に集中して英語修得プログラムを開講します。
1回生(春学期は毎日2講義、秋学期は毎日1講義)は基礎英語力と基礎英会話を、2回生(週3回)は実践的なリーディングとライティングを強化します。そして英語で行われる講義を留学生とともに受講できるようになり、グローバルに活躍できるエンジニアとして英語でのコミュニケーションを可能にしていきます。

Q:どのような学生たちの入学を期待されますか?

『京都先端科学大学』のキャッチフレーズとして掲げている言葉通り「トンガリ」人材というのが当たっているように思っています。抽象的で、どうトンガっているのかはなかなか定義しにくいですが、「山椒は小粒でピリリと辛い」と言うように、ジェネラリスト(広範囲にわたる知識を持つ人)であっても、何かに抜きんでたスペシャリスト(特定の分野を専門にする人)としての、一点突破の意欲やチャレンジスピリットのある若者に期待したいです。

見えているのは、世界というフィールドで生きて動いているすべてのカスタマー(お客様:人間)です。まだまだ未知の「アンメット・ニーズ」(充足されていないニーズ)は確実に存在しています。それに応えていくために、全学部が一つになり、小さいけれども今までになかった新しい総合大学への道を、学生たちとともに築いていきたいと願っています。

先生の歩まれてきた道や研究内容については、【90】につづく。

前田正史(まえだ・まさふみ)教授 副学長〈次期学長〉

博士(工学)。東京大学工学部卒。東京大学大学院工学系研究科金属工学専攻博士課程修了。カナダ・トロント大学、東京大学生産技術研究所所長などを経て、東京大学理事・副学長を歴任。2016年より日本電産株式会社生産技術研究所所長(非常勤)。研究分野は、「金属生産工学」「資源リサイクル」。
主な著書として『ベースメタル枯渇-ものづくり工業国家の金属資源問題』(日本経済新聞出版社・西山孝との共著)がある。

前田 正史 先生の紹介はこちら

突撃インタビュー「# 聞いてみた」