京都学園大学

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Faculty member教員

佐々木 高弘Takahiro Sasaki

学部・学科
人文学部 歴史文化学科 
職名
教授

受け持ち講義のポイント

学生が最初に受講する講義は2回生で受講可能な人文地理学です。人文地理学は人間と環境の複雑な関係を、文化や社会、技術や生産や植物や動物、その他さまざまな事物を通じて考えていく学問です。この講義では人文地理学がこれまで生み出してきた、さまざまな方法論の基礎を学びます。その上で、これら方法論を使って、まだ誰も扱ったことのない新しい研究テーマを見いだす発想を身につけます。講義では昔話を人文地理学で研究すると、今までとどのように違った学説が唱えられるのかを、具体的に講義します。教科書は『民話の地理学』を使用します。
3回生になると妖怪文化論Aや歴史地理学が受講できます。妖怪文化論Aでは、人文地理学の基礎的な方法論を使って、妖怪を日本文化として研究します。この講義では特に妖怪の出没する場所について、人間と環境の関係から講義していきます。この妖怪文化論では構造言語学や記号論、深層心理学やメンタルマップ研究、民俗学の調査方法を使って講義を進めます。また近年の日本アニメやJホラーで描かれた怪異妖怪についても世界史的な視点から見ることによって、現在においても、いかに妖怪文化が世界に誇るすぐれた日本文化であるのかを講義します。教科書は『怪異の風景学』を使用します。
歴史地理学では世界の神話を題材に、人類と環境の関係性から生まれた神話という視点から講義を進めます。ここでも様々な理論を使います。特にこの講義ではユング派深層心理学の神話分析や文化人類学の神話研究を紹介しながら、歴史地理学でしか行えない研究方法を提示します。取りあげる神話は、北欧神話、メソポタミア神話、インド神話、エジプト神話、ギリシア神話、ローマ神話、中国神話、日本神話など多岐にわたります。教科書は『神話の風景』を使用します。
これら講義内容に興味のある学生は、2回生の民俗学資料講読で北欧神話に関する研究を英語で読んだり、実践プロジェクト(民俗学)で実際にフィールドに出て地理学や民俗学の調査方法を身につけます。さらに卒業論文をこの分野で書きたい学生は、3回生から民俗学研究演習をゼミとして選択することになります。さらに学部を卒業して、大学院に入りたい学生は、さらに文化地理特論ABや文化地理研究演習ⅠⅡを受講して研究者を目指すことになります。

学位 教育学修士
所属学会 人文地理学会・日本地理学会・歴史地理学会・日本民俗学会・日本文化人類学会・日本口承文藝学会
専門分野 歴史地理学・文化地理学・歴史民俗学
略歴 1988年 大阪大学大学院文学研究科博士課程中退
1988年 大阪大学文学部助手
1991年 京都文化短期大学専任講師
1999年 京都学園大学人間文化学部助教授
2004年 京都学園大学大学院人間文化研究科教授
2015年 京都学園大学人文学部歴史文化学科教授
担当科目 学部:人文地理学・歴史地理学・歴史民俗学概論・妖怪文化論A・民俗学資料講読・実践プロジェクト(民俗学)・サムライ文化論・歴史民俗学上級講読・歴史民俗学専門演習ⅠⅡ
大学院:文化地理特論AB・文化地理研究演習ⅠⅡ
研究内容・研究分野・業績 私の最初の研究は、古代日本の律令国家の領域性に関する歴史地理学的研究でした。具体的には、『日本書紀』の大化の改新の詔に記された畿内制の研究です。畿内制とはわが国最初の天皇の領土を示すものでした。この古代国家の領域性を、従来の古代史研究とはひと味違う、動物行動学や景観の記号論という新しい研究方法を使って分析しました(「「畿内の四至」の防御地点としての性格について―関塞の存在の可能性」『歴史地理学 第142号』(歴史地理学会)、1988、17~31頁、「景観の記号化からみた「畿内の四至」の選定要因―行動と景観のコンテクストの対応関係」『人文地理 第42巻第4号』(人文地理学会)、1990、1~18頁)。歴史地理学はこのように、様々な隣接分野の理論を応用して研究することが出来る分野です。
その次に、民俗学が研究対象とする伝説を歴史地理学の手法で研究し始めます。そこで徳島県の「首切れ馬」という妖怪の伝説を聞き取り調査し、やはり民俗学とは異なる方法で、数多くの聞き取り調査で得た成果から、古地図を使ってこの妖怪の出没場所の法則性を見いだすことに成功しました(「記憶する<場所>」『記憶する民俗社会』人文書院、2000、101~153頁、「伝説と共同体のメンタルマップ」『怪異の民俗学 第2巻 妖怪』河出書房新社、2000、217~241頁)。
そして伝説の研究をしていると、どうしても昔話で描かれる架空の場所との関係が気になり始め、昔話をユング派の深層心理学を使いながら文化地理学の観点から研究を行うようになりました。当時、文化地理学では「心のなかの景観」という、視覚以外の感覚、つまり聴覚、嗅覚、味覚、触覚さらに第六感を使って、私たち人間がどのように環境を認識しているかを知ろうとする研究が新しく唱えられていました。そこでこの研究方法を使って昔話を見てみると、なんと昔話に出てくる主人公や鬼や魔女たちが、頻繁に視覚以外の感覚を使っていることがわかりました。この研究では、現在の私たちが環境をはじめとする人やモノに接するのに、視覚に頼りすぎているのではないか、そしてそのことが環境破壊をはじめとする様々な問題を生んでいるのではないか、と考えました(『民話の地理学』古今書院、2003、四六版240頁、『神話・伝説・昔話の場所表現に見る日本人の環境認知の変遷』平成15年度~18年度科学研究費補助金(基盤研究(C))研究成果報告書、京都学園大学、2007、A4版230頁)。
またこれら民俗社会の物語群が現代社会の生み出す映画やアニメにどのように影響を与え、また継承されているかを文化地理学や歴史地理学の観点から研究することになりました。そこでも構造言語学や記号論、深層心理学などを応用しながら、このような語りや映画といった物語が、今のような大変な時代の変革期に描かれることが明らかになりました。そしてこのような時代を乗り越えようとする私たちにとって、物語を語り生み出すことが、非常に重要な意味を持っていることを指摘しました(『怪異の風景学―妖怪文化の民俗地理』古今書院、2009、四六版224頁)。
これら研究に並行して神話の歴史地理学的研究にも挑戦しています。神話は昔話や伝説とともに口頭伝承の重要なジャンルの一つです。神話は通常、『古事記』や『日本書紀』『風土記』などの古代の文献にしかないと考えられがちですが、現在聞き取りすることのできる伝説や昔話にも、神話の残骸を見いだすことができるとする見方もあります。その考えに従えば、今でも神話を生きた伝承として研究することが可能です。例えば、さまざまな祭事がこのような神話を引き継いでいます。今でも毎年6月30日、12月31日に全国の神社で行われている大祓や道饗祭、あるいは京都の祇園祭や大阪の天神祭などもこのような神話を継承していると考えられます。それら研究成果をまとめたのが『神話の風景』(古今書院、2014、四六版228頁)です。
また最近の研究では、近世の城下町と怪異妖怪の関係を探っています(「第1章 城下町と妖怪」『かが風土記―見て、歩いて、学ぶ旅―加賀市総合民俗調査報告書』加賀市教育委員会事務局文化課編集、加賀市、2013、27~90頁、『都市空間における神話的特性の変容過程に関する歴史地理学的研究』平成23年度~26年度科学研究費補助金 基盤研究(C)研究成果報告書、京都学園大学、2015、A4版389頁)。京都の妖怪の出没地を古地図で案内する本も出版しています(『京都妖界案内』大和書房、2012、文庫版237頁)。
またこれら研究の成果を、一般の人たちにもわかりやすく書いたものが、角川書店から出版されている、世界で唯一の妖怪マガジン『怪』にも掲載されていますので、一度書店で手にとって見てください。
ウェブサイト http://regionalmyth.seesaa.net/?1265872881
http://kyotomakai.blog136.fc2.com/blog-category-4.html
http://kaidangeo.seesaa.net/
http://historyfolklore.blog.shinobi.jp/
お問い合わせ

sasaki@kyotogakuen.ac.jp

メッセージ

人類はこの地球上に発生して以来、この地球の表面を離れて生活したことがありません。つまり人類誕生以来、ずっと人間と地球環境との関係は続いてきたわけです。その長い関係を研究しようとするのが地理学です。高校までの教科としての地理と比べると、どうでしょう、皆さんのイメージがずいぶん変わったのではないですか。
さて、その地球に誕生した当初は、私たちも生身の身体である素手や素足で地球環境に対処していたと思います。がしかし他の動物と違って、私たち人類は、徐々に木ぎれや石などを加工して道具とし、それらを通して環境に接し始めます。そうするうちに、住んでいる環境に適応すべく次々と様々な物を発明し、それらを使って生活様式を生み出していったと考えられます。この生活様式を、私たちは文化と呼んでいます。地球上には一つとして同じ環境はありません。したがって生活する環境によって必然的に文化が異なることになります。世界のあらゆる文化と日本文化が異なるのはこのためです。
特定の環境の、特定の社会で新たに生まれ育った今の私たちは、生まれる前からある文化を無意識的に受け入れ、その文化的な価値観にそって人生を歩みます。つまり私たちはこれら特定の文化を通じて環境に接していることになります。この文化は様々な技術や社会組織、経済、生産手段、食文化そして宗教思想や哲学などをも含みます。技術が高度になれば、今までの私たちと環境との関係も変化します。現代の科学が、私たちと環境との関係を劇的に変えたことはよく知られていることです。また同様に宗教思想や哲学も私たちと環境との関係を変えます。ここで言う環境とは単に自然環境を言うのではありません。私たちの身の回りにあるすべて、つまり人や場所、モノや動物、植物をも含みます。地理学はこれらのことも視野に入れ、現代社会の人と環境の関係、あるいは歴史学や考古学、そして民俗学や文化人類学の成果から、過去の人類と環境の関係も研究しています。
私が特に注目している、神話や伝説、昔話などの物語群も、もちろん文化です。したがって科学技術や宗教思想と同じように、これら物語群も私たちと環境との関係に何らかの影響を与えています。特に神話は宗教思想とも直接関係があるので、その影響力は大きいでしょう。現代における世界の紛争は、これら神話に基づくといっても過言ではありません。私たちの前の戦争も、これら神話が影響を与えていました。
日本の妖怪文化は独特です。もちろんそれは日本の宗教思想や様々なモノや人、技術とも関係しています。例えば、日本の神々と妖怪は表裏一体の関係にあります。日本の神々は祟ることもあれば、私たちを守ってくれることもあります。この点はキリスト教やイスラム教のように、善と悪とを全く別物と考える宗教観とは違います。私たちは一つのモノに二つ、あるいはもっと多様な側面を同時に見ているようです。それは環境に対しても同じです。雨は豊作をもたらしますが、洪水となると大変な被害ももたらします。モノに対しても同様な二つの側面を見ていたようです。付喪神という妖怪は、長年使われた道具が魂を持った妖怪です。でも名前には神が付いています。あるいは、政治で敗れた歴史的な人物が御霊として祭られるのも日本独特の宗教思想です。この場合も、政治の敗者が怨霊として祟ると考えたため、逆に神として祭り上げることによって、私たちの守護者としようとしたのです。北野天満宮の菅原道真がその代表的な存在です。
日本人はこのように、地球上のその他の国とは異なる、独特の世界観を持っています。大学でこのような日本文化の特性を学ぶことによって、今後予想されるあなたの身の回りの、そして世界を巻き込む様々な混乱や対立を、日本文化的に回避、あるいは解決する方法や糸口を、皆さん方自身の力で発見する術を身につけて欲しいと思います。

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